初めての1人暮らし~青春のひと時を過ごした特別な空間・寮生活~
子供ひとりにひとつずつ子供部屋を用意してくれる家庭もあるようだけれど、私は、そんなラッキーな環境ではなかった。ひとつの部屋を妹と共同でつかっていた私にとって、独り占めできる空間があるということは憧れだった。
大人になって、早く家を出てひとりで暮らす空間がほしかった。
ひとつの部屋に自分以外の人がいる空間はどうしても気をつかうことが多かったり、わずわらしかったりする・・・・
しかし、その一方でひどく怖がりな私は、ひとり暮らしをしていて、「夜、突然こわいことを思い出してしまったら、どうしよう」なんてことも考えたりして、最初からひとり暮らしをするというイメージがなかなか描けなかった。
そんな私がはじめて家族と離れた暮らしをしたのは、寮生活だった。
寮といってもいろいろな寮があるけれども、私はかなり厳しめの寮生活を体験したと思う。
寮生活は4人部屋と2人部屋が選べたけれど、料金が安い4人部屋の方を希望した。独り暮らしをしたいといっても親に養ってもらっている身なので、経済的に少しでも安い方がよいと思ったのだ。
寮はかなり大きく、600人収容できる広さに加え、外観はちょっとしたマンションのようだった。4人部屋の相手は、入居時には寮側で部屋と相手を勝手にきめられている。学生なので、同じ学部の人などと一緒にするように配慮されているようだった。
4人部屋の中は、ドアに入ってすぐのところの両脇に2段ベッドがあり、乗ったことはないけれど寝台列車のような感じだった。
ベッドはけっこう広く作られていて、枕元には、ランプとちょっとした本棚などもあった。ベッドにはカーテンもついていて、ベッドまわりだけは唯一プライベートを守れるようになっていた。ベッドの横には机があり、机と机の間にはタンスがあって洋服などをしまえるようになっていた。
女子寮ということもあり、規則はかなり厳しいほうだったと思う。
私たちの間では、ムショ生活と呼ばれていたぐらい。
実際の刑務所に入ったことはないけれど、私たちの寮のマンションの周りは柵がはってあり、外部からの侵入を防ぐ為といっていたが、逆にいうと逃げられない。
テレビで女子刑務所の生活なんかをやっていたりすると、制服こそなかったけど、点呼の場面や食堂でご飯を食べている場面では、「私もこんな生活をしていたなぁ」なんて、なぜか懐かしくなってしまう。実家に帰る時は、冗談で「シャバに帰る」なんていっていた。
門限は8時、点呼は朝7時と9時、テレビも8時45分まで(自分の部屋前で行う9時の点呼に間に合うようこんな中途半端な時間に設定されていた)。
もちろん、部屋にテレビが備え付けられている訳ではなく、テレビは食堂に2台だけ設置されているだけ。こんな大人数にこの台数で、よくケンカが起こらなかったなと、今になって思う。
一番不便だったのは、コンセントがないことだった。コンセントがない=(イコール)電気製品がつかえない。なので部屋に電気製品をおく場合は、全部電池がはいっているものでしか使えなかった。
暖房や冷房も22時なると消灯と同時に電気がけされてしまうので、夏は恐ろしく暑かったし冬は、何枚も着込んで寝ていた。ただ、勉強する人の為なのかベットのランプと勉強机のランプだけ消灯時間がすぎても点灯することができた。
何十年も前の話になってしまうので、熱中症などが頻繁にきかれる現在ではこんな事はもうしていないかもしれないけれど、今となっては懐かしい思い出になっている。
コンセントもないので、洗濯やドライヤーなどは共同の洗面所があった。コンセントがあるのでそこで充電なども行っていたが、コンセントは数に限りがあるので、順番待ちになることもあり、カフェやカレーやさんなどで気軽に充電ができる今では信じられないことだと思うけれど、充電するだけでも大変だった。
もちろん22時の消灯時間になればすべて止まってしまうので、せっかく順番が回ってきても充電ができてなかったなんてこともあった・・・
電気製品が使えない暮らしや規則に最初は不便を感じてうんざりしていたが、今から思えば、500人近くの寮生たちが生活するにはそれなりの規則が必要になるし、まして部屋にコンセントなんか引いたらどれだけ電気を消費することになるか今考えると恐ろしい。
規則正しい生活=(イコール)ちょっぴり地球にやさしい生活をしていたんではないかなと思う。
平日休日関係なく行われる毎朝晩の点呼、門限なども学生だからこそできたことであり、また電気製品がないからこそ、他人を一緒に生活していく中でのコミュニケーションやより親密な友情、勉強なども集中してできる環境が与えられていたのかなと思う。
何十年たっても、会わなくても、あの時一緒に寮生活した仲間とは交流がある。
寮生活は、不便だったり窮屈だったりといろいろあって、私も含めみんな二度とこんな生活はしたくないけれど、青春のひと時を特別な空間で過ごした仲間と毎日規則正しく生きることを教えてくれた寮生活は、貴重な経験だったと今となって思う。
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