インドの洗礼 第2章 その1 〜マーライオンは突然に

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突然、目の前がチカチカし始めた。

手が細かく震えている。手の平が真っ白だ。

「おいおい、大丈夫か?」

友人達が心配そうに顔を覗きこんでくる。恐らく、顔色も手の平とほぼ同じ色で、蒼白になっていたに違いない。

「大丈夫」

と、言いたいところだが、言葉が出ず力無く微笑む。

いや、微笑んだというよりは、「いびつに顔を歪めた」という方がしっくり来るのかもしれない。

胃袋が、まるで誰かに絞られているかのようにギリギリと痛む。

喉の奥が、まるで別の生き物のようにヒクヒク動いている。

次第に、口の中が酸っぱくなり始めた。

唾液が止めどなく流れ出てくる。

こいつぁ、ヤバい。

部屋を出ようと椅子を立ち上がる。

が、予想以上に力が入らずに驚いた。

穴の空いたバケツから水が漏れ出すかのように、ヘソのあたりから生命エネルギーが流出しているようだ。

どこか。どこかないか。

頭の中は、それだけで一杯。

と、死に物狂いで辺りを見回していた目が、ソレを見つけた。

枯れかけた植物がまばらに突き刺さった、大きめの花瓶。

安堵して緊張が途切れたのか、そこでついに臨界点に達した。

そして、

俺は、

マーライオンになった。

みんなの読んで良かった!