フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第13話
心の悲鳴
《これまでのあらすじ》初めて読む方へ
大学生の桃子はショーパブでバイトをしている。それまでの自分を捨てて、そこに居場所を見つけようとする。必死で接客を磨き、ついに店のベスト10に入ることができた桃子だったが、大学では桃子に悪い噂が立ち始めていた。そんな中でミホという桃子とは真逆にタイプのホステスとの仲が深まっていた。
ミホの男性遍歴は
ひと言でいえば
凄かった。
よく言えば
恋多き女
悪く言えば
悲惨だ。
中学に行かなくなり、遊びに夢中になった頃から
異性と付き合うようになった。
母親は夜の仕事で
娘が学校に行っているのかどころか
家に帰っているのかさえちゃんと把握していなかった。
それをいいことに
ミホは朝まで遊び歩いた。
お酒の味を覚えたのもこの頃だ。
10代ですでに両手じゃ間に合わない数の男と寝たと言う。
その頃、ニキビ面におさげ頭で掃除をサボろうとする男子を
小うるさく取り締まっていた私には
想像もつかないような日常
ただただ、口をあんぐり開けて彼女の話に聞き入っていたものだ。
「10代の終わりに付き合った男はね、キャバクラで知り合った妻子持ちでさ
嘘ばっかつく人だったよ〜。女房はデブなオバさんでもう愛情とかないから
お前と一緒になるとか言っちゃって。ある日突然、事故起こして保険に入ってなかったとかなんとか言って私にお金貸せって言うの。女房にバレたら離婚できないとか言うからあ、仕方なく50万くらい貸したのね。そしてしばらくしたら店に来なくなって音信不通。彼の知り合いから後で聞いたらさあ、ひどいのお〜。事故なんてウソだったとか、奥さんはすごく綺麗な人で子供は私立の幼稚園に通ってるとかね〜」
聞いていて苦しくなるような内容なのに
ミホは他人事みたいにあっけらかんとしゃべり続けていた。
23になる今の歳まで彼女は途切れなく恋愛している。
ただしそれらのほとんどが騙されるオチだった。
それでも憎しみを込めたりはせず
むしろ懐かしむような穏やかな口調だった。
結局この子は、純粋すぎるのだ
と私は思った
私なんかよりもずっと
先入観、邪念がないのだ。
人を疑わないから
すぐに人を好きになる
心の中が素直だから
そこにつけこむたちの悪いやつを吸い寄せちゃうのだ
なんとも皮肉なことだ。
「でもね〜、やっぱり過去の男たちをこうやって
杏に語れんのはさあ、今のカレシの存在があるからだよね。
あいつとはマジで合うし運命感じるんだよね。今までと違って
愛されてるって実感あるし」
ミホの話題は結局は現在、半同棲の大野という
パテオのボーイに落ち着くのであった。
「また、ノロケてる」
私が呆れて笑うと
「いいじゃーん。幸せのおすそ分け〜。
てかさ、杏もそのナルシストな元彼のことなんかほっときな。
いいオトコ紹介してあげるよ」
「いいよー。今は恋愛とか」
「な〜に、それ。恋しないと女はダメんなるってよ」
「ミホに言われたくない」
「なに、コイツ〜。むかつく。オイ、コラ!」
枕が飛んできて私の顔面にぶつかる。
私たちはいつまでも笑い合っていた。
不思議だ。
水と油みたいな私たちがこうやって一緒に寝ている。
ミホの寝息が聞こえてきた。
私は体を起こして仰向けになった。
ミホの布団の中で私は彼女の部屋の暗い天井をみつめた。
ミホの彼がいない日は私はこうやって泊まりに来ることが増えた。
当時私が心を許せる友達は彼女1人だったし
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