出産で左遷⁉︎何が何やらな私の歩いてきた道。

現在は師範資格を生かし書の仕事をさせていただいているが、我が家の長女ドカ弁が小学校一年生までフルタイムでショッピングセンターのデベロッパーの仕事をしていた。

ちなみに長女をなぜドカ弁と呼ぶかといえば、男性用の900mlの曲げわっぱ弁当をペロリとたいらげる大食いJKだからである。




話をもとに戻そう。

どうすればテナントの売り上げアップに繋がるのかを考える仕事である。
この仕事を10年余りやって、色々あったが楽しいこともあった。
いや、実際は苦しみもたくさんあったが、今は全てがよい経験だったと思っている。

ドカ弁を出産するまでは営業部に所属していた。出産して一年の育児休暇を終えて会社に復帰した時には、私の席はなかった。

いわゆる左遷であった。

10年ひと昔とよく言われるが、まさに今から10年以上前は、子どもを産んでもなおフルタイムで働こうとする女性に対して、企業も世間も冷たい時代だった。
「子ども産んで、一年も休んでおまえの戻る席なんかないわ!」って空気が露骨に残る、オトコはん様様な雰囲気が今よりももっと濃かったように思う。

「はっ!?これって左遷!?いったい何時代の話やねん!」
時は2000年。ミレニアムベイビーとかなんとか、新時代の命が誕生してくる時代!なんてマスコミが騒いでいた時期であったが実情はそんなもんだった。

私が人事異動した先は、地下に小さな部屋があり隣に防災センターがある管理事務所。事務所の中には私のほかに黒い縦じまのスーツに身を包み、アイパーヘアに長いもみあげを残したいかついおじさんと、小柄だけどやはりいかつい顔に髭を生やしたスキンヘッドのおじさんが2人。

開口一番言われた言葉は今でもよく覚えている。
「本社から来た人にはわからんやろけど、ここはここのやり方があるから。」

カチンときた。そして泣きたくなったのをグッと堪えた。

「ここが自分の席やから。」と言われ、デスクに座る。なんか違和感を感じる。あ!そっか!アレがないからか!そして当たり前の疑問を質問してみた。

「あのー私のパソコンどこですか?」

返ってきた返事はありえない言葉だった。
「本社の人はどうか知らんけど、ここにはそんなもんあらへんで!書くのが嫌やったらそれ使って!」

いかついおじさんが指差す先にあったのは一台の古いワープロ。書院というやつ。

絶句した。仕方なく報告書を作ろうとガチャガチャ打ってみた。
プリントアウトしようとして気がついた。なんと感熱紙である。

ジージーっとノロノロ1字づつ文字が印刷されていく。途中であっ!とミス入力に気づき印刷をストップした。

我慢できずに叫んだ。
「こんなちんたらしたスピードで印刷してたら訂正印刷するのに1時間もかかってしまいます!」

返ってきた返事は「しゃーないやろ。1時間かけるしかないんちゃう。」

産まれて初めて悔しくて眠れない夜を経験した。
ここで辞めては負けや!絶対手はあるはず!
ものすごい高速回転で色々と考えた。

長年この場所に居て、凝り固まった習慣を纏った怪しげなおじさんたちに訴える方法。当たり前にパソコンが支給されていない、この閉鎖空間にいる人たちの心を溶かす何かをまず探さなくては。

試しに汚いゴム印が入った錆びついた入れ物を処分し、卓上でクルクル回転するゴム印ラックを購入してデスク中央に置いてみた。

誰の席からも片手を伸ばすだけで手が届き、必要なゴム印をクルクル回転させながら探せる優れもの。
強面のおじさんたちが声をあげて喜んでくれた。

「おお!これ便利やな~!いちいち立っていかんでえーし、あいうえお順に並んでるから探すの楽やわ~!おおきに!」
なんと笑顔で御礼まで言ってくれたのである。

次にやったことは、手書きで出勤日を記入し、豆粒みたいな小さなゴム印で有休とか出勤とか押していた勤怠管理表をエクセルで作れないかと考え、自宅で作成したものを持っていき、どんなに便利でミスが減るかをおじさんたちにプレゼンすることだった。

おお!とおじさんたちは興奮気味に声を上げてくれたので、「本社にパソコンを購入してもらいましょう!」と併せて購買請求書を作って渡してみた。

半月後、念願のパソコンが管理事務所に一台届けられた。

私が一人でカタカタとパソコンを使い、事務所の書類、帳簿、決裁書などを次々に作り変えていくのを見ていたおじさんたちは、ついにこう言って声をかけてきた。

「なぁ、それほんまに便利やなぁ。ワシらも欲しい。やり方教えてくれへんか?」

やった!おじさんたちを落とした!
今までやってきたどんな仕事を取れたときよりも万歳して喜んだ思い出である。1か月後管理事務所には3台のマイパソコンが各自に揃ったのである。

当たり前のことを当たり前にできる環境にすること。
企画、提案、承認、実行。
このことに気がつかせてくれた左遷の人事異動に今では感謝している。
ここでの5年間の経験は今、子育てする中でも、仕事をする上でも非常に役立っていることばかりである。

ネタは尽きることがないので、ここで過ごした5年間の日々の中でのオモロイ話はまたの機会に書くことにしよう。

次回予告。
「けったいなクレーマー」「本社のクソ野郎」「保険金詐欺ばあさん」以上三作を予定しております。お楽しみにね!

著者のIzumi Unimamさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。