[ビリギャル]学年でビリだったギャルが、1年で偏差値を40あげて日本でトップの私立大学、慶應大学に現役で合格した話

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初対面は、正直、「何しに来たの?」と思った。


 彼女は、金髪を巻いたギャルでした。

 「ギャル」以外の表現は見つかりません。

 「名古屋嬢」という表現がありますけど、まさにそんな感じ。




 (このストーリーは書籍化されました。書籍の公式ページはこちら。2014年年間ベストセラー総合4位(日販調べ)、第49回新風賞受賞。有村架純さん主演の映画「ビリギャル」も大ヒット。映画の公式ページはこちら。)



 某私立女子高に通っている。上の大学にそのままエスカレーターでは行きたくない。

でも外部進学するほどの学力がない。そんな理由で、紹介を受けて塾に来たとかそんな感じでした。高校2年生の夏。

学力が現在どれくらいかを判断する指標としては、学年でビリ。偏差値30以下。

受験の動機として、「同じ学校に行くのは飽きた」的なノリでスタートしてもなかなか伸びるはずもない。

最初、「志望校をどうするか?」という話の中で、「良く分からん」ということだったので、「じゃあ、東大にする?」というと、

「東大は男の子たちが、なんかガリ勉ですんげー厚いメガネしてそうでダサいからいやだ」

という。なるほど(笑)と思い、


じゃあ、慶応にする?「慶応ボーイって聞いたことない?君が慶応とか行くと、超面白いじゃん」ということを言った。

「おお。確かに。超イケメンいそう!しかも、さやかが慶応とか超ウケる!」

そして、偏差値30、学年でビリだった女の子が、日本最難関の私立大学、慶應義塾 大学合格を目指すことになった。



偏差値30以下の子が慶応大学を目指すという意味


 偏差値30というのは、全国で下位2%にいるという状態のことだ。受験生が約70万人いるので、大体68.6万番目より下にいる状態といえる。

なお、慶應義塾大学の合格可能性A判定は偏差値70以上。それは上位2%という意味なので、1.4万番以内にいないといけない。

つまり、彼女はこの1年半で67万人以上をごぼう抜きしないといけないことになる。

当たり前だが、普通に考えると、「不可能」なことへの挑戦以外の何者でもない。市民ランナーがオリンピックで金メダルを取ろうと言っているのに近い。

受験というのは、「マラソン大会」に似ている。小学校から義務教育がはじまり、6年。中学で3年。高校で3年。計12年間毎日のように学校に行き、塾に通い、コツコツと勉強し、知識を増やし学力を高めてきた人間が、いわゆる難関大学を受験する。それでも、合格する可能性は限りなく低い。だって上位2%に入らないといけない訳だから。

逆に言えば98%は無理といえるわけだ。

例えば、赤ん坊が生まれて、「残念ですがあなたのお子さんは98%の確率で近いうちに死にます」と言われたら、絶望するだろう。

そう、上位2%にいないと慶應に受からない訳なので、日本人全員が赤ん坊として生まれた瞬間に「あなたは98%の確率で慶應義塾大学には合格できません」と、言われているのと同じなのだ。

しかも、実際は、大学進学率が50%程度なので、学力的には全日本人の同学年の上位1%と言う方が正確だろう。

しかも、大学受験の場合、どれだけ頑張っても結果が伴うのは限りなく難しい。なぜなら、「みんな必死で頑張る」から。そう。すでに10年以上マラソン大会をやってきているわけで、残りのラストスパートはみんな必死。ということは、そこでどれだけ頑張っても、厳しいものがある。上位層は必死になり、下位層は諦めていけそうなところを探す。これが大学受験の実態なのだ。

例えば、

偏差値70の子たちは、時速30㎞で走っている。

偏差値50の子たちは、時速25㎞で走っている。

偏差値40の子たちは、時速20㎞で走っている。

偏差値30の子たちは、時速15㎞で走っている。


こうして集団ができあげるわけだけど、偏差値30の子が、40を目指すとする。

1年で偏差値を10あげるのですら奇跡と言われる所以がこれだ。

現在時速15㎞で走っている偏差値30の子が、40の子たちに「追いつく」ためには、偏差値40の子たち以上のスピードで走らないといけない。つまり、時速20㎞以上で走って、やっと40の子たちと同じになる。感覚的な話だけれど、偏差値50の子たちと同じだけのスピードで走って、やっと偏差値40になれるわけだ。

じゃあ、それができるかというと、現実的ではない。

なぜなら、時速15㎞で走る能力しかないから、偏差値30なのだ。これまでに培ってきた筋力や持久力、精神力で今走っているわけで、時速20㎞で走りなさい!といったところで、走れるわけがないのである。走れるんだったらとっくにその上位集団の中で走ってる。

では、偏差値30の子たちが偏差値70になるというのはどういう子とかというと、時速30㎞以上で走ることを求められる。時速15㎞でしか走れない子に時速30㎞で走れというのは、50メートル走を10秒で走っている子に、5秒で走れば受かるよ。だから走りなさい。というのと同じだ。

やはり、「不可能」といえる。

    (彼女の実際の中学3年生の時の成績表。本人からの許可を得ています)



彼女は最初バカだったけど、とにかく素直だった。


 彼女は、校長先生から、「お前は人間のクズだ」と言われたことがあるそうです。でも、僕にはキラキラと輝くダイヤモンドの原石にしか見えませんでした。どういう点がそう見えたかというと、「とにかく素直」だったこと。

 普通の人間は、変な先入観というか、中途半端な小賢しさというか、まぁ一言で言えば頭悪いんですけど、「自分の常識でものを考える」わけです。

 偏差値30を70にするなんていうのは、理論理屈から言えば、ほぼ不可能。だから、ここで打算的になれば、まあやってもあまりメリットなさそうだよね」となる。あるいは、そんなのウソに決まってるとかね。つまり、できそうなことしかやらない。当たり前だけど、そこからの進歩はない。

 でも、彼女は「からっからのスポンジ」だった。「私は慶応を目指す! 私はきっと合格する!だって、先生そう言ってるし。ああちゃん(お母さん)も応援してくれてるし!」みたいなノリだった。

 もちろん、100%の自信があったかといえばそうじゃないと思う。悩んだ時もあったし。でも、そもそものスタートを考えれば、「自信がある方がおかしい状態」なわけだ。

 偉大なことを成し遂げる人は、必ず、「自信なんて後からついてくる」ものなんだ。

 やれそうなことをやる。これって全然大したことじゃない。

 無理そう。みんなやめとけっていう。バカだっていう。でも、やってみないとわかんないじゃん!

 こういうノリと勢いが常に大事なんだ。

 今まで、偏差値が30から70になるような子を何人か見てきた。全員に共通しているのが、この、ある種、決めたことに対する盲目さと、+αの工夫。

 「先生が言ったことは必ずやる。そしてプラスαで自分なりになにかやる」

 これができる人間は成功する。

 あ、そうそう、それと「心から信じてくれる応援者の存在」。これが大事。彼女の場合は、「ああちゃん」と彼女が呼ぶ、お母さんだったのは間違いない。もちろん、僕も信じていた。でも、あのお母さんの愛にはとても及ばない。



とはいえ、聖徳太子が分からない。


 あるとき、彼女は僕に質問をしてきた。

「せんせー、あのさ、この女の子、超かわいそうじゃね?」



彼女の人差し指には、「聖徳太子」の文字がある。

聖徳太子、現在は、「厩戸皇子」と表記されているが、当時はカッコの中に「聖徳太子」と書いてあった。

女の子という認識をしたのは、まだ分かる。だって、「子」だからね。

非常に論理的。

でも、この人はたぶん日本史上トップ10に入るほどの偉い人のはずだ。

決して、「超かわいそう」な人ではない。どこをどうよんだらそうなるんだ。いったい。

「あのさ、なんでかわいそうだと思ったの?」

「だって、この子、きっと超デブだったからこんな名前付けられたんだよ。せいとくたこって」


せいとく たこ

聖徳 太子


なんだそれは。どんな無駄なオリジナリティー発揮してるんだお前は。



「ちょっと待て。さやかちゃんさ、君、一応私立中学受験してるんだよね? だから、今の女子高行ってるわけだろ? おかしくないか? その無知っぷり」


「あー、さやかね、中学受験、国語と算数だけなんだよね。今は4教科らしいんだけどさやかのときまで2教科だったの。だから社会全然わかんないんだ。しかも、小学校の時あーちゃん(お母さん)から、さやかここで合格したらあとずーっと勉強しないで大学まで行けるんだよ?だから頑張ろう!って言われて頑張ったの。だから、中学入ってから今までの5年半、全く何もしてないから、算数も国語も全部わからないの」


なるほど。君の知識のピークは、小学6年生で、しかも算数と国語、でそれも全部忘れている訳か。なるほど。なるほど。

にしても、せいとく たこ って。。。。。

【余談ですが、私の講師人生で1000人以上を個別指導してきましたが、過去彼女以外に「聖徳太子」を読めなかった子は一人もいません。】



偏差値30の子の日本史の最高知識


「よーし、分かった。じゃあ、君の日本史の最高知識を教えてくれ」

「いやー、私何もわからないって」

「なんか一つぐらいあるだろう?何でもいいよ。考えて」


「んー、ないけどな。。。。。あっ!わかった! イイクニ作ろう・・・・・」

「おおおおおお!すげー。それ、いいね!」

「ヘイアンキョウ」


ズコーっていう音が聞こえそうになりました。

でも、僕はポジティブでした。歴史関連のことを2つ”も”知ってるじゃないか!!!ははは。

(イイクニ作ろう  と  ヘイアンキョウ)


しかし、そのポジティブさは、彼女の次の一言で奈落の底に落とされました。

「あのさー、先生、でもさー、ヘイアンキョウさんって何した人?」


え?


え?


人?


「あ、そっか、イイクニ作った人か!」


いやちょっとまて、勝手に自己完結するな。俺は今唖然としてるんだ。


ちなみに、彼女が1年後に目指すべき慶應の過去問で、平安京関連の問題はこんな感じ。


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2011年度慶應義塾大学 文学部 日本史入試問題

問7 ( A )に入るのは、平安京の正門である。あてはまる語を漢字3文字で記しなさい。


(二)治安三年六月十一日、 上達部及び諸大夫、法成寺の堂礎を曳かしむ。或いは宮中諸司の石、神泉苑の門ならびに乾臨閣の石をとり、或いは坊門、(A)、左右京職、寺々の石を取ると云云。嘆くべし、悲しむべし。言うに足らず。



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答え、

羅城門。





遠い。ここまでの道のりは遠すぎるぞ。


平安京を人だと認識している人間に、羅城門は厳しいですよ福澤諭吉先生!

(ご存知、一万円札の人=慶應義塾大学の創始者)




東西南北が分からない



    (これは、上智大学に最終的に進学した妹が小学6年の時に書いたもの)


もうね、こうなってくると僕の知的好奇心が全開ですよ。こいつはどこまで無知なんだと。

この時に、僕は名言を作っています。

この世の中で恐ろしいもの3つ。



『地震・かみなり・火事・ゆとり』



ってね。(4つだろ!?っていうツッコミありがとうございます)


とりあえず僕はさやかちゃんに、「日本地図を書いてみてくれ」と言いました。

すると、彼女は、「いやー、無理ですわ―」と言っていました。

「細かくなくていいからザックリと」と指示すると、


彼女が書いたのは、



こんなんでした。

いやいや、ちょっと待て。

普通、いくらなんでも↓こんな感じでしょう。せめて北海道・本州・四国・九州の4つの島ぐらい書こうよと。ざっくりしすぎやん。



僕が、「なんで島ひとつなの?」と驚くと、


「え?日本ってそんなたくさんあんの???」と驚くさやかちゃん。


もうね、いろいろ衝撃です。


「あのさ、北にもいろいろあるやん?」


「北?」


あ、まさかこいつ、東西南北分からないのでは?

そう思って、


「あのさ、北が↑の時、南ってどっち?」


「・・・・・・いやー、そういうの私無理だわ―」


爆笑


教室中が爆笑でした。


「そういうのって、君、人間の動物としての基本性能だわ(笑)」

「いやでもね、先生そうやっていうけどね、私の友達絶対知らないから!まじで!」

「仮に、そうだとしたら、日本は滅ぶよ。本当に。いやまじで」


ちなみに、あとで当時小学生の妹に聞いたら、「え?下に決まってるじゃん。なんでお姉ちゃんそんなこと知らないの?嫌い って言われた」と凹んでいました。


なお、彼女は受験中ずっと、机の前に、こういうのを張ってたらしいです。



こういうところがかわいいですよね。


【余談ですが、彼女はこの島の話をすると反論してきます。いや先生それは大げさに言いすぎだと。私は2つは島をかいた!と主張してくるんです。いまだに。でも、正直、2つか1つかが問題ではないと僕は思うんです】【余談の追記ですが、今回の物語を書いて、彼女にまず読んでもらいましたが、やっぱり、「一つだけ良いですか?私は島を2つ以上はかいた!とその点だけは納得がいかないらしいです(笑)」】



伝説にはとにかくキリがない


Strongの意味が分かりませんでした。

3×4を「サンシ」と聞くと、「私、ほんと九九苦手。そのききかたやめて!」と言ってきます。

個人的に一番思い出に残っているのは、「サンタさんが実在するかどうか」で議論になったことです。ちなみに、彼女は「絶対にいる」と主張していました。

あと、武田信玄の話をした後に、彼女は感動して、「てか、その人すげー。さやか、どこいったらその人と会える?」と真顔で聞いてきました。

「一度死んだらいいよ」と、真顔で答えておきました。

辞書で意味を調べたら、その本文の意味が分からなくて、それを調べたらさらにその本文の言葉が分からなくて、で、それを調べたら、元の単語が出てきて、「結局わからないんだけど、どうしたらいいの?」と聞いて来たりとか。これぞ本当の「ループ」だなと思いましたね、あの時は。

あと、「私、久しぶりにあった人に、さやかの名前覚えてる?って聞いてたことに、最近気付いたんだよねー。」

と言っていました。



最後の夏は遊ばせてほしいという要望


高2の夏。まだ彼女が金髪だった時。どうしても夏休みは最後に遊ばせてほしいと言っていました。

塾にきて、家に帰ってオールでカラオケに友達といき、そこで予習(宿題)をカラオケボックスでやりながら、塾にきて・・・・・・。

を繰り返していました。

冗談抜きで、「Happy」のつづりとか、I my me mineとか、そういうのからスタートです。

ちなみに、1年半後に彼女が到達すべき英語力はこれを読み込むことです。

          (2013年 慶應義塾大学 総合政策学部 問題より抜粋)


まぁ、当たり前ですけど、「最難関」です。

僕は一応、TOEICで990点とか持ってます。だからこそ、あの時の彼女の実力と、到達したレベルの差の異常さは一番良く分かってます。正直、あの段階では「アルファベットは何とか分かる」というレベルだったのです。それが、1年半後にはこの上記の英文で構成される問題で80%以上を得点していました。


これ、何が凄いかわかりますか?

もう友達と約束はしているから、遊ばないといけない。でも、塾の予習もしなければならない。だって決めたし、先生と約束したから。だから、カラオケボックスで塾の予習をするという「両立」をはかったのです(笑)

彼女は、予習した分のチェックやなんかが終わったらちょっと寝かしてほしいとかいって机で少し仮眠をとり、また勉強するなんてやってました。



邪魔をする奴、応援する人


当然ですが、彼女は明らかに「豹変」しました。

夏休みの間に英語に関しては、中学校の復習を終わらせました。つまり1ヶ月程度の間に3年分を猛烈に復習したのです。

日本史も、「学研 マンガ日本の歴史」を全巻購入し、読み切りました。

(集英社か学研か、どっちがいいか?でもめたのをまだ鮮明に覚えています。確か、集英社のなら本屋で見つかったけど、僕が指定したのは学研のだった。集英社でいいか?というので、ダメ!学研のを!っていったら、結局、全部親御さんがそろえてくれてました)

夏休みが終わりました。

彼女には、「学校の勉強はみんなのための授業。だから、君は君の勉強をしなさい」と指示しました。

すると、彼女は完全に学校の授業をシカトしてしまいました。

授業は完全に無視。しかし、猛烈に勉強している。

先生側としてみれば、嫌な気持ちしかしなかったでしょう。


でも、学校の授業って、「学校側の都合でプログラムが作られている」訳なので、それに合わせるのもおかしな話です。

やりたいことが明確に決まった彼女には、必要のないものでした。

学校の先生たちからは、「慶応目指すとかいってるらしい。狂った」とか言われたそうです。

まぁ、学校一の問題児が日本でトップの私大である慶応を目指すといってるわけですから、そう思われても当然かもしれません。

ちなみに彼女は、外部進学コースではなく内部進学コースだったので、余計に苦々しい思いだったのでしょう。

余談ですが、中高大一貫の高校に通うと、外部進学を目指す子は先生から嫌な対応をされます。当然です。学校側としてみれば、お客さんが外に逃げるわけですから、価値観として「上にあがるのが当然」というのを植え付けます。

学校側としてみれば、内部進学コースの彼女が外部進学を目指してガンガン勉強してしまったら、他の子にも影響を及ぼす可能性がある訳で、排除しようとするのは当然です。

とことん邪魔をしようとしますよね。

一方で、頑張る彼女をみて、クラスの子たちは応援するようになってきました。

「ねー、先生聞いて!〇〇が手作りのお守りを作ってくれた!」とか、ものすごく嬉しそうでした。

そうして彼女は、徐々に実力を蓄積していき、結果も出し始めました。


                  (実際の彼女の記述模試の成績表です)

なんと記述模試で英語が偏差値70を超えてきました。

英語重視で学習をしていたので、なおさら嬉しかったのでしょう。

学年でも187人中13番です。

全国でトップ1万人。

しかし、それでもやはり慶応は厳しい。


右下の方を見ていただければわかりますが、合格判定は「E」です。

この辺りから、僕自身も、だんだん、彼女に対して厳しく当たるようになっていきました。

もう信頼関係はできてきた。あとはムチを打つべし。



やっぱり私、無理だと思う



人間、賢くなってくると、だんだんいろんなことが分かってきます。いろんなことが見えてきます。からくりにも精通してきます。すると、「疑念」が浮かび始めます。

これまではただがむしゃらに頑張ってきた。で、なんか分かってきた。

「私、なんで慶応に行きたいの?」

「慶應じゃないとダメなの?」

「てか、難しすぎでしょう?無理じゃん。こんだけやってんのに。もうこれ以上は無理だし」


そういう言葉がちらほら聞こえてきました。

でも、彼女のすごいところは、「それでも、やるべきことをやっていました」。

多くの人は、愚痴るときには手が止まっているし、やらなくなっちゃう。

でも、彼女は、予習や宿題を言われた分きちんとこなして、それプラスαで愚痴を言ってました(笑)


「あん? お前、日本一の大学目指してんだよ。超一流のところに合格するのに、二流の努力で通用するわけねーだろうが。超一流になるには、超一流のことやらないけないんだよ!ボケー」

彼女は、ボソッと言いました。

「やっぱり私、無理だと思う」


僕は彼女に言いました。

「あのさ、明日学校休んでさ、新幹線乗って慶応行っておいで。見に行って来い。で、肌で感じてこい。」


「分かりました」


彼女はその時期、元気がなかった。だから、カンフル剤が必要でした。


次の日、彼女は新幹線に乗って東京に行ったそうです。

この辺は後日談で、本人や親御さんから聞いた話なので、あくまで伝聞です。

この時期の彼女は相当荒れていたらしく、お母さんに、


「割ってもいい皿はあるか?」と聞いてきたそうです(笑) そんなんあるわけないのに。


でも、お母さんは、意図が分かったそうで、袋を2枚重ねにしてその中にお皿を入れてあげたとか。

彼女は、角にそのお皿を投げつけ、パリーンとわって、「あー、スッキリした!」といって、回復したりとかしてたとか。

余談ですが、こういうのって「母の度量」ですよね。すごいなぁと思います。

こんな人はなかなかいないです。


時間との勝負


やっていることは間違っていない。そんな状態でした。あとは、時間との勝負。

正直、すべての教科が「あとちょっと」という感じになってきました。

もう「一流」なんだけれど、「超一流」にはなりきれない感じ。

その時には、ホリエモンが逮捕されるとかされないとかそんなような時期だったりもした記憶があります。

「世間的にはホリエモンって悪者にされてるけどさ、必ずしもそうじゃないよね。なんで?」など、そんな質問をしたりして、多面的に情報をとらえるというような練習をしたりしながら、

単語をアホみたいに覚えたり、もう一度流れをおさらいするために、

マンガ日本の歴史全巻を週末に5周りよんでこい!と指示したり。

で、月曜の夕方に、「まだ3周りしか読めてないのでずびばぜん><」と泣きながら塾に電話があったり。

このころの彼女は、ノーメイク・黒髪・スウェットでした(笑)。

髪とかファッションに時間をかけているのがもったいないと言っていました。

「もう私女捨ててるから」

「慶応うかりてぇーーーー!」

言葉遣いはまだまだギャルっぽさを残しながらも、立ち居振る舞いと知識はもう全然違います。ループしていた辞書もボロボロ。



いよいよ受験


あと一か月時間をください。

僕は本当にそう思いました。

あと一か月あれば確実にラインに載せられる。

そう思いました。

過去問をやらせても、5分5分というところまできました。

滑り止め、明治・関西学院。

この時点で凄いことです。ちょっと前まで、Strongの意味が分からないとか冗談としか思えません。

対抗、上智。

本命、慶応。


とても、偏差値が30だった、学年でビリだった子の受験校とは思えない陣容です。



合格発表


結果、慶應義塾大学 明治、関学に合格。

最初電話で彼女からの一報を聞いたときには、素直に「泣きました」。


「おめでとう!」

「ありがとうございます」

「おめでとう!」

「ありがとうございます」

「ありがとう」

「おめでとうございます」

なんか、興奮して途中から、逆のこと言ってたりしました。



今思うこと


大学受験の講師をやってきて、思うのは、東大・京大・医学部・慶応・早稲田・上智は正直に言って、別格だなということ。

最終的には運も必要です。

やはり人気の大学ですし、東京にあるというだけで、必然的に競争率が高ります。その中で結果を出すというのは、万全の準備+αが必要 になってくる。

さやかちゃんの指導の記録と他の人の指導の記録を見ても、明らかに違うと思えるのが、「愚痴を言ってるときに手を止めているかどうか」ということ。そして、明るさ。とにかくパワーがありました。もちろん、美人だったのもあるでしょうけれど、教室中のだれもが彼女の一挙手一投足に注目していました。そして、彼女と僕の問答に大笑いが起きていました。人からパワーを吸い取る人がいますけれど、彼女はむしろパワーを与えてくれる人でした。

あと、何より「家族が凄かった」と僕は思います。

そもそもね、偏差値が30の子が慶應を目指そうとする。「頑張って!」って普通は言わないです。言えないです。「何バカな事言ってんの?現実を見なさい」これが普通の親です。「まず、学校の定期テストの赤点をどうにかしなさい!」と一喝して、意味が分からない定期テストの丸暗記をさせようとする。中学校のレベルに戻る必要があるから、それをやりたいといっても、「いや、定期テストが・・・・・・」となる。もうね、何度もそれを経験してきて、結局、親のサポートや意識、つまり環境でモチベーションなんて圧倒的に変わる訳で、その点、親子の信頼関係にものすごく依存するなぁと実感します。そういう意味で、彼女を信じきったご両親は凄いです。もちろん、一番凄いのは本人なんですよね。68万人抜きて(笑)尋常じゃないですよ。本当に。どれだけの精神力なんだと。


僕は、今、坪田塾という塾の塾長をしています。

テーマは、「塾生の人生を応援する」。根底は、大学受験っていうのはあくまでもツールでしかなくて、とにかく

「夢はでかく設定し、愚痴を言いながらでも前に向かって進んで、でも大雑把じゃなくて科学的な根拠を持って進んで、とにかく誰もが無理っていうようなことを実現しちゃおうぜ!失敗したら、それをネタに今度は社会で頑張ればいいじゃん!なんか、学生のうちから変に現実的になったり、斜に構えて、最初から無理なんて決めつけてんじゃねーよ!やってやろうぜ!」

ということなわけです。批判もされることもあるだろうし、変な宗教かと思ったとかいわれることもありますが、要するに、人は、がむしゃらに前向きに生きようとパワーを持って進む人が出てきたら、足を引っ張りたくなるんですよね。で、失敗したら「ほらね、ざまーみろ」というと、成功したら「ラッキーだったんだよ」って、斜に構える。

なんか、そういうの嫌いなんです。

もっと、「ほら!大人になるって楽しいだろ?こんなわけわかんないことやってんだぜ?」と、

いろんなことをやっています。

そして、次は、彼女たちの子どもたちを教えたいなーとワクワクしてます。


僕は、彼女は絶対に成功すると思います。

彼女は苦労をしながらも、自分がやりたいことがあれば、仲間を作って、誰しもに好かれながら、そして「バカだなー」と言われながら、笑いと話題の中心となって、超一流のことを成し遂げていくんだろうなーと信じています。慶応卒という看板とともに。

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*追記*

今回のストーリーが面白かったと思っていただけましたら、ぜひ本もご購読ください。


★書名:「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」

★出版社:KADOKAWA

★ISBNコード: 978-4-04-891983-8


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ビリギャルって名前だけ知ってましたが、最終的にどんな人間が成功するのかって結論になったのがすごかったです。共感します。

面白い!
そして勇気をもらえる!

読みやすいですし、最期まで読むつもり無かったのに、一気に読みました^^;
映画も見てたので、色んなシーンとシンクロして楽しめたのかもしれません♪

限界は自分で決める。
しかし周りの存在で、自分の限界値はゼロにもヒャクにもなるんですね。とても、前向きな気持ちになりました。

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