人生に必要なことは全て旅先で学んだ:あなたの心にヒーローを

3 / 3 ページ

派手な音楽と衣装に包まれ入場してきたのは、ヒール側に比べ一回りも二回りもサイズダウンしたヒーローの姿だった。






おいおいマジかよ、一撃じゃね?!


驚いていると、ルカは「ミスティコは体は小さいほうだけど、技がすごいのさ!それにタフさ!」


熱っぽく語り、目をキラキラ輝かせながら教えてくれる。




いよいよ試合が始まった。


いきなり強烈なラリアットやバスターをくらってミスティコがやられまくる。


ヒールレスラーは軽々とミスティコを持ち上げ、マットにたたきつける。


ミスティコの反撃も体で受け止め、平然としている。


まずい!マジでミスティコやられるんじゃないの?!




だが、起死回生の技をキメ、パートナーと連携技をくらわせながらジリジリと攻め立てる。


いつの間にか自分はもう周りを気にしてられないくらい熱くなって応援していた。


ルカも夢中で声を掛け続けている。




まずい!絶体絶命だ!このままだとやられる!ってところでなんとミスティコの起死回生の必殺技ラ・ミスティコがさく裂!


ラ・ミスティコは相手の首に両足で飛びつくとクラシコはぐるんぐるんと高速で相手の体を2周くらい回ってから一気に脇固めに入る、通称竜巻式脇固めだ。




何が起きたのかさっぱりわからないままヒールレスラーは逆さになってマットに抑えられている。


あっという間の1本目の決着だった。




すげー!


日本語の感想にも関わらず、少年は「すごいでしょ!!」と興奮しながらスペイン語で返す。




2本目は声援むなしくヒールが取る。


そして3本目、会場の盛り上がりも最高潮。




ああ、そうか、ルチャリブレはレスラーと観客が一緒になって盛り上げて楽しむライブだったんだ。


勝ち負けが大事なのではなく、みんなで盛り上げて楽しんでいるこの瞬間こそ、最高のエンターテイメントなんだ。




3本目もミスティコはやられまくる。


軽々と持ち上げられ、もう立てないのではと心配になるくらいマットに叩きつけられる。


パートナーも満身創痍でぎりぎりな様相になってきた。




そして、もうだめかってところで再びラ・ミスティコがさく裂!!


2回目でも早すぎてどんな動きをしているかわからないまま、相手は逆さにされ固め技が決まっていた。




呆然と「かっこいー!超かっこいー!」と俺がつぶやく。


うんうんと隣でルカはうなずき、「ミスティコは俺のヒーローさ。俺はミスティコみたいに強く、タフになりたいんだ!」と語ってくれた。




俺はルカの言葉を聞いて、「俺のヒーローは誰だっただろう?」と思い出そうとしていた。




ある人にとっては仮面ライダーなのかもしれない。


ある人にとってはウルトラマンだったのかもしれない。


そして俺のヒーローはジャッキーチェンだった。




TVでジャッキーのカンフー映画が放映されるといつだって心が熱くなって、TVのジャッキを観ながら一緒に動き回って敵を倒したつもりになっていた。


ジャッキーみたいに強く、かっこよく、面白いヒーローになると信じていた。




ルチャはライブだ。


ヒーローが目の前で活躍する。


TVよりもずっとずっと近くで、憧れのヒーローが目の前で活躍する。




心の中にヒーローがいたから、痛い時や苦しい時もふんばってくじけず前に進めた。


心の中にヒーローがいたから、困っている人に勇気を出して声を掛けて手助けができた。


心の中にヒーローがいたから、怖くてすっごく泣きたい時も、我慢することができた。


心の中にヒーローがいたから、俺は今、ここにいる。




少年にとってのヒーローはミスティコなのだろう。


それは成長とともに忘れてしまう時もあるかもしれない。


けど、忘れたって、心には刻まれるその想いと憧れの力は、なりたい自分に近づくための指針として、そして生きていく上での大きなエネルギーとなる。




大事なのは心の中にヒーローがいること。


そんな大事なことをルカとルチャリブレに教えてもらった。




帰り道様々な人が「あ、オクムラの応援していた日本人だ!チャオ!楽しかったな!」と声を掛けてくれた。


ルチャリブレを全力で応援して楽しんだ者は皆同志。


気分も爽快に会場を後にする。






あなたの心の中のヒーローはだれですか?







ストーリーをお読みいただき、ありがとうございます。ご覧いただいているサイト「STORYS.JP」は、誰もが自分らしいストーリーを歩めるきっかけ作りを目指しています。もし今のあなたが人生でうまくいかないことがあれば、STORYS.JP編集部に相談してみませんか? 次のバナーから人生相談を無料でお申し込みいただけます。

著者のTakai Reiさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。