【おっぱいセクハラ記】欲情の視線に耐える女の日々は、胸が膨らむ時期から始まる⑸

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高校生になるとすでに、大人だろうが同級生だろうが関係なく、男性に胸を見られることに慣れていた。

慣れるというと語弊があるかもしれないけど、どんなに嫌だと思っても、男というものは胸をジロジロ見てくるものなんだという認識ができていた。

視線に耐えるか、見ないでと言うかしか道がない。

結局は、見ないでと言うことなんて恥ずかし過ぎて、視線に耐えるしかなかった。

その忍耐に慣れていったのが高校一年生。

身長はなんとか150センチになっていた。そして、相変わらず育ち続けた胸は、二年生ですでにFカップのブラでもキツかった。

その頃になると、男子に陰で「ホルスタイン」と言われていたし、休み時間になると、違うクラスからも男子が見にきていた。

廊下を歩くことが、苦痛だったし、怖かった。コソコソと数人で笑いながら見ていたり、大きな声で「ホルスタイン」と言われたり、わざとぶつかられたり、胸に肘を当てられたり、時には全然知らない男子クラスの人から、密着した状態で前後に立たれて挟まれたりもした。180センチ前後まで身長が伸びた男子に近づいて来られると、壁に見えて本当に怖かった。

下校時にも校舎の窓を開けて上から見られて、たまに「ホルスタイーン!」と叫んで隠れられたり、胸が大きいというだけで、見せ物になった気分で本当に嫌だった。

胸が大きいだけで、特に目立つことをしている訳でも、特別可愛い訳でもないのに、なんであんなにたくさんの男子が集まってきていたのか理解できない中、毎日毎日、胸が大きいことがストレスでしかなかった。


安心して過ごせたのは、女子短時代だけだった。

関係者の男性数人と女性しかいない学校、通学路は恐怖もストレスもなかった。

弟の中学受験のために、急いで帰って塾の送り迎えと家事をする日々で、男性と接する時間がほとんどなかった。

たまに友達と福岡市内で遊ぶ日に、電車の中で胸を見られたり、痴漢にあったりしたけど、数えるくらいのことで、胸のせいで嫌な気分になることを、すっかり忘れていた。

そうやって二十歳になり、就職をしたら、早速また、胸のことを話題にされる日々が始まった。

入社したての懐かしい想い出に、更衣室おっぱいポロリ事件というのがある。

着替えていた時に、なぜか片方の胸がブラからポロリと出てしまって、それを元気のいいおばちゃん上司に目撃されてしまった。

もう二十歳になったんだし、大人なんだし、胸のこと一つや二つでガタガタ騒いじゃダメだと思うようになっていたから、あははーと笑ってやり過ごしていた。

おはようございます、と元気にオフィスに入っていくと、ほぼ全員にニヤニヤして見られた。

嫌な予感はしつつも席につくと、隣の席のおばちゃん上司が、大声で話しかけてきた。

「wakiちゃん、さっき、オッパイがポローンと出たよねー!すごかったー!私、全然ないから少しちょうだい」

そうすると、皆が笑い出した。

やっぱり皆に言ってたんかーい!と、心の中でツッコミを入れていた。

おしゃべりで気さくで、悪気がない上司だったから、もしかしたらとは思ってはいた。40人以上いる広めのオフィスで、この短時間に一体どうやって皆に言ったんだろうと、感心しながら笑ってやりすごした。


さすがに社会人ともなると、セクハラ遭遇率は一気に上がった。

コーヒーにミルク入れますか?と聞けば、母乳を入れてとよく言われた。

狭い書庫で二人きりになった時、階段ですれ違う時、オフィスで通りすがりに、隙さえあれば、何人にもお尻を触られまくったし、胸を鷲掴みにされることもあった。

会社で飲みに行けば、偉い上司にチークダンスを踊らされて、その間、ずっとアチコチを触られ放題だったし、エレベーターで二人きりになった酔った上司に、無理矢理キスされたこともある。

酷い時には、出張所でカウンターの上に乗って拭き掃除をしていた時、上司とたまたま二人きりになった。

用事もないのにやたらと周りをウロウロしてるなと思っていたら、突然足を引っ張られて、無理矢理抱き込まれた。


ホテルのフロントをしていた時には、カウンター越しにジャンプして、胸元に腕を突っ込んできた猛者もいた。

見られるくらいは耐性もついていたけど、ずっと身長も低いまま、特に護身術を習ったりしたこともなく、とにかく普通の非力な女性で、伸ばされる男性の腕が、怖くて仕方なかった。

いつまでこういう日々が続くのかと、会社に行くのが嫌になった。どこに行っても、状況はあまり変わらなかった。


私は中学生の頃から、早くおばちゃんになりたいと常々言っていた。それは、男性に、性的に求められない自分に早くなりたかったからだった。

実際に、本物のおばちゃんになってみて思うのは、それが贅沢な悩みだったことも分かる反面、やっぱりおばちゃんになってよかったということ。

強くなったことを除いても、若い頃に比べて性的な目で見られ、求められることが減ったことで、生きるのがとても楽になった。

ずっと怖くて憂鬱だった日々から解き放たれて、ずいぶん自由を感じるようになった。

まるで、何も考えずに生きていられた子供時代に戻ったようで、自分らしく笑っていられる。毎日が純粋に楽しい。

セクハラの想い出も、過去のことだと思える。安心していられる今の感じがいい。


私がこの話しを書こうと思ったキッカケは、ある記事を読んだこと。

男性は知らない。すべての女性がやっていることを。

この方は、何故こんな記事を書いたのかと考えた。

真意は分からないけど、書かずにはいられない想いがそこにあったのだと、そう思った。

その想いに触れた時、私も「自分の中にある、女性がわざわざ口にしないこと」を書こうと決めた。

記事にもある通り、すべての女性が遭遇する人生のありふれた一面を、辛いと感じている人がいることを知って欲しかったし、彼女には届かなくても、想いのバトンを受け取った人が一人でもいれば、彼女が記事を書いたことに、賛同した人がいることを示せると思った。

書き始め、特に子供の頃の回想を細かく書いたのは、一番弱く、傷つきやすく、自分を守ることを知らない少女の心と体が、一人でも多く守られて欲しいと、強く願っているから。

大事にされ、愛された記憶が、女性の母性を育てるんじゃないかと思う。

年上、同級生であっても、年下の男の子であっても、男の子から守られたという記憶は、きっと素敵な想い出として女性の中に残っていく。

男運だけは良かったから、とにかく大事に大事にしてもらえたし、とても愛してもらえたことで、乱暴だった私も女らしくなれた一面もある。

いい歳になったからこそ分かるのは、男性が例え10分に1回セックスのことを考える脳を持っていると知った上でも、男性には紳士でいて欲しいと望んでしまうのが女性だということ。

ジャニーズがどの世代でもずっと人気だということ、肉欲まみれの時代を除いては、王子様や、紳士的な人が人気上位になることを見てみれば、自ずと答えも見えてくる。

女性とは、いつの時代も本質の部分で、男性には「王子様や紳士みたいに強くて優しくて、守ってくれる存在」であって欲しいと望んでいる気がする。

もちろん、現実的ではないと知っているから、それも口には出さないとしても。

ご年配であっても中学生や高校生であっても、お心遣いを頂くと、素直に感動してしまう。他者を思いやる優しさというのは、何かしら人に感動を与えると思う。

男性が、本能とのせめぎ合いの中で日々を送る葛藤の辛さも、想像の範囲内では分からなくもない。

だけど、女性、特に若い女の子のことは、守ってあげて欲しい。それだけで女性は感動もするし、生きていく力が湧いてきたりもする。

中には、お金を伴わない優しさに価値を感じない方もいらっしゃるだろうけど、それでも優しくされない、守られないよりはずっといい。

きっと男性が思ってるよりずっと、女の子はツラい想いをしていることもある。

せめて大人になって、自分を守れるようになるまでは、世界中の女の子が守られて欲しい。そういう世界になって欲しい。もちろん、人に優しい世の中が一番の理想だけど。

人にされたら嫌なことは、自分も人にしない。

人にしてもらって嬉しいことを、自分もする。

簡単そうで難しいのかもしれないけど、世の中に紳士、淑女が増えて、素敵な地球になっていくことを願いつつ、これで一旦、終わります。

長々とおつきあい頂きまして、ありがとうございました。


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