障害を個性と捉えるなら、あなたはその個性を「治しなさい」と本人に言いますか?
まだまだ障害を個性と捉えてもらえる環境ではありませんが、自分なりに感じ考えていることを書いてみようと思います。
私は今年で障害を持って15年目になります。両耳が同じ位聞こえない聴覚障害者です。
聴覚の障害には手術などで治せる障害と治せない障害があり、私は後者で聴力は回復しないと医者に言われています。
障害の受容は早い方でした。聞こえなくなったと同時に検査の結果が確定する前から様々なことを調べて一刻も早く障害を受容しようと奮闘しました。それに影響したのは自分の母親が30代で失聴し「障害者にはなりたくない」と泣いていたり自殺をしようとされたことが反面教師として影響しています。
私は手術が不可能な難聴と分かった時から
「どうすれば上手くコミュニケーションを取れるか」
「どうすれば補聴器を使いこなせるか」
「聞こえない事を補う為の手話や読話を身につけること」などを考えていました。
もちろん人生の途中で障害を負うことに対する不安や悲しみもありました。泣きながらではありましたが1日も早く障害を受容しようと自分なりに努力しました。
同じ障害を持った方で精神的に不安定になり「自分が聞こえなくなったのは日頃の行いが悪かったから」だと他人に言われて宗教的なものにハマってしまった方や、高額の壺のようなものを大金をかけて買ってしまった方もいました。
また障害を持つことのストレスや心の負担から精神的な病気、例えば鬱病や統合失調症になった方も実際にいました。
人によっては障害を受容できずに何年・何十年もかけて障害を受け入れようと苦労された方もいます。
障害の受容年数は、障害を持った年数とはイコールではありません。
これまでの15年間で健常者の方から
「障害は治るから治しなさい」
「その耳は聞こえるようになる」と何度か言われたことがあります。
世の中には様々な考え方があるので、そう言う方々を一概に否定するつもりはありません。
悪意がなく押し付けもせずに純粋な気持ちで「治るかも知れないよ」と言われる時は不快感を感じないのですが、そうではない場合…OO療法などのビジネスの香りがする時や強く押し付けがましい時は、言われた側はとても不快に感じます。
私は早くに受容し、幸いなことに何かに騙されるようなことも経験もしませんでした。そして自分を過度に責めて自傷や命を断とうとしたりすることもなく受けれて来ましたが…障害を持ったばかりの方や受け入れることが苦しい状態の方に押し付けのような形で
「その障害は治る」と言われてしまうのは、非常に残念な気持ちになります。
もし、あなたがOO療法家やOOセラピストOOカウンセラーなどで、過去に障害や難病を治してきた実績があるとして、それは本当に万人に通用することですか?
そして、それを求めてあなたの元にやって来た障害や難病を治したい方に対しては100%と言わず200%でもあなたの実力を発揮して障害や難病を治すことに専念して欲しいと思います。
しかし逆にそれを求めていない相手に対して「障害は治る」「障害を治しなさい」と押し付けることは、本当にそれが最善なのでしょうか?
あなたの心の中に「障害は治すべきもの」「障害は排除するべき」「障害者はかわいそう」と言う定義が在るのではありませんか?
もしあなたが障害を個性と捉えていれば、それでもあなたは「その個性を治しなさい」と相手に伝えますか?
確かに世の中には奇跡を起こして障害や難病・不治の病を克服される方もいます。
障害に関して言えば、今この障害を持った身体だからこそ学べることや人生の出会いも確かにあるのです。これは決して綺麗事ではなく事実です。
そして障害を持つことで様々な理不尽なことに出会うことも事実です。
考えてみて下さい。健常者であれば人生は順風満帆でしょうか?健常者と言うだけで理不尽なことに遭遇しないのでしょうか?
トータルで考えると健常者も障害者もどちらも人生の学びがあるはずです。
そして私は障害者として与えられた人生も自分らしく生きて行こうと思っています。
障害者にならなければ感じ得なかったことを考え・伝え
「いつか障害を個性として社会全体が捉えるような環境が実現すればいいなぁ」と思いつつ、これからも自分の障害を自分の中の1つの個性として生きて行きたいです。
押し付けにならない「聞こえるようになるかもよ」の、面白いなぁと思った方々をご紹介します。








会話ではなくメッセージで押し付けることなく心配して下さった方もいます。そう言う時は、相手の方の優しい気持ちが伝わって来ます。
最後に番外編として「そのままでい~じゃんバージョンの会話をお伝えします。



障害受容歴15年になるので、ある程度色々と言われてもそれを楽しめる心の余裕が私にはあります。
そうではない方もいらっしゃることを、この文章を読んで下さったあなたに少しでも知って頂けるとありがたいです。
こうやって書いてみたら、色々な方に気にかけて頂いていると改めて気がつくことができました。
「ありがとうございます。」
そしていつか 障害が当たり前に個性として受け入れられる社会となると良いですね。
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