ベルリン、一瞬の夏

日曜日、仕事を終えて一息ついていると、「アイスクリーム食べに行こうよ!」と彼から呑気な誘いの電話が入る。「ビールの方がいいな」と私が言うと、「いや、アイスクリーム」と彼は譲らない。私は仕事の後のA glass of beerに感じる幸福を剥奪されるけれど、もちろんそれは不快ではない。

身支度をして外に出ると、あまりの眩しさに目を細める。ドイツの日差しは日本のそれよりも強いと感じる。冬場は何日も太陽の光なんて見ないのに、今の季節のベルリンは光に満ちている。長い間待ち続けた光。人々はほとんど強迫観念のように日差しを肌に焼き付ける。皆、理解しているのだ。北国の夏はあまりにも一瞬だと。 

私たちはポツダマープラッツでアイスを食べて、まだまだ終わらない光の渦の中、歩き出した。もう、西日が射していた。その光に、彼は顔をしかめる。私よりも明るい目の色は、光を浴びてさらに明るく見えた。  

CBD(中心業務地/ Central Business Districtの略)と言えるべき場所から15分ほど歩いただけで、そこには新緑が広がる。葉っぱたちはさわさわと音を立て、アムゼルが鳴いていた。ベルリンに最初に来た頃、葉っぱが風で揺れる音が波の音に似ていると思ったことを思い出した。ベルリンには海がない。だけど、波の音がする、と。

 そんなことを思い出していると、キラキラとした緑の中にウサギを見つけた。ベルリンでは特別なことではないのに、今でも子供みたいにはしゃいでしまう。  

歩き疲れた頃、公園を見つけた。見渡す限り、芝生の緑しか見えなかった。汚れなんて気にせず芝生の上に寝転がると、飛行機が空を切り裂いているのが見えた。

「飛行機事故かフェリーでの事故、どちらもいやだけどどちらか選ばないといけないとしたら、一瞬の痛みで終わる飛行機事故がいいなぁ」

と私が言うと、彼は怪訝な顔をしたけれど、私の突拍子のない話にはもう慣れている。私は不吉な話をしながらもなんとなく幸せで。

目の前には恋が始まったばっかりであろうゲイのカップルが幸せそうにベルリナー(ベルリンのビールの名称)を飲んでいる。近くでは誰かの誕生日を祝うラテンの音楽が聴こえていた。誰だか知らないけど、お誕生日おめでとう。

ベルリンの夏は始まったばかり。そしてもうすぐ終わるだろう。

そんな日曜日の夕方。


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