思い出のバスに乗って:となりのトトロ

♪だれかがこっそり 小路に木の実 うずめて~
この歌いだしで始まる、大好きなアニメーション、となりのトトロ。何度も飽きることなく我が家の子供たちと繰り返し繰り返し観たものです。


わたしも子供たちも気に行ったいは映画やドラマは飽きることなく何度も見る性格です。特に娘は台詞をそらんじるところまで参ります。

さて、このアニメ、当初は時代が何時ごろなのか、などとは考えもしないで観ておりました。さつきがメイを学校の教室の中で、自分のとなりの席に座らせながら授業を受けている場面に出会った時は、思わず叫んだものです。


ああ!ママもこれとおんなじことしたんだよぉ、小学校1年くらいのときに。」そうです、まさにあれと同じシーンを遠い昔にわたしは実体験していたのでした。

ところは郷里の、青森は弘前の下町にある城西小学校。昭和20年代も終わりに近いころです。こんなことを書いたら、年もすっかりバレてしまいますが、ま、いいでしょう。あのころは、今の時代のように物が豊かではありませんでした。白黒の、色も褪せがちになっている当時の写真を見ますと、すっかり両膝の出たズボンに、ツンツルてんのセーター、履いてるものだって、靴ではなくゲタです。

我が家は、下町の祖母の家に4世帯ほどが一緒になって住んでる大所帯。子供の数だけでもわたしを筆頭に、妹従兄弟と合わせても5、6人。それに大の大人が9人と、ただいま11人どころか、14、5人で、今思えば食事時はいったいどんなにぎやかさだったのでしょうか。

貧乏所帯でしたから、日中は祖母を始めとし、全員外へ働きに出ておりまして、家の中は子供のみ。

わたしが小学校にあがったころは、二つ年下の妹を独りにしておくこともできず、何度か学校へ一緒に連れていったことがあります。妹は、このアニメと同じように、わたしの隣に座って静かに絵を描いておりました。その絵がまた、上手いのですね。それを見て、わたしの担任の先生が褒めるわけです。その時の我が妹の得意そうな顔。わたしは自慢心半分ねたみ心半分と、子供ながらなんとも複雑な思いを抱いたものです。


今は、そんなことは、とても許されないでしょうね。
 学校も部外者は構内に入れないでしょうし、父母からの苦言が一言二言どころでは済まないでしょう。
 しかし、あの子供の頃、わたしはトトロの中の同じ出来事を実際に経験した一人なのですね。

そう思いながらジブリのホームページで物語の背景を調べて見ましたら、やはりとなりのトトロは、昭和30年ころが舞台なのだそうです。日本が貧しくても鷹揚な教育観念を、学校も周りの大人も持っていた時代だったのではなかったかと、今振り返って思います。
         

「あの子がいると、他の子の足をひっぱる」だののような言葉は誰からも聞こえなかった時代。できる子もできない子も、豊かな子も貧しい子も、みんな一緒に交じり合って、それがごくごく普通の学校生活だった時代。

あのアニメが、わたしのような大人も観れる、というのは、ただ懐かしいからだけではないでしょう。現代社会が失ってしまった鷹揚さ、人間としての基本的な生活の芯がうかがわれるからではないのかと、わたしは思っています。

最後になりますが、わたしの隣に座って絵を描いていた妹は今でも絵が好きで、趣味で友禅染から始まって、現在は日本画を学んでいます。
そして、これもまた、とても不思議な偶然ですが、所沢に住んでいるのですね。車でものの10分もしないで、「トトロの森」に行けます。

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