恩師のことば
それは、満点が取れるだろうと判断するまで勉強を続けること。
目を掛けていた先生方は、それに気づいいたのかもしれません。
実際、100点を取ることもあれば、そうでないこともあったようですが、
これは簡単にできることではないはずです。
限られた時間の中で両立すべきことがたくさんあり、その時々に順応しながら最善を尽くすというのは、年齢問わず、誰もができることではありません。
わたし自身、成績向上を試みている過程で、「そんなに細かいところまで確認するんか!」と驚かされたことが何度もありました。
そして、その部分がテストに出たことも何度も・・・(笑)
赤点(50点以下)を回避したい私にとっては細かい内容でも、ふたりにとっては、当たり前に確認すべき箇所で、覚えておくべき事項だったということです。
今振り返っても、この高校に進学して良かったと思える最大の理由が2人との出会いかもいしれません。
「プロになってヨーロッパでプレーすること」
わたしは高校生のとき、学生記者として活動していました(勉強ができないことを隠し・・・)。
それほど長い期間携わっていたわけではないので、執筆した記事や、取材の機会は少なかったのですが、一生忘れないだろうと思える取材がありました。
学生記者の仲間に入れていただいた当初から企画案を出していた、高校サッカー部の取材。
サッカー観戦が好きだったこと、わたしの高校の近くに全国レベルのサッカー部があったというだけの理由でした。
そして現地へ出向いての、初取材!
進路に関わる大事な定期試験の最中だったことを覚えています。
インタビューで、Jリーグへの加入が決定していた選手にサッカー選手としての抱負を聞くと
「プロになってヨーロッパでプレーすること」だと即答されたこと、おそらく一生忘れません。
その一言だけでなく、たった3時間程度のその日の取材を、
この先ずっと鮮明なままで心に留めておく自信すらあります。
漠然と「敵わないなあ・・・」と思うわけです。
今でも「敵わない」以上の言葉を尽くすこと自体、おこがましいことだと感じております。
その選手はもちろん、部員全員が一人ひとりサッカー大好きで、楽しいという想いが練習から伝わってくるなんて、取材前には予想していなかったのです。
それぞれに事情や悩みを抱え、部内での激しい争いに一喜一憂していたのかもしれません。
それでも、好きなことに一生懸命取り組んでいるという、その想いが計り知れないほどにオーラを放つのだと痛感した経験でした。
「できることも、できなくなることも増えます」
それでは最後に、ふたたび高校の先生からの言葉を紹介して締めくくりたいと思います。
「これから、できることも増えるますが、できなくなることも増えます。髪の毛を染めることも車の運転をすることもできるようになりますが、100メートル全力疾走も、階段を休憩なしに昇り切ることもできなくなるといったように。」
今のところ、100メートルを走ることや、階段を休憩なしに昇り切ることに不自由を感じたことはありませんが(笑)、大学に入学して以来、この言葉の意味を考えさせられる出来事に、何度も遭遇しています。
これが一般に『今が大事、今日が大切』と言い換えられることだとすれば、
前向きな言葉に対し、先生は「今」は儚く、そしてとても深くて重い、残酷なものでもあると警鐘を鳴らしてくれていたのでしょう。
100メートル走や階段を昇ることは、あくまでも暗示の一例であって、
先生の真意のその核心は、言葉では補えないのかもしれません。
そういう想像の枠も汲み取れるだろうと、わたしたち卒業生にこの言葉を贈ってくださったのだと信じたいものです。
ただ、ご存命の先生ですし(わりと若い)、おそらく教育の現場でバリバリ働いていらっしゃるので、
あまり変なことは言えませんが(笑)。
最後に
高校で出会ったこれらの言葉たち以外にも、言葉には語り尽くせないものがあると、
言葉の限界を感じることがあります。
想像することでしか言葉との距離を縮められない場合や、
そもそも言葉にすることで軽くなってしまう事実もあると思います。
でも、少なくともこれまでお話した私にとっての「恩師の言葉」や、
そのほか多くの人が紡いでくれたメッセージは、心の琴線に触れるものであり、
私の価値観に多大なる影響を与えてくれています。
いただいた言葉は、わたしが20年間を過ごすにあたっての、
大事な栄養素であり、これからも必要不可欠なものです。
数年後には、この価値観が大きく覆されている可能性もあるわけですから、
やはり今、20歳のわたしでいる間に、今の自分を残しておく必要があったと思っています。
一人ひとりにとって、
言葉が影響力を持つひとつのツールでありますように、
言葉に感化される感受性を失いませんように。
そして、わたしがいつか母親になったとき、
自分の子供に素敵な言葉を残せますように。
最後まで読んでいただき、
そして20年、わたしを言葉や行動で育てていただき、ありがとうございました。
2015年11月9日
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