ビザ無しでイランに飛んだ話

きっかけ

社会人2年目のこと。わりとお金に余裕ができたことと、比較的長期休暇が取りやすい職場だったため、頻繁に海外旅行をしていた。
旅行の多くは一人旅だった。GWに初めての一人旅を経験し(To台湾)、すっかり味をしめ、11月に無理やり取った連休にはNYへの一人旅を実現した。
ことの発端は、NY行きを間近に控えた11月初旬、隣の先輩と残業していた時の会話だった。その先輩は大の旅行好きで、年に3回は海外に飛んでいた。
先輩
カタール航空がGWのチケットめちゃ安く売ってるね。
カタール航空が翌年のGW向けに、サーチャージ込8万で、ヨーロッパ行の航空券を販売していたのである。これは相当にお得、ということで、早速対象路線を二人でチェック。
わたし
お!さすがカタールだけあって、トルコとかありますね。一度行ってみたかったんですよ。
先輩
俺トルコ行くから別のところにしてよ!笑
わたし
まあ、確かに異国の地でバッタリ遭遇するのもアレですねえ。じゃあどこにしようかな・・・
と探していると、イランへも行けることが判明。何を隠そう、わたしは大学時代イラン現代史を専攻していたのである!大学の卒業旅行をイランにしようかと検討したこともあったが、仲間のヨーロッパ希望に押されて叶わなかったため、満を持してイランをチョイス。半年後に政変起きてたら笑えないなと冗談を交わしつつ、カードで8万引き落とされる。

渡航手続の確認

NY行きのことなど俄然どうでもよくなり、イランについて調査を開始。どうやら、イランに入国するためにはビザを発行しなければならないようであった。
ビザ発給の場所は在日イラン大使館か、現地の外務省で、現地に知り合いのいない日本人の申請方法は、大きく分けると3種類あるようだった。
①在日大使館で取得
 一番確実な方法。ビザが発給されたことを確認し、イランに飛ぶことができる。ただし、大使館での申請は業者を通して行う必要があり、業者に代行手数料(約2万円)を支払う必要がある。
②現地で取得
 日本では何の準備もせず、現地の空港でビザを申請する方法。イランは政情がやや不安定ということもあり、発給されないこともあるらしい。発給されないと入国はできず、強制送還ということになるため、非常にリスクが高い。
③日本で現地取得の手続きを実施し、現地で取得(e-ビザ申請)
 おそらく最も合理的な方法。必要事項を記載した用紙をイラン外務省に送付し、ビザ発給の手続きを現地にてあらかじめ進めてもらうシステムである。
私は迷わず③をチョイス。申請フローをチェックし、7日~10日程度で申請が完了することを確認。しかし、外国のお役所仕事なので遅れることも考慮し、旅行の1か月前から手続きをすることとした。(後で考えれば、この時面倒くさがらずに手続きを完了させておけばよかったのである。)

e-ビザ申請のはずが?

仕事がヤマ場を超え、一段落した頃にビザのことを思い出した。でも大丈夫、旅行まではまだ1ヶ月以上もある。先述の通り、大使館のHPによれば、7~10日で取得できるとのことなのだが、余裕を持ってこのタイミングで開始。以前チェックした通りに大使館のHP経由で申請しようとしたが、いつまで経っても応答しない。おかしいと思って調べたら、イラン本国のビザ用サーバーがハッカーの攻撃に遭ってダウンしているらしい、とのこと!!
とりあえず大使館に電話してみる。
わたし
サーバー落ちてるんですが!
イラン大使館
そうなんです。復旧のめど立たないんで、ビザ代行業者を使って大使館で申請してください。
わたし
私が大使館行って申請しちゃだめなんですか。
イラン大使館
それはお受けできません。代行(以下略
ということで、「③e-ビザ申請」は選択肢から消えてしまった。しょうがないので「①在日大使館で取得」でやろうと思い、代行業者を探す。いくつかあったが、いちいち手数料が高くて腹立たしい。自分でやったら5000円なのに業者にやらせると最低でも16000円かかる。
でもチケット代8万をドブに捨てるわけにはいかないので、業者に依頼する。これで予想外の追加出費が10000円。
1週間後、代行業者にパスポートを送る。金はかかったが、とりあえずこれで問題ないはず。あと20日あるから、さすがに出発までには発給されるでしょう。とりあえず平穏な日々を過ごす。

予想外の展開、再び

更に1週間後(出発2週前)、代行業者から連絡が来る。
わたし
ようやく発給されましたか。
代行業者
4月から制度が変わっちゃって、ちょっと当分取れそうにないからパスポートとお金返しますね。
わたし
えっ
わたし
いや、別に今パスポート返されても意味ないので取れるまで預かっといてもらえますか。
代行業者
この感じだと当分取れないとおもいますよ。
わたし
制度変わってからビザ取れた人いますか?
代行業者
いませんね。
ついに発給されたか!と思いきや、思いもよらない回答。目の前が真っ暗になる。どうでもいいが、代行業者がビジネスアワーしか営業しておらず、会社の給湯室で電話しているため、そろそろ給湯室がトラウマになりそうである。
隣の先輩に事の顛末を話したら、「ツイッターでイラン旅行行った人探せば?」との助言をいただく。さすが!その発想はなかった。ソーシャルメディアってすばらしい。早速ビザ発給された人を発見。思い切って連絡をとってみるものの、その人はどうやら3月に申請していて、1週間ぐらいで取れたとのこと。ちくしょう・・・私もあと2週間早ければ・・・と思ったがもはや後の祭りである。

逆転の発想 ~行先変更~ のはずが?

ここまできたらイランは諦め、ドーハから別の場所に行こうと思い立つ(カタール航空のため、フライトが成田発ドーハ経由テヘラン行となっている。)。中東の歴史をやってただけあってドーハ近辺にはたくさん行きたいところがある。ここまで来ると逆に楽しい。いろいろ悩んだがヨルダン・イスラエルに決定。どっちもビザ必要ないため、イランに行くなら必要だった16,000円は全く必要なくなる。ドーハ→ヨルダンのチケットは往復40,000円。イラン旅行+24,000円と思えば、不測の事態にしてはかなりうまくいった方である。早速ドーハ→ヨルダンのチケットと地球の歩き方をウェブで調達。
そして、確認を怠らない私はカタール航空に念のため電話。というのも、航空会社によっては、行きの便の搭乗記録がないと、帰りの便をキャンセルされてしまうことがあるからである。今回のように、成田~テヘランのチケットを購入したにも関わらずドーハで途中降機する場合、ドーハ発成田行の座席もキャンセルされる可能性があるため、あらかじめキャンセルされないよう伝えておかなければならないのだ。
わたし
あの、念のためなんですが、ドーハ・イラン間は乗らないんですが、それでもドーハ・成田間はキャンセルしないでくださいね。
完璧である。しかし、航空会社の回答は思いもよらないものだった。
代行業者
お客様が購入されたチケットは、ドーハで降りることはできません。
わたし
えっ
代行業者
成田→テヘラン用のチケットのため、テヘランまで行かないと帰りのチケットはキャンセルされます。
わたし
えっ・・・
給湯器の前でブラックアウトしそうになる。今回はヨルダン行きを決め込んでぬか喜びしていただけに更に効いた。つまり、11月に買った航空券はテヘランに行く以外の使い方はできないため、ちょっと前に買ったドーハ~ヨルダンのチケットは完全に無駄だったということである。とりあえずヨルダン行のチケットは即払い戻しを実行(手数料10,000円取られる)。
これで、ビザ無しでイランにぶっこむ以外の全ての可能性がなくなった。ちなみにイラン行きのチケットは払い戻しすれば3万5千円は返ってくる、とのこと。。。

最後の希望

絶望に打ちひしがれていたものの、最後の切り札があったことを思い出す。ツイッターでコンタクトをとった人が、イランにいる日本人を紹介してくれたんだった!!紹介してくれた時には既にヨルダン行きのチケットを取ったとこだったため必要なかったが、ここへきて生きてきた。
泣きそうになりながらとりあえず電話して、メールを送ってみる。
わたし
・・・という状況なんです。とりあえず、旅行業者や大使館にはビザなしで飛ぶのはリスク高いからやめろと脅されていてビビッてます・・・
テヘラン在住の方
とりあえず、飛ぶしかないでしょう。だめだったら空港から連絡くださいね。
なんといういい人!もうこれに賭けて飛ぶしかない!!!!!!
ということで、両親にもさんざんやめろと言われた中、カタール航空に搭乗。

運命の瞬間

カタール航空は死ぬほど快適で、ドーハでのトランジット(12時間ぐらいあった)も、市内を観光できたりして、なかなか楽しむことができた。しかし、テヘラン行の飛行機に乗ると、緊張が始まる。
ドキドキしながら本を読んでいると、あっという間にテヘランに到着。実は、以前にも空港の入国管理局で大変な目に遭ったことがあり、まさか再びこんな緊張を味わうとは思ってもいなかった。
閑散とした空港内を歩き、ビザ発給所に到着。申請書に記載をし、無愛想な係員に書類を渡す。同時に帰りのフライトのeチケットなどを見せ、怪しいものではなく単なるツーリストであることを必死にアピール。笑 係員はバックヤードに消えたきり、ちっとも出てこなかった。
ひたすら待った。何時間にも思えるぐらい待った(実際は30分程度)。私の他にビザ発給を待っているのは15人ほどだったが、日本人は皆無だった上、全員がe-ビザの申請を行っており、非常にスムーズに手続きを終え、去って行った。
この時点で22時。今発給拒否されても、テヘラン在住の日本の方に電話するのは忍びない時間である。頼む、うまくいってくれ・・・
と思っていると、係員から発給される旨伝えられる。きたあああああああああああ!!!!
40ユーロを支払い、ビザゲット!!!!
その後も入国ゲートで別室に連れて行かれて指紋を採取されたり、誰もいない中よくわからんけど待たされたりしたが、なんとか全てパスし、無事入国。こうして、1か月に渡った私とビザとの戦いは終わりを迎えることとなった。

おわりに

ちなみに、イランは大変いい国でした。気候はいいし、建物はかっこいいし、何より、人をもてなす文化が素晴らしすぎます。報道ではイランは悪い国だとなっていますが、いいか悪いか判断するのは、(危険でない限り)その国を訪れてからにしてほしいと思います。韓国に行った時も全く同じことを思いました。皆さん、自分の目で世界を見ましょう。
なお、短編ではありますが、リクエストがありましたら「入国審査でウソがばれて大変だった話」でも書こうと思います。ぜひともごひいきに!



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