高木教育センターのありふれた日々(3)

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 と本当に嫌になった。渡米する前は日本人であることに誇りを持っていたが、今はそんな誇りはない。ユタで会ったアメリカ人は、私の周囲にいる日本人よりずっと上等だった。

 

  そんな時にA子ちゃんが塾に来てくれた。彼女はアメリカ人のようだった。裏がない。私は東員第二中学校でトップと評判の子や、北勢中学校で抜群の子と評判の子など何人も教えさせてもらった。

  ところが、前評判どおりの子はほとんどいなかった。こんな片田舎でトップと言っても、しょせん井の中の蛙でしかない。一番重要なのは、心の持ち方なのだけど殆どの人には、私の言うことが通じなかった。

  A子ちゃんは違った。経済的な困難さや過酷な環境が彼女の人格を磨いたに違いない。私が人間不信を感じさせる言葉を口にすると

「今まで出会った人が悪かっただけですよ」

 と慰められる始末だった。

 

最近のことを書くと人物が特定されるので書けないけれど、その後もA子ちゃんに匹敵するような素晴らしい子たちが集まってくれた。生徒の言葉によると四高や桑高で上位にいる地元の生徒の多くがほとんど当塾に集まっているそうだ。

 地方には高校レベルの英語や数学を指導できる講師がいないのも理由だろうが、共通しているのは人としての基本ができていること。表裏がない。

 娘たちや、彼女、彼らのおかげで私は英検1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級などに次々に合格でき、京大の数学でも7割がとれるようになった。今では、通信生が北海道から九州鹿児島までいてくれる。

  そして、近年の合格者は京大医学部、阪大医学部、名大医学部、三重大医学部、東京医科歯科大学と信じられないような結果となっている。これは、三重県の小さな片田舎の個人塾としては奇跡のようなものだ。

 おかげで、ブログに書いたらジャンルのトップにランキングされた。それもこれも、A子ちゃんをはじめとする素晴らしい生徒たちのおかげだ。感謝している。

 

 素行の悪い子、モンスターペアレントと呼ばれる人たちと接すると人間不信に陥る。逆に、素晴らしい子に出会うと豊かな気持ちになる。だから、アメリカでは

「怒る人より、怒らせる人が悪い」

 という哲学が徹底していた。ところが、日本では怒らせる人のことは視野に入っていない。

「教師たるもの、絶対に怒らずに、生徒を見捨てずに、体罰禁止」

 など、できもしない目標を掲げる。偽善と嘘の塊のようなスローガン。実態はイジメと徘徊と授業レベルの低下が広がっているだけなのに。

 

 私はそんな渦に巻き込まれたくない。

 今日も、マスコミは巨大なビルを映像で示す会社を持ち上げる。スポンサーだから大事なのだろう。メーカーなら理解もできる。しかし、教育関係つまり塾も同じ経営哲学でいいわけがない。しかし、ビルを大きさで塾や予備校を決める人が多いのだから驚いてしまう。

 

  私が自分の塾を建てるには、父の土地と家を担保にするしかなかった。するしかないというのは傲慢だ。してもらったのだ。大都市にビルを建てられるわけもない。

 

 賢い子もいるが、そんな現実の大人世界を見ると

「金が儲かれば何をしてもいいんだ」

 と思う中学生や高校生が増えるのは当たり前ではないか。私は30年も受験指導をしている。A子ちゃんが、その後どんな生活をおくっているのか知っているし、私の勤務していた名古屋駅前の会社はもう無い。

 

 短期的にはうまくいくように見えても、中身のない仕事をしても続かない。そんなものに頼って勉強しても、肝心なものが欠けているので成功するわけもない。世の中はそんなに甘いものではない。長期間、不特定多数の人をだますことは不可能なのだ。

 

  だからこそ、道徳や宗教がある。人は視野が狭くて近視眼だから絶対的な生きる原則が必要だ。教育関係なら、金もうけが全てではいけない。問題児だったBくんは暴走して一生ベッドの上だと聞いた。本当は悪いものは悪いと言わなければ、悲惨な将来が待っているだけ。なのに、ビルの維持費のために私たちは

「大丈夫、お任せください」

 と言わされていた。私はトラウマがあるし、ユタで経験したことを忘れるわけにはいかない。A子ちゃんのようなタイプの支持者も多い。ブレるわけにはいかない。

 

 もちろん、私は資本主義の論理は理解している。

「大きなビルが建つ。それは、指導法が良いから生徒が集まり儲かったからだ」

 そう考える人が多いので、

「そう考える人が多いのなら、でかいビルを建てれば指導法がいい証拠はビルだ」

 となるわけだ。

 

 しかし、そう考えない講師も多い。ビルを建てる資金を集める時間やエネルギーを勉強に集中する講師もいるわけだ。

 

 一時期、地方に高校の内容を指導できる講師が地方にいないため東京で講師が授業をして撮影したDVDを日本中に配信する予備校が流行したことがあった。しかし、そのビジネスモデルは受験サプリのような安価な動画の普及で崩壊した。Youtubeには無料の授業動画があふれている。

 

 ネットで英作文の添削を依頼すれば、誰かが添削してくれる時代だ。

 

 これでは、生徒も保護者の方も迷うのは当たり前だ。指導法がすばらしいからビルが建つこともあるかもしれない。そんなものに目もくれず、腕を磨く小さな塾の講師もいるだろう。無料で添削してくれる人は、本当に合格できるレベルにある人なのだろうか。浪人生が返答している場合だってある。

 

 私の塾生の子たちは、田舎の無名講師の私を信用してくれる。それは恐らく、

 

  • 英検1級、通訳ガイドの国家試験、国連経験A級などに合格している。

  • アメリカ帰りで本場の英語を知っている。

  • 指導した生徒が、京大医学部、阪大医学部、名大医学部などに合格している。

     

  •  という事実を信用してくれているのだろう。私の方も、

     

    1、地元の成績上位の高校生が多数通ってくれている。

    2、通信生が北海道から九州までから申し込みがある。

     

     この二つの事実にどれだけ勇気づけられていることか。日本中の賢い子たちが支持してくれると、

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