【第6話】カレーライス
僕らはベッドメイクが終わっていない部屋に向かった。
一緒にベッドメイクをしながら、彼女に気になったことを色々と聞いてみた。
なんと彼女は中国人だった!彼女にはまず流暢な日本語(全く中国語訛りはない)を話すし、見た目も奇抜なショウに比べて中国人っぽさがなかったので、凄く驚いた。
ショウとは違い、他の学校から来ているらしい。語学の勉強もかねて、夏休みを利用してこのホテルに働いて観光をしているとのことだった。ショウとは僕が来る前から、会っていたので顔見知りだった。
彼女の柔和な笑顔にどぎまぎしながらも作業を続けた。一通りの作業が終わった後、綺麗になったベッドを見て彼女は満足そうだった。汗が彼女の額から落ちていた。 使い終わったシーツの整理をしていると、増田君が様子を見に来た
。
従業員食堂に行って、僕、増田君、カオの3人でご飯を食べることとなった。4人テーブルの席に、一席を空けて、カオが僕の横に座り、増田君が正面に座った。まかないは、お客様と同じメニューではないが、それなりの豪勢な食事が出る。プロが作ったまかないだ。
この日はカレーだったが、メチャクチャ上手い!労働の後の飯は格別だった。
美味そうにカレーを食べる僕を見て、カオは笑っていた。彼女の笑顔はとても可愛い。
彼女の足が僕の足に少し触れた。だけど彼女は気にしていないようだった。偶然かな?
空いている席を指指してカレーライスを持った女子高生が、席に座っていいか尋ねてきた。
増田君が少し、体を横にずらして「どうぞ」と言った。
彼女は今時の高校生らしく、ノリが軽かった。
笑顔であいさつをして、嬉しそうにカレーを食べ始めた。やっぱり女子高生は若い。肌の質が全然違うし、髪の毛もショートカットだが、艶が違う。ブラック企業でボロボロにされた僕とは対照的だった。
しかし、この女の子、よく見ると相当美人だ。僕の隣に座っている美人なカオに全く見劣りしない。
彼女の横顔は西洋人のように鼻が非常に高く、かなり整っている。
この子は男には困らないだろうな。喋りながらそんなことを思い、無意識に彼女をみていた。
どうやら増田君も彼女に見惚れているらしい。
一瞬、鷹がネズミを狩るような、そんな挑戦的な目で僕の方を見た様な気がした。
えっ?なんだろう。ふと不安に思ったが、見間違いだと思い、忘れることにした。
そのアイコンタクトが確信的な行動だったと気がつくまでには時間がかった。
彼女がひと夏の青春にカレーライスのスパイスような辛い刺激を僕に与えることとなる。
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