失聴経験 5補聴器 ②音の世界

前編: 失聴経験 5補聴器 ①異物感
後編: 失聴経験 5補聴器 ③購入について言いたい!

いかに高性能の補聴器であっても、未だに人間の耳を越えることはできない。





検査期間中に読んだ本の中に「補聴器は万能ではなく、一つの電化製品と考えた方がいい。」と書いてあったので、私は補聴器に対して初めからあまり期待していなかった。

人間の耳はどのような状況でも、無意識に聞きたい音とそうでない音を選択し自分に必要な音を聞き分けることができる。

しかし補聴器の場合、スイッチを入れた瞬間、私は音の洪水の中に身を投げ出されたような状況に陥る。聞きたい音とそれ以外の音が無差別に自分の中に飛び込んでくる。ファースト・フードでは注文を確認する店員の声はBGMにかき消され、路上では友達の声は車の走る音や自転車のブレーキや他人の靴音の中に紛れ込んでしまう。今まで意識の外にあった音が否応なしに入ってくる為

「補聴器をつけなければ音が聞こえないのに、つけていても必要な音を聞き分けることができない。」と言う状況に陥ってしまう。

そして「音が歪む」「音が割れる」と言う現象も補聴器を使うようになって初めて知った。全ての音がのびたカセットテープを聞かされているような感じに似ている。


視覚的に例えると多分…

常に視界全体にモヤがかったフィルターからした物を見ることができず、そして視界に入ってくる映像の実体も必ずしも現実の姿をそのまま映し出しているとは限らない。建造物が傾いていたり一部欠けていたり、人の顔もぼんやりとしたベールの中では相手が二重まぶたなのに気がつかなかったり、唇のわきにホクロがあるのを見落としたりと言う感じかも知れない。(これは全て私の想像です。) 


私の知り合いで2人の健聴の人(普通に聞こえる人)に補聴器をつけるとどのように聞こえるのか試してもらった感想をここに記しておきたい。

※良い子のみんなは絶対にマネしないでね!!

一人は「イライラする。」と言い、もう一人は「雑音の入ったラジオを聞いているみたいだ。」と言っていた。

つまり「補聴器をつけても聞こえる時と同じ音を取り戻すことができない。」と多くの方に理解してもらいたいと思う。




≪解説≫「補聴器はあくまでも聞こえを補う機械」

原稿を書いた当時より補聴器の性能はとても進化していますが、それでもやはり人間の耳の方が優れているのが現状です。私自身もユーザーになるまで知りませんでしたが「補聴器をつけても聞こえていた時の音を完全には取り戻せません。」


例えばBGMが流れていない、あるいはBGMの音を聴覚障害者が認識できない程静かな喫茶店があったとします。

そこで1対1で会話が成立していた所に、隣の席におしゃべりの盛んな女性グループが着席し活発な会話が展開された瞬間「今まで聞き取れていた相手の言葉が分からなくなり話したい人との会話が困難になる」ことがよくあります。ちょっとした環境や状況の変化で聞き取りが困難になってしまいます。

この場合大抵は相手が「声」を出しているのは分かるのですが、その「言葉」が認識できなくなり結果として「会話」を成立させるのが難しくなります。


正常に聞こえていれば無意識に聞きたい相手の声をちゃんと理解する耳の働きの素晴らしさを、自分が失聴することで初めて実感しました。

聞こえている方はどうぞ、現在の聴力を大切になさって下さい。そして「補聴器をつけて聞こえを補っても言葉を理解できない時があること」を何となく記憶に留めて頂けるとありがたいと思います。








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失聴経験 5補聴器 ③購入について言いたい!

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