闇を切り裂きタブー解禁。15年間書きためた原稿がやっと本になった出版記念に、実家のお寺で緊縛イベントをやってみた。
お願いしたいことがある、と伝える。
と、返したものの。
ぜひ! やりたい、という言葉は、
とてもありがたく、
私はモデルが見つかった安堵感と、
彼女が出演してくれるからには、
とても意味のあるイベントになるであろうことを、予感した。
☆
私はさっそくモデルが見つかったことを2人に報告し、
準備をすすめた。
縛では、縛る側と、受け手との呼吸が命なので、
ほぼはじめましての人、
しかも一度も縄を経験したことがない人を縛る、
というのは、さくらさんにとっても相当なプレッシャー。
しかしその緊張感がこの舞台には必要だった。
☆
台本を作っていくうちに、双子という役を設定した。
それは、ゲイのカップルでもある友人の2人にお願いした。
2人はとてもよく似ていた。
ゲイという存在は社会的にまだまだ少数派で。
タブーという意味では、
とてもタブーな存在になりえる
のではないかなっと。
それから、ポテトをただ食べるだけの男、
ポテチ男という登場人物も。
福島にいる愛されキャラの知人フクタヨさんにお願いした。
そしてどんどん、流れ、構成ができていき、
あとは、本番やるだけ、となった。
☆
本番2日前。
明日は、リハーサル。
と、なって、縄のモデルを担当してくれる、
岐阜のジュンコちゃんから電話がかかってきた。
その暗い声のトーンに、私は展開をさっした。
いけなくなりました……
一瞬どうしようか、いろんなことが頭の中をめぐった。
が。
子どもが5人もいて、
大きなお寺の寺庭婦人でもある。
それは致し方が無いこと。
しかしジュンコちゃんが出れないとなれば、
他にモデルをさがすしかない。
縄文化の浸透していないこの福島で
いきなり舞台にたって、
縄でしばられてくれる女の子なんているんだろうか?
が、とっさにジュンコちゃんの妹、
みっちゃんの顔が浮かんだ。
「みっちゃんはどうだろう? 電話してみよう」
ジュンコちゃんからもお願いしてもらえる?
私は、明日の舞台を失敗させてはいけない、
穴をあける訳にはいかない
と、必死でみっちゃんにお願いした。
みっちゃんもまたお寺の娘で、今も実家のお寺に住んでいる。
みっちゃん代わりにお願いできないかな?
私は、できるだけ丁寧に、かつ、必死にみっちゃんを説得した。
ことになるとほんとに大丈夫?
そういって、みっちゃんに腹をくくってもらい、
私は、ひとまず胸をなでおろした。
急遽、主人公が別の女の子に代わったことを
みんなに報告。
最後の最後まで、緊張感が漂うまま、
明日のリハーサルとなった。
☆
前日昼、ヴァイオリン者、縄者、双子役と
出演してくれるみんなが集まって、夕方のリハーサル。
「リハーサルは本番と同じでやらなきゃ意味がないよ」
普段、超一流アーティストとお仕事をしている
友人ミッチー(双子役)の助言により
着物を着てのリハーサル。
唯一自分で持っている薄い黄色の着物。
いざ着てみると、どーもシンプル。
舞台のイメージは
『大正ロマンなどこかレトロな感じ』
だったのに、自分の世界観にそぐわない。
すると、母。
と、出してきてくれた着物がまさに、これ!
レトロ感満載で、イメージにぴったりなものだった。
リハーサルも無事終わり、本番当日。
☆
私は、その夜、いっすいもできなかった。
興奮したのか、緊張してなのか。
頭のなかが、ぐるぐるとまわったまま。
アドレナリン状態で、まったく寝れない。
その状態のまま次の日を迎え
イベント当日。
私と、絵の野村さんは昼間のイベント
「モリノネ」から参加。
お客さんが目の前に来てくれても、
夜のイベント「裏森」のことで頭がいっぱい。
せっかく短編集「トウモコロシ」を販売していても、
気がそぞろでおつりも数えられないような状態。
お客さんは来てくれるんだろうか?
舞台はどんな風に仕上がるんだろうか?
そんなことで頭がいっぱいだった。
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