GHOST (1990) : 脚本術におけるSlingshot
1990年Best Movieによく選ばれるGhostを2016年になって、初めて観た。
Film Schoolに通ってた時、脚本術の授業でGhostが例えられていたのを思い出したのがきっかけ。
観てよかった。
脚本、cinematography、編集、演出、すべてにおいて、うまい。26年前の作品なので、時代は感じるが、飽きることは一切なく、ずっと興味を引かせてくれた。Demi Mooreがヤバかわいいからってのがデカイけど。
この作品に携わった人たちは師匠にあたるわけで、彼らの仕事を分析できて、film schoolが懐かしくなり、少し若返った。
Scene Breakdown(4scenes)
超っラブラブカップルのSAMとMOLLY。同棲を始めて日が浅い夜。
INT. BEDROOM - NIGHT
Sam and Molly are lying together silently. Molly gazes at him.
Molly gently strokes his head.
He smiles and strokes her cheek.
このシーンは、この先物語がどのように展開するかforeshadowをしている他に、脚本術における高度な技術を使っている。これをSlingshotと呼ぶんだが、4部に分かれて構成されている術である。その1部目がこのシーンに埋め込まれてる。Slingshotとはパチンコのことである。Y字の枝にゴムを装着し、小石を飛ばす道具。
このSlingshotの2部目は、ここから3分ほど先の次の次のシーンでまた現れる。
NYC屋外。夜。
SAMとMOLLYの劇場デートの帰り道。
Sam stops and stares at Molly. He pauses quietly. He is about to speak when
A MAN'S FACE emerges from the shadows behind him.
Molly gasps. Sam spins around.
AN INTENSE LOOKING MAN is standing in the darkness between two buildings.
この新たな人物の登場により、Inciting Incident (事件)が起き、物語がようやく走り出すのだが、slingshotの2部目が綺麗に収めてある。映画を見続ければ、いずれその意味もわかる。
ちなみに、Hollywood脚本では、新たな登場人物を紹介するとき、大文字で表記する。
そして、3部目。
SamとMollyは先ほど登場した人物に強盗され、その反攻でSamは命を落とす。Mollyを置いてけぼりにはできず、天国への道を拒否し、Samはghostとして下界に残る。そして、Samの背後霊のようにMollyを見守る日々が始まるのだが、Samを殺した強盗犯がMollyを狙ってることを目撃する。Mollyに警告しなくては。しかし、SamはghostだからMollyと会話ができない。幸い、Samの声が聞こえる占い師、ODA MAEが登場し、SamがなんとかOda MaeとMollyを対面させることに成功する。このOda Maeってのが個性溢れたキャラで、Whoopi Goldbergの演技により、物語のサスペンスを保ちつつ、明るい笑いを提供してくれるから、映画がさらに楽しくなる。
NYCのレストラン室内。昼。
INT. SOHO LUNCHEONETTE - DAY
Molly and Oda Mae are sitting in a booth staring at one another.
Molly's hand jumps. Oda Mae looks at her. There is a long, poignant moment. Sam chokes up.
No. He would never say that.
Ditto. Tell her "ditto".
Molly starts, an expression of true astonishment shining in her eyes.
Ditto... やっと伝わった!これで、ようやくMollyを守ることができる。このように、主人公の調子が最高潮に到達したと思えて、希望が膨らむ時点を映画のMidpointと呼ぶ。Midpointの直後に、実はすぐ先に主人公の調子が一気に崩れるようになっていて、worst of the worstという最悪な状況まで主人公は落とし込まれる。そこからの逆転物語をclimaxと呼び、一番盛り上がるんだが、slingshotの話に戻すと、3部目がMidpointの鍵になっていることがわかると思う。二人の間のたわいもないdittoという口癖のようなものが、おまじないのようになり、物語を展開させる鍵にいつの間にかなっている。
そして、worst of the worstへ向けて、Oda Maeが詐欺師としての犯罪歴があることが発覚し、Mollyの信頼を失う。ところが、Oda Maeを通してMollyに会話ができなくなったSamはなんとか、他の方法を見出し、自分の死の原因なる陰謀を明かしつつ、Mollyへ危険を及ぼす殺人犯たちを退治し、climaxを経て観客がホッと一息できるようになったところで、sling shotの最後のパーツが現れる。
一件落着の疲れ切った表情を浮かべるMolly、Sam、Oda Mae。すると、天国からの光がSamを照らし、MollyとOda Maeは初めてGHOSTを目にする。
Sam's luminous form appears before her. Molly is overwhelmed by the sight of him. The two of them gaze at one another without moving. They know it is for the last time. It is a silent exchange, charged with emotion.
Slowly, the two bodies reach forward. As their lips touch, the plaster dust swirls sensuously through Sam's vaporous image and he begins to disappear. Molly pulls back from him as though from a cloud. His voice rises from the mist.
Tears roll down her cheek.
The brilliant light intensifies. It is beautiful, like a sunrise, saturating the room with a warm, comforting glow.
Molly looks up and sees it all. Oda Mae sees it, too.
I know. Goodbye, Oda Mae.
Thank you. Your mama would be proud.
Oda Mae smiles warmly.
Sam turns to Molly. She is gazing at the last remaining moments of him. Her eyes brim over with tears and love.
Molly swallows hard and wipes her eyes.
The light inside Sam intensifies. A sweet smile emerges on his lips.
His face fills with joy.
The love inside.
He whispers, almost crying.
You take it with you.
They are his last words. His spirit dissolves within its ghostly moorings and begins to evaporate. Molly looks up silently for a moment, her face filled with love.
そして、Samの天国への成仏を経て、めでたしめでたし。
THOUGHTS
素晴らしい。
脚本上、重要ビートの中にSamとMollyの愛を象徴する"Ditto"を物語を展開させる鍵として使って、しまいにはそれで涙までとってしまう。これが、Slingshotの模範的な成功例である。。。と、film schoolで教わった。由来は、正直よくわからん。Film Schoolでも、このGHOSTという映画しかslingshotの例として出てなかったもんで。。。おそらくslingshotのように、小石をセットし、ゴムを引っ張って飛ばしたら、小石が最終目的地に今までにない破壊力を得てたどり着く、みたいな話だったんだが、これではイマイチ脚本術を考える上で、納得のいく定義にはならない。
そこで、もしかしたら、GHOSTと同じようにslingshotが盛り込まれてるかもしれない映画を見たので、そちらのslingshotを分析してみて、次のストーリーでGhostと比べてみたい。
次の題材にするその映画は、2016年最もクソやべーで賞、最有力候補のFinding Dory.
GHOST 脚本(shooting draft)
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