闇を切り裂きタブー解禁。15年間書きためた原稿がやっと本になった出版記念に、実家のお寺で緊縛イベントをやってみた。

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お願いしたいことがある、と伝える。


ジュンコちゃん
え!? ぜひやりたいです


いやいや、ちゃんと考えて。縄だよ、縄


と、返したものの。

ぜひ! やりたい、という言葉は、

とてもありがたく、

私はモデルが見つかった安堵感と、

彼女が出演してくれるからには、

とても意味のあるイベントになるであろうことを、予感した。




私はさっそくモデルが見つかったことを2人に報告し、

準備をすすめた。

縛では、縛る側と、受け手との呼吸が命なので、

ほぼはじめましての人、

しかも一度も縄を経験したことがない人を縛る、

というのは、さくらさんにとっても相当なプレッシャー。

しかしその緊張感がこの舞台には必要だった。




台本を作っていくうちに、双子という役を設定した。

それは、ゲイのカップルでもある友人の2人にお願いした。

2人はとてもよく似ていた。

ゲイという存在は社会的にまだまだ少数派で。

タブーという意味では、

とてもタブーな存在になりえる

のではないかなっと。

それから、ポテトをただ食べるだけの男、

ポテチ男という登場人物も。

福島にいる愛されキャラの知人フクタヨさんにお願いした。

そしてどんどん、流れ、構成ができていき、

あとは、本番やるだけ、となった。




本番2日前。

明日は、リハーサル。

と、なって、縄のモデルを担当してくれる、

岐阜のジュンコちゃんから電話がかかってきた。

ジュンコちゃん
あの……。実は

その暗い声のトーンに、私は展開をさっした。

ジュンコちゃん
子どもの具合が悪くなって、
いけなくなりました……


一瞬どうしようか、いろんなことが頭の中をめぐった。

が。

子どもが5人もいて、

大きなお寺の寺庭婦人でもある。

それは致し方が無いこと。

しかしジュンコちゃんが出れないとなれば、

他にモデルをさがすしかない。

縄文化の浸透していないこの福島で

いきなり舞台にたって、

縄でしばられてくれる女の子なんているんだろうか?

が、とっさにジュンコちゃんの妹、

みっちゃんの顔が浮かんだ。

「みっちゃんはどうだろう? 電話してみよう」

ジュンコちゃんからもお願いしてもらえる?

私は、明日の舞台を失敗させてはいけない、

穴をあける訳にはいかない

と、必死でみっちゃんにお願いした。

みっちゃんもまたお寺の娘で、今も実家のお寺に住んでいる。



実は、急にジュンコちゃんがこれなくなって。
みっちゃん代わりにお願いできないかな?


私は、できるだけ丁寧に、かつ、必死にみっちゃんを説得した。


みっちゃん
わかった。明日、リハーサルに行きます


リハーサルに来るってことは、本番も出るって
ことになるとほんとに大丈夫?


そういって、みっちゃんに腹をくくってもらい、

私は、ひとまず胸をなでおろした。

急遽、主人公が別の女の子に代わったことを

みんなに報告。

最後の最後まで、緊張感が漂うまま、

明日のリハーサルとなった。




前日昼、ヴァイオリン者、縄者、双子役と

出演してくれるみんなが集まって、夕方のリハーサル。

「リハーサルは本番と同じでやらなきゃ意味がないよ」

普段、超一流アーティストとお仕事をしている

友人ミッチー(双子役)の助言により

着物を着てのリハーサル。

唯一自分で持っている薄い黄色の着物。

いざ着てみると、どーもシンプル。

舞台のイメージは

『大正ロマンなどこかレトロな感じ』

だったのに、自分の世界観にそぐわない。

すると、母。

あ、おばあちゃんの着物がある。もう、10年以上着ていないけど……


と、出してきてくれた着物がまさに、これ! 

レトロ感満載で、イメージにぴったりなものだった。

リハーサルも無事終わり、本番当日。




私は、その夜、いっすいもできなかった。

興奮したのか、緊張してなのか。

頭のなかが、ぐるぐるとまわったまま。

アドレナリン状態で、まったく寝れない。

その状態のまま次の日を迎え

イベント当日。

私と、絵の野村さんは昼間のイベント

「モリノネ」から参加。

お客さんが目の前に来てくれても、

夜のイベント「裏森」のことで頭がいっぱい。

せっかく短編集「トウモコロシ」を販売していても、

気がそぞろでおつりも数えられないような状態。

お客さんは来てくれるんだろうか?

舞台はどんな風に仕上がるんだろうか?

そんなことで頭がいっぱいだった。

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