サイパン島の森のなかで出会った人 その1

次話: サイパン島の森の中で出会った人 その2

あれはもう30年も前の事であったが、その時のことを今でもしっかりと覚えている。それほどの感動があったということだ。

それは就職の内定を貰った大学4年生の時。

内定式で出会った「将来の同僚達」と卒業旅行に海外に行こうということになった。

行き先は大多数が押す「ハワイ」と一名が強固に押す「サイパン」。

費用では就職後の給与からの返済を見込んでのローン。どちらでもローン金額が変わるだけ。

「なんでサイパンなんかに行きたいんだよ?」

聞いた質問の答えに皆んな凍った。

「日本軍英霊の遺骨を収集したいんだ!」

?????

とっさには日本語が理解できなくなっていた。

「日本軍?」

「遺骨収集?」

「そうだ!」

そいつは目を輝かせながら答えていた。


「まずい。同期に右翼か。」これは益々ハワイにしたいと彼以外の誰もが思った。

どの様にして決めるかケンケンガクガクと話し合いを持ったが、今となっては忘れてしまった。

なにか賭けをしたんだと思う。

ちょっと無理そうな事が起こったら「サイパン」。

そうでなければ「憧れのリゾート地、ハワイ」。

で、タイトルからもわかる様に彼が勝利を収め、目的地は「サイパン」。


成田空港を夕方に飛び立ち、4時間強のフライトでサイパンには日にちが改まった深夜に到着。

飛行機を降り立った瞬間ムッと蒸し暑い空気に全身が包まれて南の島に来た事を実感する。

入国審査を受け送迎バスでホテルへ。人数が5人だったので2部屋に分かれて眠る。


翌日は朝からホテルの前のビーチでぶらぶら。

デッキチェアーに座っていると現地人が何やら怪しい物を売りに来る。

緑色の木の実で「ビートルナッツ」という。

「合法なのか?」と尋ねると、

「ノープロブレム」との答え。

このナッツと何かの葉っぱ、白い粉(やっぱりヤバそう)でセット。

噛み方を教わったが、

1.実を噛んで2つに割る。

2.割ったところに白い粉を入れる。

3.葉っぱに挟む。

4.口に入れて噛む。

5.つばが出てきたら吐き出す。

ハイになるとかそんな事はなかったと思う。

噛んでいると段々に葉が真っ赤に染まってくる。

見ようによっては生肉を食べて血をしたらせている様にも見える。

後で調べたところ白い粉は「石灰」。貝殻を砕いてすり潰して作るらしい。

効果としてはぼーっとしたり、脈が早くなったりするらしいので、一種の興奮剤の様な効果があるのだろう。


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