(前略)ただゴルフがしたい一心で渡米してプロゴルファーを目指した話⑥ 3年半でコーチを5人変えて気付いた事
結論から先に言うと、コーチは一人に絞ったほうがいいです。
私はゴルフをかれこれ21年(!)やってるわけですが、今のレベルに来るまで紆余曲折、遠回りしてきたと思います。
7歳からクラブを握った私ですが、ずっと一人のコーチに教わっていたわけではなく、いろんな人に教わって育ち、18歳くらいの時にベストスコアはまだ82だったのを覚えています。
日本では3回以上レッスンをとったことがあるのは5人くらいかな。一回きりのアドバイスをもらうことなんて数知れず。
今回は自分の反省と、ネタ提供と、読者の皆さんのコーチ選びの指針になれば嬉しいという思いを込めて、私がアメリカに来てからのコーチヒストリーを一挙にご紹介します。
一人目:Yさん
最初の日本人のYコーチには、とてもお世話になりました。
奥さんと2人のお子さんのいるご家庭にお邪魔して1ヶ月間ホームステイさせてもらいました。
けど1年経った時に、辛くなってきました。
今から見ても甘ちゃんだった当時の私は、コーチから教わることがなかなか身につかず、練習が足りないと言われ、いつしか練習が「こなす」「我慢する」になって、成長するための工夫する気力も楽しみもなくなってしまいました。
思うようにゴルフの実力も上がらなくて、同じことの繰り返しで、正しいことをしているのかどうかわからなくなって。
教わったドリルだけ上手くなり、実際のスイングには活きず…
コーチとは二人三脚で2年間やりきるつもりだったのですが、師弟関係が近くなりすぎて、最終的には1年半で辞めてしまいました。Yコーチも私に失望したと思います。
まぁでも合わなかったのだから仕方がない。
(そう思えるようになるまで数ヶ月かかりましたが)
コーチ二人目:ケリー
Yコーチの元を離れたあと、ちょっと放心状態でした。
上手くなるにはどうしたらいいだろう。
自分の中に答えがあるとは知らずに、誰かが正しい導きをしてくれると思っていた私は、またコーチを探し始めました。
そう言ってきたのは、韓国人プロゴルファーのケリーでした。
ケリーは日頃からちょくちょく練習する、気心の知れたゴルフ仲間でした。
タダでいいと言ってくれたので、アドバイスを聞くことに。(←この時点でやや上から目線)
しかし、彼のスイング理論は難解すぎました。
いろんなツアープレーヤーのスイング動画を見て、「ほら、肘はこの角度になっているだろう」とか「この右足の蹴りをバネにして力を生み出すんだ」とか、彼の頭の中では繋がっているらしい理論A、B、Cが、やってみようとするとよくわからない。
目指すスイングに共感できず、マユツバで試すものの、不細工になっていく自分の型がどうしても正しいとは思えず、
そのうちレッスン料を払ってくれると助かる、と言われたので3ヶ月で辞めました。
(ちなみに彼は変わり者ですが、今でも良い友達です)
コーチ三人目:デービット
当時の練習拠点にしていたパブリックコースのすみっこで教えていたデービット。
きれいなスイングで良い球を打つので、「よし今度こそ、彼に賭けてみるか」と入門。
といって見せてくれるデモンストレーションは美しいのだけど、ドイツ人とフィリピン人ハーフの先生は体格に恵まれていて、「先生の骨格と筋力があるから飛ぶのでは…」という疑問が払拭できず。
インパクトでの球の捉え方は良くなったものの、飛距離は伸びず。
彼が1ヶ月間フィリピンのゴルフアカデミーに行ってくるという留守の間に(まるで浮気)4人目のコーチ、ゲリーに出会いました。
コーチ四人目:ゲーリー
今までの論理的ゴルフに疲れてきていた折、ゲーリーの教えは割と「てきとー」でした。彼は典型的なアメリカ人という感じで、楽しくおしゃべりな人でした。
とにかく褒めて伸ばす手法…
余談ですが、ティーチングプロという職業は、ふつうは土日が稼ぎ時です。
一般のアマチュアゴルファーは平日働いていて、週末にゴルフのレッスンを取ることが多いからです。平日は、リタイヤした年配の方、フリーランスの人、平日休みの職種の人、主婦、学生などが来ます。
しかしゲリーは土曜日でも、「今日はもう疲れたから休む」と言って 生徒さんの予約をキャンセルして、日傘の下でコーラなんか飲んでいるのです。
彼の行動や発言は心配になるほどてきとーでしたが、「アメリカはこんなんでもいいのか」「いや この非常識さが今の私には必要なのかもしれない」と考え、気楽にゴルフできました。
彼のアドバイスはすぐに効いて、しばらくは順調でした。
しかしそのうち、彼の助言なしには、自分がなぜミスするのかわからない状態になっていました。
自分の「標準」スイングがあいまいで、アドレスとかグリップの微調整をしてその日のボールを良くするだけで、気づけば新しい技術習得の練習をほとんどしなくなっていました。
また、公私ともに仲良くしてしまったが為に、レッスンにも緊張感がなくなっていきました。
結局、Q School(アメリカのプロテストみたいなもの)でキャディをしてもらった時に大ゲンカになり、以来決別。
コーチはずっと尊敬する存在であるべきで、決して友達ではない という事を再確認しました。
コーチ五人目(現在進行形):ジョン
いわゆる「ゲリーショック」の後、やはり同じコースにいたジョンにレッスンを頼むことに。
最初に前のコーチへの露骨なダメ出しをされましたが(笑) 彼もきれいなスイングを持っていて、試合経験もあり、真面目でした。
ただこれまでのコーチ達との苦い経験から、あまり打ち解けられず。
ジョンはTrackmanという弾道計測機器や、スイングウェイトマットなど、最新のハイテク機器を駆使しており、ゴルフを学び続ける姿勢は尊敬できます。
スイングビデオチェックや解説は説得力がある気はしますが、細かい技術面(ダウンスイングの部分)の彼の理論が腑に落ちず、また違うコーチの情報収集をしている最中です…
反省と考察
ティーチングプロの言うことは十人十色、千差万別、多種多様…
これほどのコーチの元を渡り歩いてきて、学んだこと。
その①
人生に正解などないように、ゴルフスイングにも正解などない ということ。
自分でもやろうと思えばできるけど、逆にゴルフ雑誌やYouTubeでは、ゴルフ指南は溢れています。
だから「何が自分に合っているか」を探り、決めて、進むだけ。
情報が氾濫している中で、全部鵜呑みにしていたら混乱します。
皆さんは始めのうちに何人か何種類か試してみて、しっくりくる方法を選んでください。そして選んだら迷わないでください。
その②
どのレベルのゴルファーにも言えることだと思うし、あるいは料理や資格勉強など、どんなジャンルであっても新しいことを学ぶ時に言えるのは、
1つの方法、1冊の参考書、1人のコーチに決めて、やり切る方が上達する ということ。
私は辛抱が足りないというかツメが甘いというか、ある程度できるようになったらすぐ次の事に移りたくなってしまう癖があったのです。
何が「ある程度」なのか、どこまでいったら「目標達成」なのか、ビジョンを明確にしてみましょう。
もしくはそこまで提示してくれるのが良いコーチです。
皆さんは私みたいに遠回りしないでください!
その③
最終的に一番のコーチは自分自身 ということ。
ゴルフは、メンタルがとても大事です。
大事な理由は色々ありますが、止まっているボールを打つので、すべてが自己責任であるということ。どんな状況でも、結果は数字で表れる。体調不良で…とか、一緒にプレーした人がうるさかったから…とか、言い訳できません。
コーチの存在はとても大きいですが、最終的には自分で考えて、感覚を研ぎ澄まして、信念を持ってやり抜かなければいけません。
技術コーチを探して何人ものインストラクターに教えを乞うてきた私ですが、最近は完璧なスイング、完璧な答えを他人に求めているのはおかしいということに気付きました。
それは結局、自分に向き合っていなくて言い訳を作るだけだったのでは、と思います。
初めはどこかで「プロになりたいとアピールしていたら、誰かが私をプロゴルファーにしてくれる」と思っていたのかもしれません。
誰に習っても、その先生は私に代わってボールを打ってくれるわけではありません。教示してくれて刺激を与えてくれることはできても、教えを咀嚼して習得するのは自分自身です。
だから。
私は もっと強くなろう、本気で向かい合おう、楽しくやりきろう と決意しました。
追記:と言いつつ懲りない私の現在
次のコーチ候補①:マイク
私が日本にいた時、大学ゴルフチームのコーチが紹介してくれた、アリゾナに住むおじいさん。
経験豊富な感じで信頼度は高い。「ゴルフはアートだ」と言っていたのが印象的で、インパクトの時のフェースコントロールで球を打ち分けるのだ、という「感覚派」レッスン。
次のコーチ候補②:ケンダル
お世話になっているゴルフブランドの方が紹介してくれた、アリゾナ在住カナダ出身の日系人。
脚の使い方、肩の使い方など、体をどう動かすのが効率的かを考えたゴルフスイングで、フィットネスの要素を多分に含んでいる。
ゴルフのみならずオリンピック選手などアスリートにも指導していて、これも信頼度が高い。
自分という最高のコーチを持ちつつ、更に成長するための師匠も探し中!(笑)
もう言い訳しませんよ!
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