はじめての独り身暮らし

結婚の未来が見えないから、別れてほしい。

今年の3月、5年の歳月を共にした彼女はそう告げる。

刺激的というよりは、親友のようなごく近い距離感であったふたりの「付き合う」という奇妙な関係性はその日を境に終止符を打った。


生まれてからの約20年間。家族と心を寄り添わせ家庭の温かさを感じながら暮らしてきた。

就職してからの約5年間。一人暮らしをはじめた隣には“元”彼女がいた。出身校も仕事の種類もプライベートも一緒。多くの価値観と体験を共有し合った。


3月、もう心を通わせた人はすぐ近くにいない。

そういう意味での僕にとっての“独り身暮らし”が始まった。


はじまりの1ヶ月目

友人がいないわけではない。仕事の休みがないわけでもない。

だけど、はじめの1週間は固形物が喉を通らなかった。ベルトの穴も2つ減った。

彼女という存在の大きさを知るとともに、いかに心から信頼できる人がいないか、いかに人に依存して精神状態を保っていたのかを痛感した。

安泰だと思っていた生活と信頼関係が崩れ去る音が、私の疑心暗鬼を煽りに煽る。未来への不安が頭の中をめくりめく。浮かぶ不安と猜疑心を頭の中で解決していく。

1ヶ月が経つまで繰り返した頃、変わらない独り身暮らしの中で思考回路だけが切り替わった。


動き出す2ヶ月目

簡単に言うなれば「感情的」から「理性的」に。

人が私の精神状態を保つなら、保つ人をつくるしかない。

友人とアポを取り関係性の向上を図る。出会いの場に赴き、新規の関係を構築する。

相手にとってメリットに見えるよう、たるんだ肉体をフィットネスで引き締め、栄養面を考えた食生活にする。

話し方を明るく、距離をつめやすいものにする。


まずはこれらを行い、取り急ぎ自分の状態を上方修正する。


次にリスクを軽減するために他の精神を安定させる対象を見い出す。

私の場合、自分の体験に対する投資と、体を動かすこと、貯金残高の増加が該当した。


ようするに、思いっきり遊んで、体動かして、お金を貯まる程度には使い切る。ということである。


変化する3ヶ月目

生活と精神状態が変わり始める。

体の状態が変わる事で少しの自信が芽生えた。

周囲との関係性が向上したことにより、平日週末問わず考えこむ時間が少なくなった。

自分にとって都合の良い女性が出来たことで余裕ができた。

一歩引いた目線で徐々に物事の本質が見えるようになってきた。


そして、感情的な人間の無駄さ加減が馬鹿らしく、切り捨てる対象が明確になった。

欲が肥大化して次に目指す対象も明確になった。


そうして迎えた独り身暮らし4ヶ月目。

これがオトナの一歩なのかなと考える。これは本当に成長なのだろうか?

理性的とはいいつつも、本能を満たす最短コースを目指す様はとても「動物的」なのではないかと思ってしまう。人間だからこそ持てる「情緒」「感情」「メンタリティ」なんて言葉からはどんどん離れているのではないだろうか。

どこか俯瞰的な物見をするようになった私は、感情のままに損得も関係なくぶつかり合う過去の私にはもう戻れないのだろうと考える。青春時代には戻れないのだと考える。

生活としては良くなったはず。だけどなぜか哀しい。

そんな一抹の感情的な想いを吐き出して、4ヶ月目を過ごしていく。



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