世界で一番尊敬する人と聞かれたら。
ばあちゃんという人
優しくて、人のために、よく働く人でした。
ばあちゃんは私のお父さんや叔母たちの3人の子供を育てて、半身麻痺になったじいちゃんの介護をして。
じいちゃんは、昔ながらの頑固親父。
威張って、気に入らないことがあればすぐに怒鳴る。
猫舌なので、味噌汁が熱いだけで怒鳴る。
味噌汁をお椀に盛って、わざわざお椀を水につけてぬるくする。
そんなことも当たり前に毎日毎日やっていました。
掃除洗濯料理、家事だけでなく、じいちゃんの病院への通院だって
車で送り迎えして
孫にとにかく甘かった
じいちゃんの介護も大変だったと思うけど、
孫である私の世話の方がもっと大変だったと思う
私の両親は共働きだったし、
仲が悪かったので
ピリピリした場所にいたくなくて
私は本当に小さい頃からばあちゃん、じいちゃんのところに入りびたり。
私は本当にわがままだった
車を運転できるばあちゃんに
「本屋連れてって」
「スーパー連れてって」
どこかに行くときはいつもおねだりしていた
眠るときは、自分の部屋から抜け出して、
ばあちゃんの布団にもぐりこんで。
手をつないで寝てた
風邪の時はうどんを作ってと、おねだりしたり。
帰りの時間が別々だから、冬の登下校は妹の分と二回分車で送ってもらったり。
ずっと仲良しでいるおまじないをして、
60才をすぎているのに一緒に遊ぶためにぷよぷよ覚えてくれて。
朝ごはんを食べないで高校に行くので
毎日二個、おにぎりを持たせてくれて。
毎日毎日続けてくれた
嫌だなんて言わなかった
上京して、離れ離れになってからも
私が大学生になり、一人暮らし始めてからは、
新幹線にのるたびホームまで見送ってくれて、それが恥ずかしいって文句言っても笑って電車賃だとおこずかいをくれて。
帰るたびに一緒に近くの日帰り温泉に行って
大学生なのに同じ布団で寝るのが当たり前になっていて
私は頼るのも甘えるのも親ではなくばあちゃんばっかりでした。
元気に趣味のグランドゴルフをして、
じいちゃんとドライブに行ってたばあちゃん
携帯も持っていたのでよく「ハイカラばーちゃん」とみんなに言われて
いつも楽しそうだったばあちゃん
そんなばあちゃんが白血病になった
私にははじめ、知らせてもらえなかった。
東京で一人で頑張っているから
心配かけたくない、と。
初めて受注をもらったとメールをしたときには
「ちーはすごいんだ」と周りの人に自慢してくれたらしい。
時間が経ってたから、やっと入院していたことを知った
3カ月の入院。
きっと家に戻ってこれる。
そう誰もが信じていたのに
体力はどんどん落ちていたと聞いた
闘病がつらくて、うつ状態で
「死にたい」というようになり
認知症の症状で病室で暴れたと聞いたときは信じられなかった
変わらない優しさ
一人で東京にいる私に電話で
「なんかあった時はばあちゃんに言えな」と頼もしく言ってた声もかすれてて
会うのがなんだか怖かった。
会いに行ったらふくよかだった体はガリガリになっていて
つらいんだなとはっきりわかる顔だった
一目見て、つらいのは痛々しいほど伝わってきた
病気の辛さがわかるとは口が裂けても言えないけれど
あぁ、病気なんだと理解できた
変わってしまったばあちゃんを見るのが怖い。
そう思っていた私にはばぁちゃんの姿は衝撃的だった。
にもかかわらず、
「疲れたべ?昼寝してけ」
と言って、病室のベッドのはじっこに移動してスペースを空けてくれた。
「うつ」という言葉も嘘のようだった
見た目は変わってしまっていても
なんにも変っていない優しいばあちゃんのままだった
ばあちゃんの気持ちが嬉しくて、病院なのに布団にもぐりこんでみる
久しぶりに一緒に寝た布団はいつものふかふかのいいにおいの布団でなくて
病室のぱさぱさした感触だったけど
変わらずあったかかった
うちでは誰も面倒見れなくなって宅老所にいてもらうことになったじいちゃんを気遣い、
「ばあちゃんは大丈夫だからとじいちゃんに伝えて」といって
細くなった手で約束の握手をしながら笑ってくれた
口癖のように言ってくれた
「素直が一番だよ」
「ちーのこと大好きだよ」
何回も言ってくれたこの言葉は、どんな人の言葉よりしっかり胸に刻み込んである
病気になっても私の前では変わらず、やさしい、やさしいばあちゃんでした
愚痴をきかせられるほど、私が大人には見えなかったのかもしれない
ばあちゃん孝行はなんにもできなかったから心配かけまいと最期まで頑張ってくれたのかもしれない
病室で暴れたりしてたのかもしれないけれど
みんなのお手本になる人ではなかったのかもしれないけれど、
こんな優しい人はいなかったと
もういないばあちゃんを私だけはずっと想いつづけたい。
私は世界の誰より
ばあちゃんを尊敬している
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