ファイナンス入門 (23) 今回の日銀の政策が分かりにくい

前話: ファイナンス入門(22) GDP統計についての最近の議論

狙ったかの様にアメリカのFRB、連邦準備制度理事会の直前に行われた日銀の金融政策決定会合。ここで今までの金融政策の総括的な検証を行った上で今後の政策を決定して発表となったのだが、その内容が実に分かりにくい。

そもそも政策たるものは内容がクリアでマーケットに伝わらないと受け手の思惑からマーケットの変動を生み実効を上げることができない。

過去3年超の日銀の政策は、まず欧米でも行われているQE、量的緩和。

国債などを買取って市中銀行の手元にお金をじゃぶじゃぶの状況にして企業向けの貸し出しを増やし、企業による投資を喚起しようとの狙い。

ところが企業の手元には膨大な資金があるものの、需要の増加に確信が持てないために投資に回されていない。いくら銀行が貸しますよと言っても、そもそも資金需要が無いのだ。

唯一とも言える例外が不動産。

2020年の東京オリンピック開催も睨んでホテルはどんどん新設や建て替えをしているし、大規模なオフィスビル、高価なタワーマンションの建設も目白押し。

しかしながら、そもそも人口は減り続けているし、為替も一時より円高に振れており外国人観光客の人数増もそんなには見込めなくなっており、オフィスビルでは一部家賃の値下げも始まっていると聞く。

要は不動産バブルとその崩壊の予兆が出てきている。


そこで業を煮やした日銀は今年になってマイナス金利の導入という手に出た。

前述の国債の買い付けの代金を日銀の口座に入れておくと金利がマイナスだから目減りすることになる。それが嫌なら貸し出しを増やしなさいと言うこと。

ところが前日の様に資金需要が無い上に需要が薄いのだから収益性の高い投資案件は少ない。

それどころかその様な低収益先に貸出をして破綻でもしたら貸出し金の100%を失うことにもなりかねないのだから、数%のマイナス金利だったらお金を寝かせておこうということになる。

加えて金利のマイナス化が長期金利にも及びに連れ、市中銀行や年金、生命保険会社など国債の運用益で利益を上げていたところが収益を上げられなくなってきた。

この点は日銀も金融緩和策の副作用として認めているが、何が問題かと言うと年金や生命保険の利回りが低くなると人々の将来に関する不安が増して、現在の消費にブレーキがかかってしまうこと。

しつこくも3年以上実質インフレ率を2%にすると言っているのも、景気が良くなるので将来の心配はせずにお金を使いましょうという雰囲気、センチメントと言いますがを作り出したかった為。

国民の所得が増えれば消費も投資も増えますが、そうで無い状況で「今」の消費と投資を増やさすには「将来」の消費や投資に向けて保有している貯蓄を取りくづして使ってもらうしか無い。

要は将来の消費や投資はその時の景気が良くなってその時の収入で心配なく手に入れられる。また年金や生命保険等の金融商品からのリターンも期待できる。

だから将来への蓄えはしなくても良いから、「今」使いましょう、ということ。


もう一つ問題なのは3年超も異次元の金融緩和を続けてきたのに効果が見られないことで、マーケットに日銀オオカミ論が出てくる事。

皆んなが政策の効果を信じ無くなれば、もはやその効果は見込めない。

その為に日銀はマイナス金利には限度が無いのだと強弁してきたが、流石に副作用も無視できなくなって来ている。

金融緩和の為に毎年80兆円もの国債を買い続けると言っても玉にも限度があるし、そうやって買い上げて行った国債が一旦景気が上向いた際に暴落するという危険も高まってくる。


そこで今回の決定に戻って見ると。

1. マイナス金利の深堀はしない。

2. 長期金利は(マイナスでは無く)0%となる様に国債の売買を行う。

3. ETFの買取では日経225型では無くTOPIC型の比率を大きくする。

この第3点だがTOPIC型で組み入れ比率が高いのは銀行などの金融機関。

こうして見てくると、銀行収益の下支えに繋がる1と2。

銀行株の株価下支え効果がある3と、いずれも金融機関への配慮の様に見える。


ちなみに欧米のメディアでの会合前のコメントは、「BOJ(日銀のこと)? 限界は近づいてるね。」と冷ややかに感じられたのは私だけだろうか。





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