素顔10代な平凡OLが銀座ホステスとして売れっ子になるまで(8)
私はたまりかねて、閉店後の店で皆が帰ったしんとした店内で伊藤につっかかった。
伊藤はまるで、詐欺師がとぼけるときのように高い鷲鼻をつんと上に向けて聞いてくる。
たいして仕事も
できないくせに・・・という言葉は、かろうじて心の中に飲み込んだ。
本当だろうか。どっちみち、私はその伊藤の言葉を信じるしかなかったのだ。ヨウコの教育は、伊藤がやっていたのだから。
そしてその1週間後、決定的な事件は起こる。
その日は七夕の浴衣パーティ。在籍の女の子は皆出勤だったし、私も自分の担当の客に連絡をして店に来てもらう話をしていた。
紺地に赤や黄色の菊の花が舞った浴衣を着ると、少し非日常的でうれしくなり私はうきうきとしていた。ヨウコは、ピンク地に色とりどりの花が咲いた浴衣を着ていた。今日は後ろの毛もアップでまとめてあり、いつものアラレちゃん度も幾分和らいで女性らしくみえる。
ただ、私は前回のことがあってからというものどこかヨウコと話す気持ちになれず、開店前に過ごすソファ席も離れて座っていることが多かった。
今日は、前回ヨウコとのことでもめた男性客も呼んでいる。何事もないことを、ただ祈った。
週末の銀花は、それなりに込み合っていた。
お客は気前よくボトルを開け、おつまみやちょっとした料理も次々とテーブルに並んだ。
私は例の男性客についていたのだが、しばらくして長身の伊藤が正面に立ち、膝をつくと私の耳元にささやいてきた。
私はいぶかし気に、客に断ると席を立った。目の端にするりと抜ける人影が見えた。
私の座っていた席に、我が物顔で座ったのは・・なんとあのヨウコだった。
私はあまりに頭に
きていた。目の前の伊藤も、ヨウコの共犯者のように見えた。
だからって、私の客は練習台なのですか?!という言葉を、私は飲み込んだ。
それが店の方針ならば、自分だって雇われている側なのだ。文句があるならば自分の店を、やればいい。
私は決意した。その時期が、もう来ているということを確信したのだった。
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