13位、廃業に追い込まれていく塾のワケ

第九十五章

「廃業に追い込まれていく塾のワケ」

  30年も塾経営をしていると、目の前でいくつもの塾が廃業していくのを目の当たりにした。子供もいたので、私は倒れていく塾の経緯を研究していた。たとえば、よく保護者から

「自習室はありますか?」

 と尋ねられる。「落ちこぼれ」組の生徒の質問だ。「お客様の声を聞く」という美名のもと、多くの塾が自習室を作った。もちろん、お金がかかるので月謝が上がる。でも、私は作らなかった。「浮きこぼれ」の子たちが望んでいないことを知っていたからだ。

「5科目の指導をしてもらえますか?」

 という声もよく聞く。「落ちこぼれ」の生徒からよく出る。しかし、考えてほしい。学校と違い、塾は週に2回とか3回しか通わない。そこで、どうやって5科目の指導をするというのだ。全科目中途半端になる。

 5科目の先生を雇って中途半端な指導を始める塾もあった。もちろん、人件費が莫大になり月謝が上がる。私はその道はとらなかった。毎月の月例テストを5科目にし、家庭学習中の質問を写メして送信してもらい5科目の質問に答えるようにした。

  経費をかけた塾の多くは、すでにない。存続している塾も「不良のたまり場」と呼ばれている。逆に、私の塾には地元の優秀な生徒が集中して集まってもらえた。こんな田舎の個人塾なのに、ほぼ毎年「京大」「阪大」「名大」に合格者がでる。

  「落ちこぼれ」はいつも騒ぐ。だから、大きな声に惑わされて塾経営者の方たちは「生徒の声」だと勘違いする。一方、「浮きこぼれ」の優秀な子たちは常に静かで声をあげない。しかし、サイレント・マジョリティの声を聞かない経営者は淘汰の憂き目をみるのだ。

  これは、日本のマスコミを見ているとよく分かる。すぐにデモなどの暴力に訴える左翼の声が大きいので、それを「国民の声」として報道する。ところが、現実はそうなっていない。左翼を支持するのは、日本人の2割くらいしかいないのだ。

  あとの8割は黙って推移を観察している。そういう大多数の声に耳を傾けないから中学生からでさえ

「マスゴミの言うことは信用できない」

 と言われてしまい、テレビや新聞を信用しなくなるのだ。「落ちこぼれ」組は怠け者なので、成績が上がらない。すると、

「あの塾はダメだ」

 と自習室や5科目の講師を用意した塾を簡単にやめていく。そういう塾は経費に圧迫されて消えていった。ワガママな人を相手にすると、夜逃げや首吊りに追い込まれる。まともな人を相手にしないと命取りになりかねないのだ。

  だから、どの塾も予備校も高校も大学も「マジメで素行がよく、成績優秀な生徒」の確保に必死になる。学校だけではなく、企業も同じことだ。アホな若者に来られたら倒産してしまう。

 優秀な人材の確保は死活問題なのだ。

 では、どうすれば優秀な人材に来てもらえるのか。既に書いた。「落ちこぼれ」の大きな声ではなく、「浮きこぼれ」の静かな声に耳を傾けることだ。観察することだ。たとえば、私は

「学校の先生は質問すると、すぐに逃げる」

 という静かな声を聞いた。だからこそ、学校のように5科目指導の先生を用意せずに家庭学習中の質問にメールやファイルで答えるようにした。

「塾の先生は、私より英語がヘタかも」

 という声を聞いた。だから、英検1級をとって生徒に安心してもらった。

「あの予備校の先生、Cランク大卒で信用できない」

 という声を聞いた。だから、自分で京大を7回受けて成績開示をした。

 そういう真摯な声に耳を傾けずに、豪華な自習室を作り、学力の低い講師を用意しても廃業に追い込まれるだけなのだ。もちろん、少子化や不況も関係しているが厳しい経営環境の中でも生き残る塾はある。

  エール出版の合格体験記は「東大」「京大」のものが売れる。それは、大多数の生徒が

「どうしたら成績を上げることができるか」

  知りたいからだ。つまり、上位層の勉強のマネをしようとするわけだ。お陰で、四日市高校や津高校、あるいは東大や京大が定員割れなど起こらない。塾や予備校も同じことで、上位層に選ばれる塾や予備校だと

「あんな優秀な子が選ぶのだから間違いないだろう」

 ということで評価が上がる。建物がきれいだとか、自習室があるからといって選ぶわけではない。ダメな大学ほど

「うちは食堂がきれいです」

 といった学業と関係のない点で生徒を集めようとする。「下町ロケット」の中小企業や、今や巨大企業になったマイクロソフトを見れば

「すべては人次第」

 という原則が分かるはずだ。武田信玄の昔から

戦国最強と言われた武田軍総大将、武田信玄の名言

人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり

  三重県の無名の個人塾から、今年は10名の京大受験にチャレンジする。

H27年度、合格実績        

「京大経済学部」「京大総合人間学部」「東京医科歯科大学」「阪大外国語学部」「東工大」「名市大薬学部」

H26年度、合格実績

「京都大学医学部」「大阪大学医学部」「京都大学工学部」三重大学「工学部」

  こういう実績は、良いユニフォームを着れば一流選手式の考え方の人の目には留まらない。しょせん、塾は講師なのだ。

塾長;名古屋大学卒業後、アメリカ、ユタ州ローガン中学校で教師経験後帰国。英語検定1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級など合格。名古屋の大規模予備校で14年間勤務。京都大学を受けて成績開示し、英語8割、数学7割正解。「英語の資格を取ろう」(法学書院)で紹介されました。

「テレビで有名タレントがCMやっているから、あの塾に行く」

そんな生徒には来てほしくない。合格実績も上がらないし、退塾率が高いし、経営が不安定になる。備品の破壊や月謝の踏み倒しも多いのだ。素行が良くない生徒は塾が倒産する第一歩だ。

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