【第15話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

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前編: 【第14話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。
後編: 【第16話】父子家庭パパが所持金2万円からたった一人で子供2人を育てた10年間だったけど、これで良かったのか今でも分からずに文字にした全記録を、世に問いたい。

僕たちはいつものように父の病室へと向かっていた。

いつものように家の掃除、洗濯を済ませ、下の子の支度をし病院へ行く。何も変わらない、いつも通りの朝だった。

僕はベットに寝そべる父を確認し、その横に椅子を置いて腰かけ、持ってきた本を読んでいる。建物の隙間からわずかに見えるだけの11月の秋晴れの空が、この病室に唯一の色を落としていた。

父の病室は個室だったので、僕達が物音を立てない限り何の音もない空間。時折父の呼吸を確認しなければいけないほど、静かだった。

本のページをめくる音が、いつもより大きく感じられていたぐらいだ。

下の子は、僕の膝で寝てしまった。

何か言葉のようなものが聞こえたから、視線を落としていた本から顔をあげ、周囲を見渡してみた。

誰かが病室に訪ねてきたのだろうか。振り返っても誰もいない。

父が、僕の名前を呼んでいた。

「何、お父さん・・・」

入院してから、父が言葉を発したのは数回程度。

下の子を起こさぬように、ベッドの横に置いていたパイプ椅子を父の方に近づけ、読んでいた本を閉じた。

「俺のこと、分かるの」

父は、はっきりとした口調で「ああ、分かるよ」と言った後、また僕の名を呼んだ。

「どうしたの、今日は、すごいね」

「小学生のころリトルリーグに入りたいって言って、俺にお願いしてきたな」

「ん?何?」

「やるんだったらちゃんと練習に行くんだぞって言ったけど、途中で辞めちゃったな」

「そんなことあったね」

「たまに試合見に行ってたんだぞ」

「知ってるよ、俺下手だったからあんまり試合出なかったのにね」

「そうだったな」

みんなの読んで良かった!