バイト先の常連客のヤクザさんが気付かせてくれた事

ヤクザさん
肉まんは入ってねーし、ポットのお湯は入ってねーし、お前やる気あんのか!!!!
わたし
大変申し訳ございません今すぐ準備いたしますっ

休日の午後、このコンビニの一番忙しくて余裕のない時間。

お客様から怒号が飛んだ。この店舗の常連のヤクザさんだ。

(こ、殺される)

という恐怖から震えが止まらなかった。ガクガクしながらカラのポットにお湯を入れ、注文したのに入れ忘れた肉まんを袋詰めする。


この時の私は、ミスをしたのにも関わらず当たる人がついてない…くらいにしか思っていなかった。


 ヤクザさんにはお気に入りの店員がいた。わたしの3つ上の可愛らしい雰囲気の先輩なのだが、とても可愛がっていつも先輩には笑顔で話しかけている。

ヤクザさん
Yちゃん!今日は何時までなの?^^
先輩
そうですねー、今日は閉店までですかね!^^
ヤクザさん
がんばってるねー!^^

こんな感じの普通のにこやかな会話が成り立っている。


その時わたしは世の中やっぱり顔なのか…と卑屈になった。


その先輩は可愛いうえに、性格も丁寧で優しい人でわたしは大好きだった。

が、当時はヤクザさんに関しては少しひがんでいた。


 
ヤクザさんは主婦のパートさんにも当たりが厳しく、パートさんもレジの対応するとき避けていた。

パートさん
あのお客様気に入らない事があると小言を言ってくるよね。「パンの温めなんで聞かないんだ!」って言われたことあるよ。気にしなくても大丈夫!
わたし
そうなんですか!言い方キツイですよね~。


怒られたことを相談したらこう言って励ましてくれたパートさん。


(って、うん?)


ここでわたしが気づいた事があった。


ヤクザさんは店員として当たり前にするべきサービスができなかったときにしか指摘はしていないのではないか。肉まん、お湯、温め、コンビニでの当たり前のサービスだ。



仮説をたてたわたしは後日、ヤクザさんと先輩のやり取りを観察してみた。

先輩
このパンは温めますか?
ヤクザさん
Yちゃん、さすが!
わかってるね~^^

先輩は、コンビニのマニュアルでは温めない菓子パンを温めるかどうかまで聞いていたり、当たり前のこと+αお客さんがより気持ちいいと思うような接客をしていた。


可愛いから気に入られているとひがんでいた自分が恥ずかしかった。そうじゃない、ヤクザさんはちゃんと仕事している人を認めていただけだ。


もうひとつ気付いた事がある。ヤクザさんはいつもポイントカードをすぐ出せるようにしているし、袋詰めを断わるし、レジ待ち中におじいさんが割り込んできても嫌な顔せずに大人な対応をするし、忙しくて余裕のない時は温めを自分でしてくれるし彼が店員目線で気を利かせてくれていた事に気付いた。

わたしが見かけで人を判断していたのだ。


この日から、わたしは丁寧さとお客さん目線でサービスを行うことを意識した。


挨拶を必ずする、お金がすべりにくいように渡す、普段温めないものでも温めたほうがいいと判断したものはお客さんに聞いてみる、いつもたばこ買う人が入店した瞬間に手元に置いておく…

先輩がしている事を気づいたら真似した。


その結果、可愛がってくれるお客さんが増えた。



行動を変えてからも肉まんで怒られた日から一度もヤクザさんはわたしのレジには来なかった。

肉まんの日から2か月経っていた頃、ヤクザさんは久しぶりにわたしのレジに来た。

緊張感が走ったが、落ち着いた対応を心掛けた。その日から、わたしのレジを避けなくなってきた。

どれくらい経った頃だろうか、

ヤクザさん
お姉さんいつも怒ってない?俺の事何してんのかわかんないヤクザだと思ってるでしょう?
わたし
怒ってないですよ!それに、そんな事思ってないですよ^^
ヤクザさん
お姉さん意外と笑うんだね!

初めて笑顔で話しかけてくれた。わたしはいつも緊張で顔がこわばっていたのだろう、笑顔で接客しようと心に決めた。

それから、会うたびに話しかけてくれて笑顔で会話できる仲になった。




そこのバイト先は辞めて結局ヤクザさんが何をしているかなんてことは分からなかったけど。



ヤクザさんは仕事をするには相手の気持ちを考える事や人は見た目ではないということを教えてくれた。


怖くてバイト先に行きたくない日もあったけど乗り越えた事がわたしの自信になった。

これ以降多少なにかあってもヤクザさんに怒られた恐怖よりはましだと考えられるようになった。


ヤクザさんはわたし人生の「いいストレッサー」になってくれた。成長の手助けをしてくれた。


今はホテルでバイトをしている。分からないことだらけだが、いつヤクザさんが来てもいいように仕事を早く覚えていきたい。頑張ろう。






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