ホワイトデー

小学生の頃、大好きな男の子がいた。
廊下で見つけると挨拶がわりに服についてるフードを引っ張ってみたり、角を曲がったところに隠れて驚かせたり、毎日お互いにちょっかいだし合っていて
なかなか素直になれなかった。
でも彼は優しいところもあって、
授業中に、あ!筆箱忘れた!と思って焦っているとバトエンが転がってきたり、

当時、自転車を買ってもらえなかった私を友達がみんな非情にも置いて走り去っていく中、彼だけは乗る?って聞いてきて乗らないって意地を張ると、
黙って一緒に自転車を押しながら歩いてくれるような、とにかくめちゃくちゃいい子だった。

バレンタインの日、
私はかなりぶっきらぼうに義理だから!とか言って彼にチョコレートを渡した。
彼はあんまり嬉しいって感じでもなく、
あー貰っとくよ、みたいなそんなあっけないやり取りしかできなかった。
お互い素直になれなすぎる。

だからホワイトデーは期待してなかった。
彼はクラスのスター的な存在ではなくて、あんまり前に出ないけど優しい影の人気者、という感じだったから、女の子も彼を悪く言う子はいなかったし人気は少しはあったと思う。

ホワイトデーの朝、
いつになく廊下をみんなが行き交っていた。
他のクラスの男子がくると、フーフー!と囃し立てられたりしていた。
私の学校では朝の登校時間に渡してしまうことが多かった。
放課後まで誰に渡すんだよ〜って絡まれる地獄から逃れるためである。

私はいつもより少し早い時間にきて、みんなのキャーキャー騒いでいるのを聞きながら、
内心彼のことを待っていた。
ちらっと廊下を見やっても彼のくる気配はなかった。
友チョコのお返しを配りながら、
それでもちらちら廊下を確認してみた。
こない。
まさか今日がホワイトデーだということを知らないんじゃないか!?
それか、
別に私のチョコなんて本当にどうでもよかったのかも。

だんだんと悲しくなっていく。

あと3分で朝の会が始まるというときになっても、彼は来なかった。
彼のシャイな性格を考えると放課後に渡しに来ることはないだろう。
帰り道も反対だったし、家も知らなかったので、朝来なかったらもう来ないはずだ。
私は泣きたくて堪らなかった。
素直になれない私がいけないとも思う。

でも、それにしてもひどい。
惨めだ。


残酷にもチャイムが鳴り、先生が入ってくる。
朝の会で先生が何を話したのかも思い出せないくらい私は落ち込んでいた。

だから1時間目が始まるまで教科書をランドセルから机の中に移すのを忘れていた。

やばい!授業が始まっちゃう!と思い、慌てて教科書を机の中に突っ込む。

ん??

入らない!

日頃整理整頓ができなくてぐちゃぐちゃのお道具箱のせい?!

と思って整理してみても教科書がはみ出してしまうので
あ、なんか詰まってんのか!
と思い、机の中に手を突っ込んでみた。

すると、

中に可愛いキャンディの缶ケースが入っていた。

え!!

包装も何もなく、手紙もなく、
無造作に机に突っ込まれていた。

あーやられたーーと思っていると、
あとで友達が
彼が私の席どこ?って聞いてきたから教えといたーwwwって笑いながら教えてくれた。


でもやっぱり素直になれなくて、
え? 何もしてない、知らないとか言ってはぐらかす彼のことを
またちょっと好きになった、11歳のホワイトデーでした。

著者の菅野 愛さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。