4.33

アメリカの作曲家ジョン・ケージが 1953年に作曲した曲。

「4分33秒」

30秒、2分23秒、1分40秒の3つの楽章から成るこの曲。

指揮者がタクトを構え、オーケストラが楽器を身構える。 そしてその恰好のまま 4分33秒が経過し、曲は終了する。

一切音を出さない、世界一静かな曲なのである。

You Tubeで実際に演奏(?)している映像を見たことがあるが、 大真面目で奇妙な緊張感が張りつめたオーケストラを聴衆が食い入るように見つめたまま時が過ぎ、緊張感が途切れた途端に拍手喝采が起きた。

演奏者も聴衆もバカじゃないかと思ったが、作曲者の狙いは別にあるのかもと思い直した。

一切音を立てないといっても、ホールの外の音、聴衆の衣 擦れや咳払い、聴衆自身が聞く心音などは聞こえてくるだろう。

日常でも、寝る前部屋を暗くして布団に入り、静寂が訪れると、時計がチクタクいう音とか、木々が風で擦れ合う音とか、耳の奥のキーンという音とか、普段気づかない音が聞こえてくることがある。

そして、こんな時に限って昔のことを思い出してみたり、 ふと自分の人生について思いを巡らせてみたりすることはないか。

「喧噪に包まれた日常の中で、ちょっと落ち着いて静かにしてみたらどう?  普段とは違う何かを感じたり、思い出したり、気分が変わったりするかもよ。」

4分33秒の「静寂」の中から、そんな作曲者の声が聞こえてくる気がした。

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