放送部のマドンナと、放課後の屋上

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気をつけた。

「どうしたの?」

僕が問いかけると、

彼女のまわりにいた友人たちは、

その場から去っていった。

僕は彼女と二人きりになった。

ますます期待した。

彼女の友人たちは、

離れた場所にいる男子たちと合流し、

僕らの動向を、

遠くから見守っていた。

すると、

彼女が口を開いた。

「好きです」

え?

いま、好きって言った?

もうその言葉が信じられなかった。

体が宙に浮いた。

舞い上がった。

喜びの感情がMAXに達した瞬間、

彼女が再び、

口を開いた。

「広島が」

は?

いま、広島って言った?

惚れた女の子から告げられたのは、

郷土愛だった。

彼女はわざわざ、

放課後に僕を屋上まで呼び出して、

広島が好きなんだと、

報告してきたのだ。

うーん!!素晴らしい!!

よしっ、みんなで故郷を愛そうじゃないか!!

ってなるわけがない。

僕はその場から動けなかった。

何も言葉が返せなかった。

電池が切れた機械のように、

僕は動かなくなった。

みんなが帰ったあとも、

屋上でひとり、

しばらく佇んだ。

夕陽があまりにも美しくて、

泣いた。

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