パプアの森の勇者デメギョの復活 (アトピー地獄からの脱出) 1

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「じゃあ、今日からあなたは宇宙人ね。」

「は〜いまた来ま〜す。」

まさか志願者が出るとは、しかも宇宙人でいいとは、最近の若い人はようわからん、まさに宇宙人であった。

よくかわいいお客さんも来店する、お母さんと一緒に来た小学3年の女の子。

「店長さんはあだ名をつけて上手なんだよ。」と、お母さんが教えている。

「ねぇねぇ、私にもあだ名つけて〜。」笑顔のかわいい女の子が言う。

「よし、そうだなぁ〜、笑顔がかわいいからエガちゃんはどう。」うん、女の子は喜んだ、また調子に乗ったぼくは、余計な事を言ってしまった。

「江頭2:50と一緒だよ〜、覚えやすくてイイね。」

「ヤダ〜、江頭と一緒はヤダ〜。」本気モードで嫌がった。

「あら、かわいいあだ名じゃない、良かったね〜。」お母さんが必死になだめた。

「ごめんごめん、笑顔がかわいいからエガちゃんだよ〜、絶対かわいいよ。」僕もかわいいを連発して納得してもらった。

次の日から学校帰りのエガちゃんと会うと、お互いニコッて笑って挨拶する仲になった。

最近、お客さんとしゃべりだしてから、あだ名をつけだしてから売り上げも上がり始め、毎日いろんなお客さんが来店しいろんなドラマがある、楽しい、お客さんの笑顔が一番嬉しい。

その日も忙しかった、3人のお客さんを一人でさばいていた時電話が鳴った。

「大久保さん田島です、実は今日結婚記念日なんで花束を作ってもらっていいですか。」

田島内科の慎吾先生の注文、奥さんの美紀先生に贈るらしい、¥5000の花束で内容はお任せ、メッセージはいつもありがとう、という事で電話を置き、とりあえず目の前のお客さんをあまりお待たせしないよう手を動かし、自慢のしゃべりで待ち時間を忘れるほどに笑わせた、伝家の宝刀エクスカリバーの切れ味は今日も抜群、3人適度に話を回しながらだが、たまたまキーマンになるお客さんが一人いたから上手く回ってるけど、3人とも無口だとさすがのデメギョも苦しい。

手と口を動かしながら、何故か脳内では海馬に散らばった記憶の破片が一つにまとまりプカ〜ッと浮いて来た、半年前の記憶、美紀先生と30分ぐらい話した中に、

「大久保さん、私はね、雨の日も風の日もたとえ雪の日も、毎朝外に出てお見送りをしているの、夫はその気持ちをわかってくれているのでしょうか。」

「もちろんわかってらっしゃると思いますよ、男はなかなか口に出せんだけで、伝わってます。」

そんな会話があった事を思い出した。

次々と3人のお客さんを送り出し、慎吾先生の注文の花束を作り、メッセージを2枚書いた。

1枚は注文通り、いつもありがとう、もう1枚は毎朝笑顔で送り出してくれてありがとう。

それを携えて田島内科に向かう、いつものことだが大混雑こちらも忙しいようだ。

いつもは受付に花束を預けるだけで帰るけど、今日は大事な用事があった。

「忙しいところすいません、慎吾先生を呼び出してもらえませんか。少しお伝えしたいことがあります。」

「慎吾先生サンフラワーさんがお見えです。お伝えしたいことがあるそうです。」

受付の女性は襟に付いているワイヤレスマイクで、面倒な顔もせず伝えてくれた。

直ぐ受付カウンターに慎吾先生はやって来た。マスクを外し、

「わあ〜、綺麗な花をありがとうございます。」

「いや、花の事じゃなくてメッセージのことですけどこちらが70点のメッセージ、こちらが120点のメッセージ、どちらにします。」

慎吾先生にたずねると、ニコッと笑って、

「こちらでお願いします。」

120点のメッセージを指さした。毎朝笑顔で送り出してくれてありがとうの方だ。

先生はやはりわかってらっしゃるようだ。毎朝の事を、

「はい、ありがとうございます。」

受付の女性にもお礼を言い、70点のメッセージは持ち帰った。

車に乗り込むと一人ニヤついてしまった。田島先生の暖かい家庭の映像が頭に浮かんで、ホームランを打ってしまったと喜びであふれた。

綺麗な花束を受付に預けてくるだけで充分、あとは後日集金に伺えば花屋の仕事は終了、それじゃ僕の中に生まれたデメギョは納得しない、おせっかいになるかもしれないという危険性をはらんでいるけど、一歩踏み込むことを要求する。

花には何の実用性もないしばらくすれば枯れてしまう、花と一緒に心を伝えてからこそとの想いがある。

慎吾先生と美紀先生の想いをつなげるお助けが出来たような気がしたけど、一抹の不安が去来した。

ネタばれしたら、美紀先生が思い出したら、半年前に花屋で話してしまった事を、あのメッセージは僕の入れ知恵によって書かれたものだと気付いたら。

せっかくのホームラン、無効にしたくない、バレないように願ってその日の営業が終えた。

2~3日後のこと、美紀先生がお見えになった。

「こんにちは大久保さん、今日はお花をお願いにきました。妹の誕生祝いにお花を贈ろうと思って。」

注文のアレンジを作りながらいろいろ話したけど、結婚記念日の時の話はなかった。

僕の入れ知恵には気付いていない、ホームランが確定、ミラクルが起こった、いやおこりはじめた。

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