第七十七章 予備校の模試って、誰が採点してんの?

第七十七章

「予備校の模試って、誰が採点してんの?」

  私の塾生の子たちは、高校1年生の頃は校内順位を気にする。四日市高校なら、上位の5番くらいが「東大」、20番くらいまでが「京大」、60番くらいまでが「阪大」「名大」という感じ。

 ところが、高校2年生になる頃から

「待てよ、名大を受けにくる1万人くらいのほとんどは他校の子じゃん」

 と気づく。それで、河合塾や駿台の模試を受け始める。それで、受験校を決める。つまり、この「模試」というのは人生に与える影響がきわめて大きいと言わざるをえない。

 では、この模試の作成や採点は誰が行っているのか。もちろん、予備校の講師だろう。では、その予備校の講師って大学受験生50万人の将来を決めるほどの人物なのだろうか。ここが、いつも疑問に思う点だ。

 なぜなら、私はその予備校・塾業界で30年生きてきたからだ。名大教育学部を出て、アメリカの中学校で教え、英検1級や通訳ガイドの国家試験を合格し、名古屋の大規模予備校・塾・専門学校で教えてきた。

 ネイティブと一緒に英検1級の過去問を解いていたら

「なんで日本人のお前がこんな問題を解かないといけないのだ?」

 と呆れるほど古い英語を見て叫んだ。私の目から見ても、ナゾだらけの問題だった。生徒に定評のある「赤本」「青本」の模範解答でさえ、

「この解答では京大では6割くらいだね」

 と思うものも多い。私は京都大学を7回受けて成績開示したので、どのレベルの解答が何割くらいの点数を与えられるのか当てるのが得意だ。問題はとてもシンプルなのだ。

「英語が上手な人って誰なの?」

  私にも、

「先生と呼ばれる人は完璧だ」

と思う時期があった。今は、たくさんの実物に出会ったので、全くそう思っていない。私は英語のプロと思われているが、それでも自分の英語が完璧だと思っていない。日本語ほど流暢にはいかない。

 だから、少なくとも自分より学歴、資格、経歴などで劣る人を先生とは認めない。私でも帰国市場には発音でかなわないこともある。京大医学部に合格した子に数学で負けたことがある。

 だから、

「私より格下の先生が京大受験生の解答を採点できるはずがない」

 と思っている。思っているのではなくて、現実だと認識している。事実、私の指導させてもらっている優秀な理系女子は大規模塾に行って

「あそこの先生ダメ」

 と言って、やめてきた子が多い。

 さて、本題。

「予備校の模試って、誰が採点してんの?」

 だが、

「採点してはいけない人が採点してんの」

 かもしれない。私は名古屋の予備校や塾で、旧帝卒かつ英検1級所持という講師の方に出会ったことがない。人前に出れる人なら

「私が採点しています」

 と公表できる。でも、スゴイ数の受験者なんだから、どう考えても学生アルバイトが採点しているのだろう。

「東大や京大受験生のハイレベルの答案を、ワンランク下の大学の学生が採点?」

「これって、可能なんですか?客観テストならいいけど、英作文や和訳は?」

  ぜんぶ透明でできない事情があるのは分かる。でも、それで受験生50万人の将来を占っているのだから大問題だと思う。

  

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