「海外」を初めて見た外国人に東京を案内したら、全てが想像を超えていた話

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 しかし、普段と違った視点で歩くと、いつも視界に入っていても、実際には認識していないものが多いことに驚き楽しくなった。



3日目(旅行者:お兄ちゃん、私)

皇居の桜を見る
 ↓
お台場で温泉に入り、夜景を見る


 月曜の朝は道を急ぐ社会人や学生が多く、どこかせわしない。

 空はどんより曇っていた。

 静まり返った電車の中で、お兄ちゃんはそわそわしていたが、我慢できなくなった様子で、私の耳元でささやいた。

 車内の人が一斉にこっちを見る。

お兄ちゃん
これがかの有名な満員電車だね。
どう?
お兄ちゃん
いらいらして、ちゃぶ台をひっくり返したくなるなぁ。
お兄ちゃん
電車の中はこんなに人がいるのに静かだね。
駅で電車のドアが閉まってから発車するまでの間、なんの物音も無いあの雰囲気に耐えられない。

 日本を出ると、電車内での携帯電話の通話は禁止されていない場所がほとんどだ。

 私が海外に旅行に行った時も、電車の中では誰も寝ていない上、誰かしらが話をしていることが多かったように思う。


 私達にとっては当たり前の日常が、お兄ちゃんにとっては不思議だらけだ。



4日目(旅行者:お兄ちゃん、私)

明治神宮
 ↓
新宿御苑で桜を見ながら昼を食べる
 ↓
アメヤ横丁でお土産を買う




 私は有名な商店街「アメヤ横丁」にある靴屋の椅子に、1人で座っていた。試着もせずに座っているのは迷惑だと知りながら、立ち上がる元気がなかった。


 

 その45分前、私達は菓子屋に入った。お兄ちゃんの家族が指定した店で、店内は海外からの買い物客でごった返していた。彼らは顔が殺気立っていて、ものすごい勢いで商品を買い物かごに入れていく。

 この店は
免税手続きができること
ブログで紹介されていること
等を理由に人気があるようだ。

 もみくちゃにされ、お兄ちゃんとはぐれた私は、気付いた時にはその店から逃げ出して靴屋の椅子に座っていた。

 冷たい風が火照った体にあたるのが心地いい。

買い物終わったらラインしてね
お兄ちゃん
もうちょっと待って。それより、これがどこにあるか、店員さんに聞いて。

  チーズいか燻製(実際の写真)        


私は立ち上がり、戦場に戻った。


 お兄ちゃんは、台湾の家族とLINEをしながら商品を探していた。
 大半が自分用ではなく、家族のために買うお遣いだからだ。

 ここにも文化の違いがあるようだ。

 私が日本人と旅行に行くと、買うものは自分用が大半で、家族の土産は挨拶程度の人が多いように感じる。


お兄ちゃんは全く買い物を楽しんでいないどころか、泣きそうだった。


お兄ちゃん
(買い物かごの中身の写真)
他に買うものある?
姉1
ぜんっぜん足りない。もっと買って。
姉1の夫
そんなじゃ免税額に届かないでしょ!
姉2
詰め込めーー!!
お兄ちゃん
何を買っていいのかわからないよ(泣)
姉1
私が前回日本で買ったものと、そっくり同じ物全部買って!
姉2
同じ物を、私達の分もよろしく。
こっちも、同じのそっくりよろしく。

 どうやらお兄ちゃんの姉2人は、

お土産を沢山よろしくねー」

と言いながら、正月にお年玉として両替済の日本円60,000円をお兄ちゃんに渡したそうだ

 

実際にお兄ちゃんが買ったものの写真(ほぼ自分用ではない)


 お兄ちゃんが、

こんなにも大きな期待を背負って日本に来ていたこと
日本のモノがこんなにも魅力的であること

に驚いた。



5日目(旅行者:お兄ちゃん)

荷物をコインロッカーに預け、上野公園の桜を見る
 ↓
成田空港へ


 職場の昼休みに、お兄ちゃんから電話が来た。携帯越しに緊迫した息遣いが聞こえて来る。

「私鉄上野駅から空港まで行きたいけれども、朝利用したJR上野駅構内のコインロッカーに荷物が入っている」

お兄ちゃん
もう一回、JRにお金払ってホームに入らなきゃだめ?
改札の係員に言えば大丈夫だよ。
お兄ちゃん
話してくれる?改札の係員に電話代わるね。
駅員
もしもし
改札内のコインロッカーに荷物を入れて、出せないらしいです。
お兄ちゃん
改札に入れた!


一安心していると、また電話が来た。

お兄ちゃん
改札の係員が違う人になっていて、外に出られない…。もう一回電話で話してくれる?

 私鉄、地下鉄、JRそれぞれが違う改札で、料金が個別に発生することは、外国人にはなかなか理解できないようだ。



 そしてお兄ちゃんは無事に台湾に帰って行った。 

お兄ちゃん
次は紅葉が見たいです。
親子丼、梅干しも食べてみたいな。



まとめ

 外国人にとって日本が「外国」である。私達には想像し難いが、日本旅行が大冒険という人もいる。


 彼らは同じ時に同じ場所に立っていても、私達とは違った視点で「東京」を見ている。


 観光客が私達のマナーを守るのは当然必要な事だ。


 一方で私達日本人も多様性を認め、外国人がどんな気持ちで何を感じているのかを知り、温かく迎え入れる気持ちを持てればと願う


 意識的にいつもと視点を変えると、実際に見えるものまで違ってくる


 困っている外国人を見たら手を差し伸べてほしい。


 クールな日本がもっとクールになることを切に願っている。





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