第五十章 グッバイ、お父さん

1 / 3 ページ

第五十章

「グッバイ、お父さん

 父が亡くなって13年が過ぎた。私が小さい頃、父は暴君だった。気に入らないことがあると怒鳴るので震えていたものだ。いつ頃、父が小心者だと気づいたのだろう。姉の旦那があるトラブルを起こしてチンピラが家に来たことがあったらしい。その時、父は腰砕け状態になったらしく母と姉が文句を言っていた頃だろうか。

 私が名古屋にいた頃のことだから詳しいことは分からない。しかし、自分が土地を買おうとなったときに

「近所にヤクザが住んでいる」

 という情報を調べてきて塾の新築に反対した。私は若くて怖いもの知らずだったから、

「何をビビっているんだ!」

 と父と口論になった。父は親バカだった。そんな傲慢な私が銀行から融資を受けるために連帯保証人になり、自分の土地と家を担保に入れたばかりか親戚に連帯保証人になるように頭を下げてまわった。

 私は四日市高校に合格し、名古屋大学に合格し、頭が良かった。格闘技が好きでたいていの相手にビビったりしない。塾が大きくなったときに

「オヤジは越えたぜ!」

 と思った。

父が死んでから、父が自分の姉からお金を借りて返済に苦労していたことを知った。どうも、私が大学に行った時の夏休みにアメリカに行かせてもらった時の頃のことらしかった。私はそんなこと何も知らずにユタでの生活を満喫していた。結局、あの経験がなかったら英語の勉強に本気になれなかった気がする。

あの頃の父の年齢に近づいている。私はたまたまバブルの波に乗って銀行の融資を完済したが、経営経験のない子供たちが借金の担保に自宅を提供して欲しいと言ったらどうするのだろうか。私は賢いので子供の成功の確率を考え、リアルにこの家を追い出される姿を想像して躊躇するかもしれない。

父は私が小さい頃、広島で潜水艦を作っていたころ浮上できずに死にそうになったとか武勇伝のようなことを話していたが、小心者だったから中国の戦場では逃げ回っていたのではないだろうか。

そんな父が、私と大喧嘩をしながら自分の家も土地も投げ出してくれた。賢くて怖いもの知らずの私は、父のような行動ができそうにない。当時の父と同じ年齢、同じような立場になって思うのだが、私は賢いのだろうか。

英検1級に合格したり、京大の二次試験で英語8割、数学7割の得点率をとって成績開示したら

「威張るな!」

と罵声を浴びせられたりした。しかし、英語や数学ができて賢いと言えるのだろうか。受験指導をしている業界では、成績が最重要だということは分かる。私は今後も偏差値や成績順位を重視して仕事をしていく。

私はそういうデータを隠蔽したり否定する学校の教師が嫌いだ。隠蔽しようとするのは、それだけ重要なデータだと考えているからだろう。私にはそう思えない。100m走の記録程度のものにしかすぎないと考えている。

確かに社会に出ると足が速いことより学歴が重視される。敏感になりやすいデータではある。しかし、隠せば隠すほど

「成績順位は公表してはいけないほど人生で最重要なデータだ!」

みんなの読んで良かった!