第八十四章 そんなことは分かっている

第八十四章

「そんなことは分かっている」

  京都大学の二次試験は和訳と英作文のみであることが多い。したがって、採点基準が明確ではない。それで、生徒の求めにより京都大学を7回受けて採点基準の推定をしてみた。そして、その結果を Youtube、 ブログ、ホームページ、フェイスブック、ストーリーズで公開した。

  すると、知らない人から電話がかかってきて

「あなたは京大二次の採点基準を知らない。私が説明してあげます」

 と話を始めた。つまり、受験生の採点をしながら基準の人をつくる。その人よりこっちが上だから加点し、その人より下だから減点する。定石どおりだ。そんなことは、京大受験生でなくても誰でも分かることだ。その当たり前のことを上から目線で、得意げに解説をするわけだ。

  私は馬鹿馬鹿しくなって

「ハイ、さようなら」

  と電話を切っておいた。分かりきったことを拝聴しても時間とエネルギーも無駄だからだ。頭のよくない人の特徴が満載の話し方だったのだ。先日も、ベクトルの問題で質問が出たので、ベクトルではなく時間を短縮するためにxy平面を使って解く方法をほのめかしてみた。ヒントのつもりだった。

  たいていの子は、私の意図に気づいて問題は解決するが一部の子はベストのヒントに

「きちんと答えてください」

 と言う。ヒントであることさえ気づけないのだ。そして、

「学校の先生の言うことによると」

 と分かりきった解説を始める。

 そういう子にとって、私は基本的事項も理解していない哀れな講師なのだ。そういう時は学校の先生のように

「その答は○○だ」

 と結論だけを言う。それで満足あのだから仕方ない。本当は考えて、解答にたどり着くまでの過程が大切なのだが、学校の先生に洗脳されていると手のつけようがないのだ。

 私は最初、こういうダメな生徒は虚勢を張っているだけだと思っていた。しかし、違った。本気で自分は賢いと思っている。だから、私のような先生はバカにして教科書準拠の問題をやらせて褒めてくれる塾に移っていく。

  塾の中にはそういう生徒のことをよく分かっていて、適当におだてて月謝を集金することだけを考えるところも多い。需要と供給が一致しているわけだ。しかし、そういう子は絶対に難関校には合格できない。

 難関校に合格できる子は、客観的な目で自分を評価できる。公立中学校なら上位の3%くらいには入れるが、上位が無数と言えるほどいる。だから、たとえ問題が解けても

「もっとうまい方法はないか」

 と常に改善を模索している。だから、私がアドバイスすると

「この人は自分より上だ」

 とすぐ理解して、私の言葉に何が隠されているのか探ろうとする。だから、合格する。世の中には自分では理解できないほど賢い人がいる。簡単に人を見下さず、何かを学ぼうとしないと永久に上のステップに上がれない。

  ところが、こういう人としての生き方は教えるのが不可能だ。幼稚園、小学校で勉強は先生から答を聞いて丸つけすることだと教えられてしまうと取り返しがつかない。どこかで、そういう指導がおかしいと気づけないようでは見込みはないのだが。

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