おじいさんの指を噛んだ話

僕が幼稚園児の頃、おじいさんがまだ生きていた頃、僕はおじいさんの人差し指を強く噛み、角度にすると約30度ほど曲げてしまったことがあった。約30度というと結構な曲がり方で、その指を見るたびに僕の心は強く痛んだ。おじいさんが何かを指さすと、必ず指したい対象の脇あたりの何もないところを僕は見た。指が曲がっていて、おじいさんが指差したい方向と指先が約30度ほどズレているからだ。僕はいつも、釈然としない気持ちになったけど、指を曲げてしまった張本人だからこそ、おじいさんが指差したかったものは何なのか一生懸命探したものだった。

といっても、実際のところ、おじいさんはその話をする時になると必ずニヤニヤとしていたし、おじいさん以外は一切そんな話をしなかったから、多分ウソなんじゃないかと思う。おじいさんは鉄工所を経営していたから、きっと鉄骨か何かに挟むような事故で、指を曲げてしまったのだと推測している。
この話のポイントは、なぜ30代も半ばを過ぎた僕が、未だにこの話の真偽を確かめていないのか? というところにある。

話の真偽は、僕が死んでから確かめることとしたい。特に理由は無いけど、せっかくだから本人に直接聞きたい。
あの世でも、おじいさんの指は曲がっているのだろうか? 
死んだ後の楽しみがあると、今生の生活にも張りが出るというものだ。

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