わたしのあまい処方箋
■母は魔法使い
わたしの両親は共働きだったので、
小さいころは家で留守番をしていることが多かった。
そのころのわたしは少し繊細なところがあって、
些細なことでも心が傷ついて、すぐ泣き出してしまう子どもだった。
そんなわたしに、母はいつもあまいお菓子をくれた。
そのお菓子を食べると、不思議と落ち着いた。
あらゆるものから守られているような安心感があった。
母がくれるお菓子は、わたしにとって1番の処方箋だったのかもしれない。
そのお菓子は、怖いことも全部忘れさせてくれる優しい魔法だった。
わたしの心を温める「秘密のお菓子」をくれる母は、
まるで魔法使いのような存在だった。
■ご褒美のケーキが、いまでもわたしの支え
小さいころのわたしはとてもおとなしくて臆病だった。
必要とされたくて、好かれたくて、勉強もがんばった。
そのおかげで、学校のテストでは良い点数を取ることが多かった。
テストでいい点数をとると、母は決まってケーキを買ってきてくれた。
温かいお茶と一緒に食べるケーキは、
わたしの憂鬱をあっという間に吹き飛ばしてくれた。
「がんばったね」と母が買ってきてくれるケーキは、
「頑張っていれば良いことがある」と教えてくれた。
わたしが未来へ歩いてくエネルギーになった。
それは今でも、わたしの希望になり、支えとなってくれている。
共働きで、普段はあまり頼ることができなかった母。
そんな母からお菓子を受け取りたくて、甘やかされたくて、
色んなことを頑張っていたような気がする。
小さいころのそんな経験もあって、
今でも辛いことや悲しいことがあると、甘いお菓子を食べる癖がある。
やり場のない思いで心がいっぱいになってしまったときは、
コンビニに寄って、いくつか気に入ったスイーツを買い占める。
甘いものを食べて泣く。
これがわたしにとっての一番のストレス発散方法なのだ。
これでまた明日からがんばっていけるような気になれる。
疲れた心に、少しだけ愛を与えられたような錯覚に陥る。
そういう心の支えをくれた母には感謝しようと思う。
仕事が忙しかった母が、わたしにしてくれた精一杯の思いやり。
だから、その思いだけは忘れないでいたいと思う。
わたしに限らず、スイーツに助けられている人は多いと思う。
疲れたときに甘いものを食べると癒される。
ダイエットはしたいけれど「少しなら良いか」と食べてしまう。
でもそれでいいんだ。それで笑顔になれるのなら。
明日もがんばれるのなら、かわいいもんだ。
こんな簡単で素敵な魔法はないじゃないか!ありがとうスイーツ!
いつか自分が母親になったとき、
私の手は「魔法の手」になってあげられるだろうか。
子どもが大人になってからも、生きる支えになることができるような
そんな素敵な魔法をかけてあげられる母親になりたいと思う。
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