折紙女子

人の数だけ物語がある。


だから最近は、電車に乗るのが楽しくて仕方がない。


今日はこんな女の子に出会った。


「折紙女子」


彼女は座席に腰かけて、紺色の紙を折っていた。


揺れる電車に全く影響されないその意識と指先が、一枚の紙を次々と折り曲げ、形ができあがっていく。


全くムラのない折り方が、彼女の集中力の高さと、繊細な手つきを物語っている。


すると彼女が一瞬だけ、顔を上げた。僕と目が合う。


僕は、邪魔しちゃ悪いと思い、すぐさま視線を外して、彼女の隣に座る男性が読んでいた経済新聞に目をやる。


ふむふむ。GDPがねぇ。なるほど。


わざわざそんな表情を作ってみせてみるが、再び彼女に目をやると、何食わぬ顔で折紙に集中していた。


一体、彼女は何を想いながらその一枚の紙を折っているのか、知りたかった。


誰かのことを想いながら折っているのか。


ただ単に折紙が好きで、無心で折っているのか。


紙を折っている最中は、頭の中で何を考えているのか。


その「折紙女子」の頭の中に興味津々でいると、降りる駅に着いた。


乗り換えた電車に乗り、僕はガムの包み紙で折紙をはじめてみた。


邪念が多すぎて、僕には向いていないことがわかった。

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