日本では絶対味わえなかった、心を通わせる、アンドリューの話。
それを聞いたアンドリューは、ちょっとしゅんとしていた。
僕は少しすっきりしたものの、なんとも後味が悪い日になってしまったことを覚えている。
アンドリューはテンションが高くて、お調子者。みんなの人気者でもあった。日本語もしゃべれるから、特に日本の仲間たちからは「アンドリューがルームメイトでいいよな」って言われていた。
いやいや、あのテンションにずっといるのは、ホント無理だってば・・
そこらへんから、アンドリューも何か接し方に気をつけるようになっていったと思う。
アンドリューは外で楽しげな雰囲気を見せるけれど、2人になると気を使ってくれているのか、静かにするように「もう寝ルカ?」と接してくれていた。「うん、ありがと。おやすみ・・」そんな日々が続いていた。
戸惑いの理由。
自分で言うのも難だけど、僕は普段、そんなに怒るようなやつじゃあない。友達ともある程度、なあなあに過ごしていた。
別にいじめられてもない。あんまり目立たない、普通の高校生。
ただ、アンドリューと接していて、頑なに閉ざしていた、心が溶け始めているのを、気づき始めた。
僕は、要領はむっちゃ悪いけど、人並み以上に、勉強はしてきた。それでいい高校に行って、今こうしてアメリカにいる。
それは嬉しいこと。でも、それで失っちゃっていたものが、どうやら人との距離感みたいだった。
がむしゃらに今までやってきて、本当に、学校の成績のことと、学校の役職のこととか、部活のことくらいしか、頭になかった。
僕の高校は私服だったから、人並みにおしゃれは気にしていたけど、なんていうか、距離感のつかみ方はずっと分からなくて、どこか孤独感を感じていた。
友達もいる。上手に人付き合いもしている・・つもり。だけど、「頭のいい自分」「出来る自分」では、なくなるのが、怖くて、居場所を取り上げられたくなくて、すごいすごい、必死。
適度な距離感で、自分のテリトリーに人を入れたくない、邪魔をされたくないと思っていた。
もしかしたら、遠巻きに僕のことを見ている、日本の友達は結構いたのかもしれないし、僕が答えていなかっただけなのかもしれない。
だから、もやもやして、アンドリューに対して「あいつは空気が読めない」とブロックをしていたんだと思う。でも彼は、これでもかというくらい、入ってくる。やつは、ボクサーで言う、インファイターなんだ。
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