謎の依頼。

日本の書道を海外にも広めたい。
そんな気持ちで始めたWEBショップをオープンして一年が過ぎた。

開店してまもなくの頃、初めて大きな作品を依頼してくださったのはアメリカ人のお客様だった。恋人に贈る愛の言葉を書いてもらいたいというご依頼だった。

日本人には一番近しい愛する人に改まって愛の言葉を贈る習慣はあまりない。

ましてやお金を払ってまで自分の気持ちを書道家に書いてもらいたいというご依頼など受けたことは一度もない。

記念日やクリスマスの贈り物として、サプライズで届ける愛の言葉を書かせていただき、喜んで頂けることは書き手にとっても幸せのお裾分けをしていただいた気持ちになる。

最近ご依頼いただいたアメリカ人のお客様からはこんな不思議なメッセージが届いた。

『財布、鍵、携帯電話と書いてください。』

UNSENDOカスタマーサービス担当のシカゴ在住のHさんと
『多分玄関に飾るんよね?絶対それしか考えられへん!』とヒソヒソ話をしつつ、この書の依頼に至る経緯をHさんが聞いてくれることになった。

やはり、ご主人が毎日出かける時にこの三点セットを忘れるそうで、
『玄関に飾って彼が忘れないようにしてあげたいんです‼︎』という。
妻からの愛のプレゼントであった。

よくよく考えてみたら、奥さまはアメリカ人であるが、漢字を読めるということは旦那さまは日本人?と疑問が湧き、それもHさんが聞いてみてくれたところ、彼の故郷は日本だということであった。

『彼の好きな日本を私も愛している。日本の伝統文化も愛しています。』

彼女は夫のために、夫の故郷の文化である日本の書を日本の書道家に依頼し、彼が忘れ物をしないように飾ってあげたいという気持ちから依頼してくださったのだった。

記念日や特別な日ではなく、日常の中でもやはり言葉を形にして贈る習慣がしっかり根づいているのである。

『美しい書をありがとう。』というメッセージと共に、お店の信頼度を示すスターマークを最高点である5つ星で評価してくださり、ほっとしている。

愛の言葉を形にして贈ること。

こんな素晴らしい文化を持つ海の向こうに暮らす人々に、私の書を愛していただくことは幸福である。

恋と愛は違う。

恋愛と結婚は別の物。

これらは日本人がよく言う言葉である。

照れからくる言葉であるように思うが、愛は恋の結果生まれるものだと思うし、恋もせず条件だけで結婚したなら何れ破綻するように思う。

隣に居てくれる人がいるならば、愛の言葉を形にして贈ることを積極的に日本にも取り入れたい。

海の向こうから教わった素晴らしい愛の習慣は、日本人に今一番必要なものかもしれない気がしている。

自分も含めてであるが、『ながらスマホ』に歯止めがかからないように感じる昨今の日本社会。

自転車に乗りながら、横断歩道を渡りながら、歩きながら、食事しながら。

一度携帯をしまって、周りを見渡してみてほしい。先日電車でやってみたのだ。

誰もが背中を丸めながら携帯の画面しか見ていない光景は不気味である。

お年寄りや、赤ちゃんを抱っこして大きな荷物を肩から掛けている女性がジッと立っておられることに気がついた。

私自身も他人に目を向けることや会話する機会を失いがちになっているなと改めて感じた。

『ながらスマホ』をしている手を少し休めて。

たったひとことでもいい。
『ありがとう。』
『好きだよ。』
大好きな人に書いて贈ってみませんか?

著者のIzumi Unimamさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。