一流の鈴木さん(仮名)は、プロフェッショナルになった。(3)

一流の鈴木さん(仮名)は、プロフェッショナルになった。(3)


 「ゆとり教育」といい、「偏差値追放」といい、「小学校から英語」といい、一体どうすれば、このような勘違いな政策が生まれてくるのだろう。考えている人は、現場を知らないよね。
 現場を知っていたら、こんな不思議な政策を打ち出せるわけがない。日本は、70年前の敗戦でも「現場の兵士は優秀だけれど、リーダーたちが馬鹿だった」と言われた。
 今も、野球などでは「フロントが馬鹿だから」は生きている。
 日本の社会は、現場の人は優秀でも指導者が愚か者ということが多い。
 私は、ゆとり教育が始まって学習内容が3割も削減された時、指導内容を変更しなかった。それで、いつのまにかレベルの高い塾扱いになった。もちろん、塾内では偏差値を使いまくった。
 小学校から英語をやって、「私はできる」と勘違いしている子の指導は難しいので嫌いだ。できたら、白紙状態で来てほしい。中学校から英語を勉強し始めて、何の不都合があるのだろう。私も、中学校からABCを習った。
  鈴木さんちは、経済的に厳しかったから英才教育など出来るわけがなかった。ただ、中学校や高校の受験指導がひどすぎた。それで、当塾の月謝が良心的な金額であることもあり、小学6年生から当塾に来てくれた。
 今は、ある研究職のプロフェッショナルとして多くの人の助けになっている。彼女と議論することは何もなかった。役に立つものは、何でも利用する。業者テストも、偏差値も、役に立つなら使う。
 逆に、クラブも、友達も、学校も役に立たないなら、距離を置く。全ては合格のためなのだから、基準は明確だ。机上の空論を戦わせて遊んでいるヒマなど、なかった。
 良い学習環境で、一番たいせつなものは「生徒の質」と「講師の質」だ。京都大学が、研究環境として最高なのは学生の質が高く、教授の質が高いからだ。学校、塾、予備校も同じだ。
 タレントを使って生徒募集なんて、自殺行為だ。そんな募集方法をしたら、生徒の質の維持などできるわけがない。ろくでもない生徒が、大量に集まる。

 こんなことを書くと
「高木の野郎は、差別主義者だ!」
 と、言う人がいる。言われても構わない。人間は、本当のことを口にされると、怒るものなのだ。
 甲子園に本気で出たいなら、多くの私立高校がやっているように全国から才能のある中学生をスカウトするしかない。タカラジェンヌは、厳しい審査をパスしたものだけを鍛えて生まれてくる。
 誰でも集めればいいというのは、単なる金儲けであって、そこに志はない。
 鈴木さんは、私の塾の経営姿勢に共感してくれたのだ。
 通信生の方も、Z会などと比べものにならない規模だけれど、少数精鋭で優秀な方たちばかり。私は、不特定多数の方に支持してもらおうと思っていない。食っていけたら、それでいいのだ。
  ベストセラー作家の、橘玲さんが言う。


 こうして、「これ以上の教育投資は効果がなく、税金の無駄遣いだ」と主張する論者が現われた。彼らは最初、「差別主義者」として徹底的に批判されたが、その声は徐々に大きくなっていった。なぜなら彼らの主張には科学的な証拠(エビデンス)があったからだ。
 知能や学力が遺伝なのか、環境(子育て)なのかという論争は、科学的には行動遺伝学によって決着がつけられた。一卵性双生児や二卵性双生児を多数調べることで、知能や性格、精神疾患や犯罪傾向にどの程度、遺伝の影響があるのかが正確に計測できるようになったからだ。
 詳しくは拙著『言ってはいけない』をお読みいただきたいが、そのなかでも知能の遺伝率はきわだって高く、論理的推論能力は68%、一般知能(IQ)は77%とされている。知能の7割から8割は、遺伝によって説明できるのだ。

 私は、教育者だと思っているので、この「言ってはいけない」に全面的に賛成しかねる。しかし、日本の教育現場は「言ってはいけない」ことが多すぎる。小学生の頃に、生まれつき足の速い子がいたことくらい誰でも知っていることだ。
 差別だ、と言われても素行や頭の悪い子が混じると難関校合格にむけての授業レベルが維持できるはずがない。現実に、高校からはランキングがあって同じレベルの子を集めて授業をするではないか。
 それを口にしたら、差別主義と言われたら現状を改善する議論もできない。
 知能というと、現代社会ではテストの点数が良いことを指す場合が多い。しかし、テストなど科挙までさかのぼると漢詩ができる人だったわけだ。現代日本なら、英語が話せて、数式が解ける人を知能が高いと考える人が多い。
 私は英語がペラペラだし、数式は京大合格レベルくらいなら解ける。でも、田舎の小さな塾講師だ。こういう人を賢いとか、知能が高いと言うのだろうか。私には、そう思えない。
 戦国時代なら、さしずめ信長や秀吉が知能が高いと言われるのだろう。でも、見方によっては、ただの大量殺人者だ。
 ヒトラーの知能は高かったのだろうか?
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  私は、鈴木さんを指導していて楽しかった。なぜなら、ひたむきに努力しているからだったと思う。素行が良かったからだと思う。母親に対する思いやりがあったからだと思う。意思が強かったからだと思う。
  その特徴のいくつかは、成績と関係があるだろうが、成績が良くなくても、そういう子はいる。
  人間は、みんな違っている。知能が遺伝に影響されるか否かなんて、どうでもいい。与えられた遺伝子、与えられた環境の中で、精一杯やれば、どんな状況も乗り越えていける。
  ただ、それは、どんな不都合な真実にも目をそむけないで果敢に挑戦する人だけに与えられた特権だ。

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