5歳で両親の離婚を経験して心に傷を負った僕が音信不通だった母と18年ぶりに再会して気付いた親子に必要なたった1つのこと

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と思いましたが、

ポーカーフェイスがウリの田中翼は

じゃあ一緒に見るわ。

と返信しました。

内心はドキドキしまくりです。

18年間会っていなかった母との再会。いつかできればいいなと思っていたことが、いざ叶うとなるとこうもドキドキしてしまうものなのか。



そして演奏会当日。

電車を降りて会場に向かい、少し早く着いたので僕は中に入って待っていました。

18年ぶりの再会。ですが僕は決めていました。

できるだけ自然に振る舞おう。
実家のお母さんに久しぶりに会う感じでいこう。

少し待っていると数日前姉に聞いた、母のLINEから「入り口の外にいます」と連絡が入ります。

入り口の外へ僕は向かい、母を探します。

顔も背の高さも5歳までの記憶しかないので見つけられるか心配でした。

が、

間違いなくこの人だ。

とわかりました。

久しぶり。

と声をかけました。

母は

久しぶり。大きくなったなぁ。

と返し、嬉しそうに笑ってくれました。

その時、僕は永い間感じていなかった言葉にできない嬉しさを感じました。


開場して席に着き、僕と母はいろんなことを話しました。

離婚の話、その後の話、最近の話、昔の話、仕事の話、家族の話。

無愛想な僕は母の話を聞いて相槌を打ったり少し質問するぐらいしかできませんでしたが、母と話せることが楽しかったです。



そして演奏が始まります。


曲目は

バルトーク/ピアノ協奏曲第3番

音楽はあまり詳しくないのでどんな曲なのかも分からず聴いていましたが、演奏は力強さもあり繊細さもありいくつもの音が揃って凄い世界観がありました。

分からないながらも演奏に引き込まれ曲も終盤に差し掛かった時、



ツーっと、ほっぺたに涙が流れたのです。



自分では意識していないつもりでも、母と再会できた喜びや、母がいなかった学生時代の寂しさは言葉で言い表せるようなものではなく、僕の心の底に溜まっていた言葉にできない感情が溢れてしまったのだと思います。

ですが、泣いている姿を見せたくはない僕は母にばれないように涙を拭き、何事もなかったように演奏を聴いていました。


演奏が終わり、休憩をはさみ、全ての曲目が終わりました。


外に出てくる姉と話し、打ち上げに向かう姉に見送られ、僕と母はM美との待ち合わせ場所近くの喫茶店に入って少し話していました。

約束していたM美から仕事が終わったと連絡があったので、どこで会うのか確認するために電話して、母に電話を渡しました。

M美には母と会うとは伝えていなかったのでM美はとてもビックリしていました。

M美が合流したところで、「じゃあまたね。」と言って母は家に帰っていきました。

僕も手を振って「また。」と母を見送りました。

母が帰った後、M美とご飯を食べながら今日のことを話していました。

M美も僕と母のことを気にかけてくれていたようで、「よかった」と言ってくれました。

M美と別れて家に帰る電車に乗っている時、心に開いた穴が埋まる感覚と共に、これまでのことを思い出していました。



そして気付いたことがあります。

5歳で両親の離婚を経験して心に傷を負い、音信不通だった母と18年ぶりに再会した僕が思う

親子に必要なことはたった一つなんです。


子供を良い環境に置くことでも、

親に楽をさせてあげることでも、

優しい言葉をかけてあげることでもありません。



「そばにいること」



それだけなんです。


最近は便利です。携帯やスマホがあればどこでも繋がれますし、連絡も取れます。

でも実際に会って、同じ空間を共有することには到底かないません。

話さなくても、目を見ていなくても、そばにいるだけでいいんです。



きっと何十年も一緒にいるとそんなことが当たり前になってしまって、感謝することもなく、忌み嫌ってしまうのだと思います。

でも、もし今あなたに、離れて暮らす親がいるのなら、会いに行ってください。

一緒に暮らす子供がいるのなら、余計なことは言わず、そばにいてください。

心が繋がっていれば言葉はいりません。

自分の親を、自分の子供を心の底から嫌いになれるわけがないんです。


僕は「両親の離婚」という事象を

「近くにいた父の有り難さ、離れていた母の大切さを学ばせてくれた」

事象だと捉えています。


それがあったからこそ、今の自分の弱さがあって、強さがあるんだと思うからです。

起こった事象を変えることは至難の業ですが、起こった事象を自由に捉えることは簡単です。

人は皆、自由だと僕は思っています。

自分に由るんです。起こった事象は自分に由って捉え方を変えられるんです。



だから僕は両親に感謝しています。

お父さん、お母さん、ありがとう。



このストーリーをどう捉えるかも、あなたの自由です。

最後まで読んでくださってありがとうございました。



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