【第9話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

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前編: 【第8話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。
後編: 【第10話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

平成18年9月、僕たち3人は隣町の実家に引越しをすることになった。

僕にとっては慣れ親しんだ町だったが、子供たちにとっては縁もゆかりもない初めて住む町だ。

不安がないと言えばうそになるから、精いっぱい笑って子供たちを笑顔にした。

下の子は幼稚園をすでに辞めていて、引っ越した後にどこか新しい幼稚園に通うということはなかったが、上の子は小学生だったために、9月の新学期から新しい小学校に通うことになった。

引越しも終わり、新しく通うことになる小学校にも手続きを済ませ、新しい担任の先生とも顔合わせをし、いよいよ転校生として初日を迎えた日、下の子を連れ3人で小学校に行った。

下の子は初めて行く学校に興味津々で、いろんなところを珍しそうに眺めていたけど、上の子はさすがに緊張した面持ちで、そわそわしながら不安げな表情を浮かべていた。

図書室で一旦待機してから教室へ向かうとのことだった。

朝の9時過ぎ、図書室から見える校庭には誰も居なくて、夏の日差しに生い茂った緑色の葉っぱが気持ちよさげに揺れていた。

遊び相手のいない遊具が、校庭の静けさを強調する。

いよいよ新しい生活が始まる、これから先3人で乗り越えなければならない壁がどの程度の物なのかさっぱり分からなかったけど、どんな時でも力を合わせて笑って乗り越えなければいけない。

生まれて初めて経験する転校を、今まさに乗り越えなければいけない小学3年生の上の子の肩を、僕は抱きかかえた。

「大丈夫、今日から楽しいことばっかりだからな」

出来るだけ良いことを考える。

子供たちがいつでも笑顔になれるような言葉をかける。

上の子はそれどころではないといった雰囲気で、相変わらず落ち着かない様子でそわそわしていた。

15分程度待たされたのちに先生が呼びに来て、いよいよ教室へと案内されることになった。

静かな校舎に僕のスリッパの音だけが、不自然に響き渡っていた。

先生が先頭を歩き、僕が下の子を手を引いて歩き、一番後ろから上の子がついてくる。

階段を上り、廊下の中ほどまで歩いたところで気配を感じた新しいクラスメイトのみんなが、大歓声で上の子を迎え入れてくれた。

小学3年生にとって、自分たちのクラスに転校生がやってくるということは、それはそれは一大イベントに違いない。興奮を抑えられないようなそわそわした空気は、歩いている廊下にまで伝わっていた。

担任の先生は若い男の人で、運動ができそうな活発なイメージ。

先生は上の子の頭を軽くなでると、背中を叩き教室の中へと誘導し教室の扉を閉めた。

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