あの日「それ何?」って私は軽い気持ちで聞いた。ねぇ、その答えを信じなきゃいけないの?
光になった彼女からの贈り物。
ふと思い出すことがある。
わたしが出かけた講演会で出会った女性のこと。
その講演会のホールでお隣に座りながらお互いに軽い挨拶ていど。
講演会が終わり、お隣の彼女に軽く“さよなら”をして
ホールを出たけどたくさんの人、人。
みんなが帰ってからゆっくり帰ろう…って
わたしは途中でひとり缶コーヒータイム。
しばらくすると、人がまばらになったので駅に向かった。
普段は乗り慣れない大きな駅で並んで電車を待っている時、
ふと横を見ると、先ほどお隣に座っていた彼女がいた。
お互いに、ビクΣ(゚д゚lll)ってしたあと、顔を見合わせて笑った。
「なんか……面白いですね。」
「はい。…とっても面白いです(^-^)」
そこからわたしたちは
一緒にご飯を食べに行く仲になった。
お互いに、どこの誰だかにはほとんど興味を持たずに
“いま興味のあること” “いま自分が楽しいこと”
を、いつも夢中で話した。
彼女は穏やかだけどとても明るくって
ふたりでケラケラよく笑った。
ただ…
ひとつだけ気になることがあったからあるとき、聞いた。
「なぁなぁ~。いつもご飯の後にいっぱいサプリみたいなん飲んでるの
何に効くん?」
彼女は、とても爽やかな笑顔でこう言った。
「わたしな、ガンやねん(^-^)」
「………?」
わたしはそのとき
彼女があまりにも笑顔なのでガンってなんやったっけ…………?
って思ったのはハッキリ覚えている。
それからも特に変わらずに会う時はいつも楽しかった。
ただ、サプリらしきものは減ることはなく、彼女は必ず飲んでいた。
季節のいろんな行事に追われて日常がばたばた過ぎ
大きな行事も終え、一段落したころにフッと思い出し彼女にメールした。
「ねぇー、そろそろ会おうよ~。」
返信がなかった。しばらく待っても返信がなかった。
少したって…うちのポストに、彼女の弟さんから一枚のハガキが届いていた。
そう言えば、ご両親はだいぶ前に他界されていて
弟さんと二人暮らしって言ってたっけな。
わたしは、瞬時にそんなことを思い出しながらハガキを見て
しばらく動けなかった。
ハガキには、彼女が‘’死んじゃったこと‘’が弟さんの言葉で丁寧に綴ってあった。
でも、わたしは泣けなかった。
そのハガキを見ても、まったく涙が出なかった。
彼女の笑顔しか思い出せない。その柔らかな優しい口調。
「としちゃん、お先~!」って微笑んでいるような気がした。
体調が急変したとのことだった。
しばらくハガキを握りしめてボーッとしながらも、わたしは思い出した。
そういえば前にわたしの住所を聞いてわざわざお手紙をくれたな。
内容なんやったっけ?ドキドキしながら、探したら見つかった。
やさしい文字。やさしい言葉。
内容はたわいもないこと。おススメの本があると書いてある。
「神との対話」だって。すぐに本屋さんに走った。
わたしがいまできることってよくわからないけどそれを読むことか…って思った。
スラスラと一気に読めた。
なんだか、自分の中のいろんなものがほどけていくのが分かった。
読み終えてから本を閉じ、しばらく何も考えられずに
世界でわたしだけ時間が止まったようだった。
それからすぐだったのか、時間がたったのかは分からないけど
悲しいとか、寂しいとか、それらとは異なるような言葉の付けられない感情が
どんどん涙になって溢れだしてきた。
わたしはようやく泣けた。
最後に会った時も、治るって信じていた彼女のくったくのない笑顔を思い出した。
泣きすぎて頭が痛くなった。
わたしは、生きているんだ。
わたしね、こんな数々の思い出が
“いまのわたし”に繋がっているように思う。
けいこちゃん、いつも楽しかったね。
本当に本当にありがとう。
わたしたちの日常には、温かいメッセージがたくさんある。
あちこちにある。
誰かのことばもこころの声も。
会うべき人にも、ベストなタイミングで会う。
こころの扉を思いっきり開けて
さぁ、今日も元気に生きよう!!
ーおわりー
ありがとうございました。
著者の新木 季子さんに人生相談を申込む
著者の新木 季子さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます