歩けない猫「どん」との出逢いから別れまで-2-

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前話: 歩けない猫「どん」との出逢いから別れまで-1-


思わず 大声で呼びかけてしまった・・・


でも返事は返ってこなかった・・・。


息をしていない・・?


動いてくれない・・・!?



その現実を目の当たりにした時・・・

言葉は出ず、ただ涙が ぽろりとでてきた・・・。

ふと・・・後ろを向いていた先生の大きな背中が
わなわなと揺れているのが見えた。


「動物の死」には慣れているはずの・・・


先生が泣いてる?


そう思った瞬間・・・
今まで押さえていたものが爆発するように
涙が溢れ出た。。。

声を だして わんわん泣いた・・・


なんとも言い難いほど・・・辛く悲しい「ひととき」だった・・・。


「もっと早く病院に連れて来てやっていれば、こんな事には
ならなかったかもしれないですよね・・・(後悔)」


「それは違いますよ・・・
昨日の時点ではそこまで悪い状況じゃなかった。


それにもし、ゆうべ連れてきていなければ、きっと体内に
余分なものが残った状態で、苦しんで逝ったと思います。
治療して、全てだしてやって、点滴して・・・
どんちゃんはたぶん、ラクに旅立っていったはずですから・・・」



涙をこらえ・・・途中何度も言葉をつまらせながら・・・
私たちの「非」を否定してくれ・・・

熱弁する先生の言葉を聞いていたら
また涙がどっと溢れた・・・。



「先生、今まで長い間、本当に・・・

お世話になりました・・・

ありがとうございました・・・」

どうにかご挨拶らしき言葉を言い残し。。。


少し落ち着いてから、彼の亡骸を抱きかかえ、精算を済ませ、車に乗り込む・・・。


車に乗った瞬間、また号泣してしまった。


駐車場に居た、車内で診察を待っていたゴールデンと飼い主も
おそらく こちらを見ていたと思う。


恥ずかしいとか、言ってられる余裕なんか これっぽっちもなくて
人目も憚らず、ただただ泣くばかりの私・・・。
 


猫たちのお別れ儀式



この日は、運良く仕事がそれほど忙しくなかったので、
会社を早退させてもらうことになった。


涙で目がボンボンに腫れあがっている私を見て、
誰もが同情していたに違いない(苦笑)
(ありがとうございます・・・)



これから、彼を送ってあげなきゃならない・・・。
最後のお別れのために・・・。


でもその前に、「どん」を姉妹達に会わせてあげたい・・・。

そう思った私は、ペット霊園(火葬場)に行く前に自宅に寄った。


バスタオルにくるまれたドンを、いつも檻が置いてあった場所に寝かせてあげた。


最初に近づいてきたのは「てん」だった。


くんくんと臭いを嗅いで、目を白黒させていた。
その後、着かず離れずの距離を保った位置から、
かなりの長い時間 ずっとそちらを じーーっと静観していた。


その姿は、まるで・・・・

「ドンちゃん、どうしたの?」

「僕はお星様になっちゃったんだ・・・」

「ドンちゃんが居なくなっちゃうのは寂しいよ・・・」

「僕ね?今までずっと檻の中で歩けなかったでしょう?空に行ったら たくさん走り回るのが夢なんだ~。でもこれからもみんなの事はずっと忘れないからね・・・」


彼の亡骸と、そんな「会話」をしているようにさえ思えた・・・。



部屋の隅っこに逃げてしまった「あん」は、「てん」と「どん」の会話?さえ、知らんぷりで・・・
なかなか近づこうとせず、しばらくおどおどした様子だった。


少したってから、ようやく彼のそばにやってきた「あん」は
不思議そうな表情で、クンクンと臭いを嗅いでいる。


覆われていたバスタオルをめくり、ドンの顔を見せてあげる・・・。

一瞬、逃げる素振りをしたけど。。。


すぐに立ち止まって、そこからじっとドンを見つめていた。


でも、その「現実」が、まるで理解できずに・・・?
「ドン」の顔をペロッと舐めはじめた「アン」を見て・・・
なんだか、また涙が出てしまった・・・。
 



8  最後のお別れ・・・



火葬場へ着いた・・・。
優しそうなおじいちゃんが受付係だった。


簡単な事務手続きをして、料金を支払い、説明を受け・・・
(このへんは、もうほとんど覚えていない)


少しして、達筆のおじいちゃんが・・・
「ドンの戒名?」を書いた紙をペット用の祭壇に置いてくれた。



人間の時と同じように、ローソクをたてて、
お線香をあげて、数珠まで用意してくれてあった。


手を合わせてお参りをしていたら、おじいちゃんが気を遣って?
すぐ隣に寝かされていたドンの顔を覆っていたバスタオルを
めくってくれてしまった・・・


ああ。。。余計な事を・・・(苦笑)


だから、だめだって・・・


泣いちゃうよぉ・・・・。(以下省略・・・)



動物たちを火葬するのは1日1回と時間が決まっていた。


待っていても、悲しみが増すだけなので。。。
おじいちゃんに「ドン」の最後を全て任せることにした。


「気をつけて帰って下さいね」


優しい言葉をかけてもらうと また涙が・・・。


泣く泣く、火葬場を後にした・・・。


家に帰って、しばらくたってから


「今、どんちゃんを無事に見届けました・・・」


電話の声で、またしても泣いてしまった・・・。


とにかく「泣き通し」の一日だった(苦笑)




天国の「どん」へ


どん、元気ですか?

そっちの生活は慣れましたか?

ドンの居ない部屋の片隅はとっても広く感じるよ。
空いたスペースで、アンがゴロンと横になって
ぼけーっとしている時があるのは、もしかして
「ドン」が遊びに来ているからなのかな?

私ね?今までずーーっと悩んでいたことがあるんだ。

あの雨の夜・・・
もし残業していなかったら?
もしドンに出会わなかったら・・・??

ひょっとしてドンは・・・・・
すぐに天国に逝っていたのかもしれないよね。

その方がドンにとっては「幸せ」だったのかなぁ~って・・・。


こっちの身勝手で、勝手にあれこれお節介やいてさ
長い間の病院生活もさせたし・・・・点滴に注射・・・。
人間だってイヤがるような治療にもよく耐えたよね。
いろんな病気にもなって、人一倍 辛い事も多かったと思う・・・。

なにより、歩けないのは、きっと悲しかったよね。
「てん」と「あん」がおいかけっこをしている時
「ドン」はどんな気持ちで見ていたんだろう?

走りたかっただろうに・・・
一緒に遊びたかっただろうに。。。

それを思うと、今でも せつなくなるんだ・・・
苦しくなるの・・・。

叶えてあげられなくて、ごめんね。

周りの心ない人からは
「そんな歩けない猫なんて・・・」とか
「お金かかって大変そう・・・」だなんて
悲しい言葉で傷ついた事もあったかもしれないよね。

でも、少なくとも私たちだけは、そんな事思っていなかったよ。

それどころか、「ドン」が居てくれたお陰で
お金なんかじゃ決して買えない「何か」を得たと思ってるんだ。
こんなに情けなくて、頼りない飼い主だったけど
今まで一緒に居てくれて 本当にありがとう。。。

これからも元気でガンバルんだよ!
私も、もう泣かないで頑張るつもりだから・・・。
こっちの事は心配しないで!

たとえ、離れていたとしても・・・
いつまでも、ドンはうちの子なんだからね♪

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