フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第9話

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「う、うん」




「あ、そうだ」




拓也が思い出したかのように言った。




「サークルの後輩が今週末、お前のバイト先で飲み会開きたいって。

少し割引してやってよ?なあ」




私はドキッとした。

しまった。バイトやめたこと言ってなかった。



「あ、あのさ。あそこ止めちゃったんだよね」




「はあ!?」




「いや、あの。ほら、厨房に嫌なおばさんがいるって言ったでしょ。

でね、実はもう我慢の限界でさ〜」




「おい」




「え?」




「え?じゃないだろ。じゃ、新しい所教えろよ。もう始めてんだろ。

先週のバーベキューだってバイトを理由に来なかったじゃん?

なんかさ、最近お前付き合い悪すぎじゃない?」




「ゴメン、ちゃんと教えるし、時間も作るからさ」



拓也はふてくされた顔で椅子にもたれかかった。

そして後輩にメールを送ると言ったきり最後まで口を聞いてくれなかった。


そして私はなんとなく分かってしまった。


すでに拓也を身近に感じられなくなっている自分がいることに。






土曜日は初めて同伴した。

佐々木からの許しが出たのだ。

客の扱いが上手くなってきたからだそうだ。


週の半分くらい指名をしてくる会社経営者の男性客は


とても学生じゃ入れないような高級寿司屋に私を連れて入った。


私は無邪気に驚き、さも美味しそうに食べた。


そして、その後はしっかりと店に来てもらった。



その客をお礼を言い送り出した私が階段を降りると

何やら男女の言い争う声がした。

客とホステスではないようだ。

階段を下りきった瞬間

「どうせ遊びだったんでしょ!!」

という金切り声とともに

見たことのある顔のホステスが私を押しのけて

脇を走り抜けていった。

顔を涙でクシャクシャに歪めていた。

残された軽薄そうな男はせいせいしたというように伸びをしている。

「よお、杏。調子はどうだ?」

伸びをした後、首をコキコキいわせながら

佐々木は例の皮肉っぽい笑みを私に向けてくる。


「おかげさまで」


「それにしても、嫌だねえ。オンナのヒステリックは」

私は黙って佐々木を見た。

サイテー男。

いろんな女の子にちょっかい出しては

ポイポイ取っ替え引っ替えしてるって噂は本当らしい。



「カン違いはもっとヤダよねえ?」


「そうですね」


「杏も気をつけろよ」


「私は大丈夫です」


私は佐々木に背を向け歩いた。

私には関係ない。

ていうか、アンタと関わるつもりないし。

たぶらかされる女も女だ。

いくらこの店でアンタに気に入られると都合がいいことが沢山あるんだとしても

私はゼッタイに…


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