フェンスの外の高校野球~実る努力の3つの条件~
そして最後の大会。ベンチ入りのメンバーの発表が近くなったある日、練習後ミーティングがありました。
それは監督からの質問でした。
「チームが勝てるベストのメンバー」か
「3年生全員がベンチ入りするメンバー」か
どちらがいいか選べというものでした。
最後の大会への意気込みはやっぱり3年生の方が強いです。
学年関係なく、チームの中で上手い人間がベンチ入りするのが一般的ですが、中には3年生主体のチーム編成にして気持ちの強さで勝ち進むというチームもあります。
どちらを選ぶかは人によると思いますが、僕の心は決まっていました。
監督は更に続けます。
僕にはすぐ答えがわかりました。
実力のある2年生でもなく
マネージャーでもなく
監督でもありません。
僕です。
僕のように、試合で活躍して結果を残すために練習してきたけれど、結果が出せなかった選手です。
最後の大会だから、3年生だから、ベンチ入りする。
だったら初めから僕のやってきたことはなんだったのか。
僕が練習をあれだけ頑張れたのは試合で活躍して結果を出して、メンバーに選ばれたかったから。
それが最後の最後、同情ともとれる理由でメンバーに選ばれたとすれば、納得できるわけがありませんでした。
監督もそれはわかってくれていました。
結局ミーティングの結果「チームが勝てるベストのメンバー」で最後の大会に臨むことになりました。
それが決まる=現状から見て僕のベンチ入りはなくなったような状態でしたが、それでもチームを盛り下げることはできません。大きな声で活気付けます。
メンバー発表の前のある練習試合で、3年生だけで行う引退試合が組まれました。
普段試合に出れていないメンバーで組まれた打順。
監督の計らいで僕は4番ファーストになっていました。
僕は選手として最後の試合になるとわかっていたので、心から楽しむと決めていました。
結果は2塁打を含む3安打の猛打賞。
この時僕は、今までの努力は無駄じゃなかったんだと思いました。
僕の選手としての活躍はそれが最後でした。
最後の大会に向けてメンバーが発表され、背番号が渡されますが、もちろん僕の手元には背番号はありません。でもそれがチームにとって最善の選択で、僕も納得していました。
じゃあ僕はベンチ入りした選手にできないことをやろう。
僕は観客席から試合を応援する選手たちをまとめる応援団長を務めることにしました。
ベンチ入りした選手に、応援曲は何がいいか聞いて回り、吹奏楽部と打ち合わせをして、
キャプテンが当時なぜかハマっていた曲、渡辺美里さんの『My Revolution』を吹奏楽部に頼んで演奏できるようにしてもらったりもしました。
しかし、最後の大会を控えた大事な時期に、キャプテンが練習中デッドボールを受けて前腕の骨を折ってしまったのです。
これではキャプテンは試合に出れません。キャプテン専用の応援曲だったMy Revolutionで応援することは無くなってしましました。
そして、最後の大会が始まります。
甲子園も夢ではない強さだった僕の高校は1回戦2回戦と順調に勝ち進みます。
応援団長の僕はフェンスの外から仲間を応援します。
夏真っ盛りの暑い中、吹奏楽部も頑張ってくれていました。
そんな僕たちの期待に応えるようにチームは勝ち進み、準決勝を迎えます。
試合は3対4でこちらが追いかける試合展開。
9回の攻撃、2アウトランナーなし。
その時監督が代打に骨折していたキャプテンを指名しました。
どんな思惑があったのかは知りません。最後の最後に故障者を代打に出すのは賛否が分かれるところですが、僕は急いで吹奏楽部にお願いしてMy Revolutionを演奏してもらいました。
結果は見逃し三振。
泣き崩れる仲間もいましたが、僕は涙をこらえ、荷物をまとめて引き上げるために指示を出します。
こうして僕たちの高校野球が終わりました。
僕は自分の力がわかったので、高校卒業後、野球はやめました。
ですが、野球をやってきた8年間、特に高校野球の3年間で感じたことは今の僕の人生の教訓になっています。
その中でも「努力」に関しては強く思うことがあります。
実る努力には3つの条件があるんだと思います。
1つ目は「正しいタイミング」
努力は始めるのが早ければ早いほど良いです。明日からやるより今日から、今日からやるより昨日からやっているほうが結果は出やすいです。
それと常にすべてのことを全力でやるのではなく、重要なポイントにタイミングを合わせて努力した方が結果が出やすいです。
2つ目は「正しい方向」
大阪から東京を目指すのに博多行の新幹線に乗ってしまうと大変な遠回りになってしまいます。
それと同じように、努力も方向を間違えてしまうとそれだけ結果からは遠ざかってしまいます。
自分が目指す結果を意識して正しい方向で努力することが必要です。
3つ目は「自分が心からやりたいこと」
これは唯一、僕ができていた条件です。
やらされていること、やらなければならないこと、やるべきこと、をしている時には楽しさがありません。仕事、育児、介護、勉強、部活、どれにしても同じです。
しかし、自分が心からやりたいことには徹夜しようが、貧乏になろうが、ご飯を食べなかろうが、楽しさがあります。その楽しさが原動力になり、本人は努力しているつもりが無くても結果に繋がる、実る努力になりやすいです。
マンガやドラマは現実とは違います。
現実は残酷です。
努力は裏切ります。
諦めなくても試合が決まっていることだってあります。
気持ちだけの綺麗ごとで片付かないのが現実です。
だからこそ、何も考えていない我武者羅な努力じゃなく、
よく考えて本質を突いた努力をすることが大切になります。
誰だって実らない努力じゃなくて、実る努力にしたいじゃないですか。
努力はやらされるものではなく、したくなるものです。
もしやらされているのであれば、今すぐやめるか、今すぐ好きになれるようにすることです。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
起こった事象を変えることは至難の業ですが、起こった事象を自由に捉えることは簡単です。
僕は少しでも多くの人にこの事を知ってほしいんです。
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