フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第11話

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「え、ミホ!?誰かと思った!」


と本気で笑って言ってしまい怒ったミホがヌイグルミを私めがけて投げつけてきた。


でもよく見るとミホは目は小さいけど整った顔をしていた。



私たちはなかなか寝付かず話し続けた。


ミホは東京近郊の都市で育ち、幼い頃父親が出て行ったきりだそうだ。


スナックで働いていた母親の影響で自分も水商売を始めたという。


ミホとの共通点を知り、さらに距離が縮まった気がした。


「私、中学でグレて、ほとんど勉強ってしてこなかったんだ。

だから正真正銘の馬鹿。みんな言ってるでしょ。そのとーり。

英語とかアルファベットとか、あれ読むのが精一杯だし。

だからね、最初はお水なんて馬鹿でもできる仕事だからピッタリだと思ってた。

でもさ、実際はそうでもなかった」


ミホは自分の頭を人差し指で刺し


「多少はここがないとキツイんだよね」


確かに、客には世間において頭がいいとされるオジさんたちもいる。


でもミホはその明るさとキャラが売りなのだからいいのではないだろうか。


「その点、杏は頭いいから羨ましーよお」


「そんなことないって。私メチャクチャ口下手だよ」


「うちの客が言ってた。杏ちゃんてスレてない感じがいいんだよねえって。

絶対処女決まってるって。だから言ってやった。

こんなとこで働いてる女に処女がいたら面白すぎでしょって」


私は苦笑いするしかなかった。


その流れで恋愛話になった。


私は拓哉とのことを話した。


ミホは真剣に耳を傾けてくれた。ー



「何それ、ヤバくない!?その元彼。下手したらストーカーとかになるんじゃない?」


「でも、彼は根は真面目だし頭もいいし、そういうことは…」


「そういう奴に限って多いんだってば」


まさか、プライドの高いタッくんに限ってストーカーだなんてありえない。


私は不安をかき消すように、話題をミホの恋愛話に移した。


ミホはまんざらでもなさそうに


「ええ〜あたしい?」と言ってから


少女のように少し顔を赤らめた。


「あのね、大野ってボーイ分かる?」


私は今日パテオでミホを呼びに来た赤毛のボーイの姿を思い出した。


聞けば2週間ほど前から付き合っているそうだ。


彼の話をする時のミホはフニャフニャした幸せいっぱいの顔になった。


よほど惚れているらしい。


「あのね、彼もね、いつかまっとうな仕事に変えるから

ミホもそん時は足洗えよって言われてンの。

実はさ、近々いい物件あったら一緒に暮らす話も出てんだよね。」


聞けばすでに半同棲らしい。


「今夜私ここ泊まって大丈夫だった?」と聞くと


「ヘーキヘーキ。彼、今夜用事あるんだって言ってたもん」


ミホは嬉しそうに笑った。


こんなに純粋に人を愛せるなんて、私よりミホの方がよっぽど


スレてないんじゃないかと思う。




結局、夜明けまで喋ったり私たちは、その後眠りこけて


目を覚ましたのは昼過ぎだった。



昼下がりの電車にわたしは1人揺られた。


何だか久しぶりにスッキリした気分だった。



これまで学生生活という囲いの中で次々開けていく

交友関係に追いつくのがやっとだった。


どこか張り詰めた気持ちを隠しながら


無理をして笑ったり、喜んだり。


でも私はいつも心を許してはいなかった。


クラスメートやサークルの誰にも。


そこそこ名前のある大学に通う普通の女子大生として

ふさわしい振る舞いを演じてきただけ。


そんな私でも心から誰かと共感しあったり


笑い合えたりすることができるんだ。


そしてそれは素敵なことだ。


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