第百十九章 見せかけの優しさと、本当の優しさ
第百十九章
「見せかけの優しさと、本当の優しさ」
多くの人を、長期間にわたって騙すことは出来ないと誰かが言った。
私は素行不良の生徒が嫌いだし、真面目な生徒に迷惑がかかる場合は容赦なく「強制退塾」させてきた。だから、ろくでなしタイプの生徒と保護者からは蛇蝎のごとく嫌われた。
「どんな生徒でも見捨てずに更正、教育するのが先生ではないのか!!」
というわけだ。学校はもちろん、大多数の塾講師も
「大丈夫、私にお任せください」
という対応をするので、そういう対応が当たり前だと思ってみえる方が多い。しかし、それは現実を知らない人のセリフだ。
授業中に遅れて入ってきて、授業中に私語ばかりで授業妨害をし、途中でトイレに立ち、プリントを配布しても帰りに捨てて行き、備品を壊し、盗み、月謝を踏み倒す。そして、追い出されたら悪評をばら撒き、追い出されなくても合格実績にはつながらない。
こんな生徒に
「大丈夫。頑張って四日市高校に合格しよう」
という塾講師がいる。合格できる可能性はゼロなのに。保護者は、そういうウソが大好きなのだ。残酷な現実を見たくないのだ。四日市高校なら、学年で1番、2番、3番くらいまでしか合格できないのだ。この地区の中学校では。
私はキツイことを言うかもしれないが、ウソは言わない。毎月塾生の方にお渡しするコンピューターによる順位、偏差値、合格判定もウソは言わない。以前は、
「こんな順位をつけられたら自信を失うだろう!」
と抗議を受けたこともある。最近は、そういうタイプの方は当塾を批判し、来てもらえない。ところが、サイレント・マジョリティである真面目な生徒の方たちが集まってくれた。
そのお陰で、当塾は30年以上つぶれずにきた。
さて、
「本当の優しさって、何だろう」
医者は治療するために、苦しい検査を要求する。痛い注射も、苦い薬も受けるように要求する。時には、腹を切り裂いて手術をする。そして、患者はそれに従う。病気を治したいからだ。
受験指導も似たような面がある。勉強が苦しい時期もあるのだ。しかし、本気で生徒の合格を後押ししようとする塾講師は甘い言葉ばかり言わない。言えない。
重病の場合は、死に至る。だから、患者は苦しい治療に挑む。受験の場合は、不合格は避けたい。学歴は人生を通して、さまざまな場面で表面化する。就職、結婚などで大きな決定要素になる場合がある。
さて、厳しい言葉をかける講師と、甘い言葉をかける講師と、どちらが本当に優しいと言えるのだろう?
「そんなのは、おまえの考えで、オレはちがう」
と怒鳴られる方もみえる。私は考え方を述べているのではない。30年前から塾をやっているので、第一期生は現在45歳。その子たちが塾に来てくれている。正社員になっている子。ニートやパラサイトになっている子。いろいろいる。
その現実について書いている。つぶれたくないから本気なのだ。
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