発達障害児を含む3人の子育てを、歌いながら乗り切った話
音楽の才能を集中して伸ばすべく専門の道を親が準備し、
本人も努力してきました。
弦も頑張ったけど、ユタカも私も頑張ったよね。
そんな会話を夫婦でかわせるようになった昨今、
あらためて思い返すと育児でてんてこ舞いだった頃も、
我が家にはいつも音楽がありました。
イライラを歌に昇華していた育児期
会社員のかたわらアマチュアとしてヴィオラを弾いている
ユタカは、今も昔も朝から重厚なブラームスの交響曲を
大音量で流したりします(ハタ迷惑!)。
かたや私は、泣き止まない恵麻を揺すりながら、
「なんで泣くの〜?なんで泣くの〜?♫」と適当なフシを付けて
歌っていた頃から始まり、
親の手を振り切ってどこへ行ってしまうかわからない、
しかも喋らない弦のために
「ゴーロクニーロク…♫」と電話番号を歌にして覚えさせ、
夜は3人まとめて寝かしつけるため、オリジナルの子守歌に
順番に子ども達の名前を織り込むなど…。
とにかく朝から晩まで「お歌作戦」。
わけのわからない発達障害児を含む2歳違いの3人の子育てですから、
ストレスがたまらないわけがありません。
そのイライラを、子供に直接ぶつけないようにと、
無意識に歌い始めたのだと思いますが、
後から思えば、この「お歌作戦」には良いことがいっぱいあったのです。
たとえば靴を履いてくれない子どもに、「靴を履きましょ!♫」
(ビビディバビデブーのフシでどうぞ)と歌えば、親のイライラが子どもに伝わらず、楽しい気持ちで靴を履いてくれます。
「お風呂だよ〜、お風呂だよ〜♫」(これは民謡調、合いの手に手拍子も)と
コマーシャルソングのように毎度繰り返していると、
私の歌声で子どもたちは条件反射のように寄ってきて、
服を脱いでくれます。
自分の名前が織り込まれたシンプルな子守歌を聴きながら、
子どもたちはハッピーな気持ちで夢の世界に誘われます。
そして何よりも私自身、歌えば、子どもに対して「早く、早く」と
イラつく気持ちをストレートにぶつけないですむことが、
ストレス軽減につながるのです。
そもそも「なんで泣くの〜?なんで泣くの〜?♫」という歌は、
一人目の恵麻がよく泣く赤ん坊だった頃、
腕に抱えて揺すっているうちに自然に生まれたのでした。
泣きやまない赤ん坊を抱いて揺すって、
次第にイライラしてきて自分がおかしくなりそう、
でもリズミカルに揺すっているうちに、
自然と口ずさんでいたのが
ちょっと脳天気な「なんで泣くの〜?なんで泣くの〜?♫」
そんな私の適当な鼻歌・出まかせの子守歌から、
夫の好む重厚なクラシック、ジャズもビートルズも。
いつも音楽があふれている家で育った子どもたち。
恵麻と佳那はそれぞれ音楽とは別に得意なことを見つけましたが、
音楽を楽しむための耳は育ちました。
そして弦は、
できること・できないことの偏りが大きい、
つまり「発達でこぼこ」という意味で「発達障害」と診断されるものの、
今もプロのチェリストを目指して修行を続けています。
最近ではおかげさまで、ギャラの頂けるお仕事も入るようになり、
仲間うちでは「チェロの上手な不思議くん」というキャラが定着しているようです。
「音楽が人生を変える」
よくあるテーマですが、
歌でたいへんな育児を乗り切った、そんなストーリーもあることを、
今、育児でたいへんな思いをしている方にお伝えできればと思い、
投稿いたしました。
最後までお読み下さってありがとうございました。
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