とんちんかん
日本刀を作る時。
真っ赤に熱した鋼を何度も叩いては折り返し、
不純物を取り除くことを「鍛錬」という。
これにより、日本刀は強度を増していくのだ。
この「鍛錬」、刀匠が1人で行うものではなく、多くの場合腕の立つ弟子と共に行う作業で、
この弟子のことを「向こう槌」と言い、「向こう槌」が刀匠の合図で鋼を打つことを「相槌」と言う。
これが、「相槌を打つ」の語源。
そしてこの「相槌」、刀匠と弟子の息があっている時は、鋼を打つ音が
トンテンカン
と、リズミカルに聞こえるのに対し、息が合わずに鋼の端などを叩いてしまうと、時々高い音が出て調子が外れ、
トン「チン」カン
と聞こえることから、「物事の辻褄が会わないこと、チグハグなこと」を「トンチンカン」と言うようになったそうな。
また、硬い刀は折れ、柔らかい刀は曲がってしまう。
従って、名刀に求められるのは、「硬く、柔らかい」という矛盾した性質だという。
刀匠達は、この理不尽極まりない要求に対し、柔らかい「芯鉄」を、硬い「皮鉄」で包みこむという答えを出した。
名刀とは、ただ硬く切れ味が鋭いものではなく、硬さと柔らかさのバランスが良いものを指すのだ。
「伝家の宝刀」を求めるあまり、「鍛錬」し過ぎてもいけないという。程度を超えた「鍛錬」により、刀はその硬さを失い、「なまくら刀」が出来上がってしまうのだとか。
これは「鍛錬殺し」と言われている。
間も無く胸をときめかせて入社してくるであろう新入社員達。数ヶ月研修を積み、現場に配属というケースも多いのではないか。
侍同士が、狭い日本の中でしのぎを削りあっていたのは昔の話。これからは海外勢とつばぜり合いする時代。
先輩社員達が、早く折り紙付きの懐刀を手に入れたいと、押取り刀で焦る気持ちは分かるが、急場凌ぎは避けたい。
トンチンカンな相槌
付け焼き刃な知識と作法
そして、世間の冷たさに晒されていない、初々しい熱量
新人達は世間の厳しさ、冷たさを経験する前の熱い鋼。
「熱い内に打て」とばかりに、焼きを入れすぎないように注意。
心が折れないよう
性根が曲がらぬよう
硬軟併せ持つ、バランスのとれた「名刀」になるよう、丹念に鍛錬していきたい。
でも、やりすぎて「鍛錬殺し」してしまったら?
、、、うーんとね。
単刀直入に言うと、切腹だね。
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